化学

アセチル基(Ac基)よるアルコール(水酸基)の保護基

Ac基とは?

アセチル基によるアルコールの保護

アセチル基はエステル系のアルコールの保護基で、弱めの酸性条件、弱めのヒドリド還元、接触還元には耐えますが、塩基性や求核剤、強酸条件では脱保護されます。保護基としてはあまり強いほうではありませんが、安価な無水酢酸で保護できるのでコストが低く、水酸基が多い糖類の水酸基の保護によく利用されます。保護反応も高収率で進行し、脱保護もしやすいです。Ac保護

アセチル基保護の特徴・利点

アセチル基で保護する利点や特徴は

  1. 保護にかかるコストが低い
  2. 安価かつ簡便に保護・脱保護可能

保護化試薬は無水酢酸がよく利用されます。無水酢酸は非常に安価(500 mL, 1,980円)で取り扱いやすいです。他にはアセチルクロリド(AcCl)なども使用されます。

欠点としては

  1. 耐える条件が限られている(求核剤や強ヒドリド還元(DIBAL等)、塩基性・強酸性条件で脱保護される)

などが欠点です。反応経路にもよりますが、一時的な保護として使用されることが多いかもしれません。

アセチル基保護・脱保護の反応機構

反応機構ー保護

Ac保護反応機構

酸無水物を用いたアルコールのアシル化反応です。無水酢酸を活性化させるために4-DMAPが加えられることがあります。4-DMAPは無水酢酸と反応することによって、活性アシル中間体を形成します(アセテートよりも4-DMAPカチオンのほうが脱離しやすいため)。この活性中間体にアルコールが攻撃して、アセチル化が完了します。

反応機構ー脱保護

Ac脱保護反応機構

脱保護は塩基性条件下で行われることが多いです。塩基性条件下では、水酸化物イオンがアセチル基に攻撃し、アルコキシドが生成しますが、これは塩基性が高いのですぐに酢酸と反応して酢酸ナトリウムが生成し、アルコール体となります。

水酸基のアセチル基保護の反応条件

アセチル化の反応は安価で扱いやすい無水酢酸を用いることが多いですが、反応性の悪いアルコールでは塩化アセチル(酸無水物)を用いることもあります。触媒としてDMAPを加えるても良いです。塩基は無くても進行しますが、ピリジンを塩基性の溶媒としても用いたり、トリエチルアミン、酢酸ナトリウムなども使います。酸触媒としてルイス酸を用いることもあります。

無水酢酸によるアルコールの保護

Ac保護反応例1DCM(1.49 mL)にアルコール体(37.2mg, 74.0mmol)を溶解し、0℃でピリジン(18.0μL, 0.22 mmol)と無水酢酸(21.0 μL, 0.22mmol)の混合溶液と4-DMAPの結晶を一欠片加えて室温で一晩撹拌した。反応後、EtOAc(20mL)で希釈し、0.1N HCl水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液及びブライン(各10mL)で洗浄した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(1%MeOH in DCM)で生成して目的物を得た(82%)。 Matthies, Stephan et al. JACS. 2015, 137, 2851. より引用。

4-DMAPを加えないAc2O/Py法は最もスタンダードな方法です。第一、ニ、三級アルコールが存在する場合、第二級に対して第一級アルコールが優先してアセチル化され第三級アルコールの保護は4-DMAPを加えないと進行しません。上記反応例では、二級アルコール体を得るために、アルコールを過剰に加えています。

無水酢酸とルイス酸を用いたアルコールのアセチル保護

Ac保護反応例2アルコール体(1.0 eq, 1.65 mmol)をTHF(5.0 mL)に溶解し、0℃に冷却した後、無水酢酸(1.0mL)およびBF3・Et2O(0.75 eq, 1.25 mmol)を加え、溶液を0℃で75分間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)を加えて反応を停止させ、ジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(3:17,酢酸エチル:ヘキサン)によって精製して、保護体(83%)を得た。Weinert, Emily E. et al. JACS. 2006, 128, 11947. BF3を用いた手法では、フェノールよりもアルコールが優先して保護されます。

その他のアセチル化保護条件

よく利用される塩基触媒:ピリジン、トリエチルアミン、ショッテンバウマン条件(AcCl,NaHCO3)、AcONa、DIEA、イミダゾール

よく利用される酸触媒:酢酸、トシル酸、BF3・Et2O

溶媒:ジクロロメタン、ピリジン、アセトニトリル、THF

アセチル基の脱保護反応例

アセチル基の脱保護は、

  1. 1.塩基加水分解条件
  2. 2.ヒドリド還元
  3. 3.酸加水分解条件

などの脱保護条件があります。この中では塩基性条件がマイルドで外しやすいと思います。

炭酸カリウムでアセチル基を脱保護

Ac脱保護反応例125℃でMeOH(100mL)にアルコール体(1.0 eq, 7.43 mmol)を溶解し、炭酸カリウム(1.0eq、1.02g,7.43mmol)を加え、室温で2時間撹拌し、飽和NH 4 Cl水溶液(100mL)でクエンチし、エーテル(2×50mL)で抽出し、乾燥し(硫酸マグネシウム),真空中で濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジエチルエーテル /ヘキサン、10~30%)で精製して、目的物を得た(100%)

炭酸カリウムや水酸化ナトリウムを使った脱保護は一般的で信頼性が高いです。

脱保護条件

よく利用される塩基触媒:NaOH、KOH、K2CO3、NaOMe、NH3

よく利用される酸触媒:HCl

還元剤:LAH

求核剤:MeMgBr

溶媒:メタノール、THF、EtOH、ジクロロメタン

注意事項ーTips

  • 無水酢酸などは酢酸臭があるのでドラフトなどで取扱う。
  • 無水酢酸を大過剰量用いるときは、クエンチ時に暴走しないように冷却するなど気をつける。

参考まとめ

Wuts, Peter G. M.. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis fifth edition (p.273). Wiley.

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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております

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