保護基とは?
保護基は反応性の高い官能基を一時的にブロックする官能基のことです。
反応性の高い部位(上図ではアミノ基)をそのまま放っておくと、反応中に予期しない反応(副反応)を起こす可能性があるので、保護基(上図ではBoc基)を使って不活性化して反応させないようにします。反応性の高い官能基としては、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、カルボニル基、カルボキシ基などがあります。 保護基はどんなときに役立つかというと、反応性の高い官能基をたくさん含む多官能性化合物のうち一つだけの官能基だけを反応させたい(選択的に反応させたい)時です。
例えば葉酸を例にあげます。葉酸はビタミンB9とも言われる栄養素の一つです。葉酸には、アミノ基、アミド、カルボキシ基など様々な官能基があります。葉酸の二級アミノ基のみを反応させたいとき、他の反応性の高い官能基をそのままにしてしまうと、思わぬ副反応が起こる可能性があります。特に左側の一級アミノ基は保護しておかないと反応する可能性が大です。
ではカルボキシ基をメチルエステル、一級アミノ基をアセチル基で保護するとどうでしょうか?保護基によって反応性が落ちているので、二級アミノ基だけがブロモエタンと反応してアルキル化できます。
保護基に求められる機能・性質
思わぬ副反応を防ぐために用いる保護基は、一時的なもので、最終的には外して元にもどします。ですから、外したいときに簡単に外すことができる必要があります。しかし、あまりにも簡単に外すことができると保護して欲しい反応のときに外れてしまう可能性もあります。[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]保護基には矛盾するような機能が求められているんですね[/chat]
保護基に求められる性質・機能としては、
- 良好な収率で保護の反応が進行する
- 保護試薬が安価で容易に手に入る
- 脱保護後の生成物が反応しない
- 保護、脱保護後に容易に分離可能
- 様々な条件下で安定でありながら、特定の条件で簡単に外せる
- 保護基の自体が別の反応を起こさない
などがあります。保護したい官能基に対する保護基は複数あるため、適した保護基を選択して用います。
保護基は不必要に使うべきではありません。なぜなら、保護基の使用は必然的に保護・脱保護の2反応が余計にかかってしまうからです。有機合成においては試薬にかかるコスト、収率、時間、未知の副反応などを減らす目的で反応ステップ数を少なくすることが普通です。ですから、保護基は必要最低限度に留めるようにしています。しかし、保護基も進化していて、後処理、精製が容易なものも出てきています。しばしば、保護基を使用したほうが良い結果が得られる場合もあります。
- 反応性のある官能基を減らすことで副反応の予測を容易にする
- 高極性化合物の精製を容易にする
- UV吸収をもたせる(TLCで確認しやすい)
保護基の種類と一覧
ヒドロキシ基の保護基
アミノ基の保護基
カルボキシ基
- メチルエステル
- エチルエステル
- ベンジルエステル
- tert-ブチルエステル
カルボニル基
- ジメチルアセタール
- ジオキソラン
- チオアセタール