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頭を叩くと神経細胞が死んでバカになるのは本当?

頭を叩くとバカになる」とか、「神経細胞が死ぬ」という話を聞いたことはありませんか?

「脳の神経細胞は一度死んだら再生せずに減る一方だから大切にしましょう」とも言われています。

喧嘩で頭を叩いたりした時に「頭を叩くと脳細胞が死んじゃうから叩いたらダメ!」と先生や両親に注意された人もいるのではないでしょうか?

しかし、頭を叩くとバカになるこれは本当なのでしょうか?

いつごろから?誰が言い始めたことなのでしょうか?
本記事では本当に馬鹿になるのかを調査してみました。

頭を叩くと神経細胞が死ぬ?

まず、頭部への打撃が脳にダメージを与えるのは事実です。

頭への打撃は脳にダメージを与える?
頭への打撃は脳にダメージを与える?

実際に、頭は強い衝撃に弱く、強い打撃などが加わると脳が損傷して死に至ります。

例えば、平成29年の自転車乗車中の死亡事故の原因のうち頭部の損傷が原因で亡くなった人の割合は63%と半分以上を占めています。

平成29年における交通死亡事故の特徴等について平成30年警 察 庁 交 通 局より引用

頸椎(首)の損傷が原因かと思いきや6.3%と低いのです。

強い衝撃に限って言えば、体じゅうのどの部位よりも頭は衝撃に弱く、程度によっては死亡しまうということがわかりました。

足では命に別状はなくても頭だったら…

このように考えていくと

  • 強打 ——— 死亡
  • 中打 ——— 失神・記憶喪失
  • 弱打 ——— 脳の機能が鈍る、馬鹿になる?

のように強い衝撃ではなくとも頭を叩かれる程度の衝撃でも頭にはよくなさそうな気がしてきますよね

衝撃が脳に与えるダメージをもっと調査してみました。

頭部への衝撃は深刻なダメージを与える危険がある

結論から言えば、頭を叩くとバカになる以上に悲惨なことになる可能性があります

もちろん、衝撃の強さにもよります。軽くポンポンするくらいでは心配する必要はないでしょう。しかし、脳震盪を起こすレベルの衝撃は確実に脳にダメージを与える可能性があります

脳へのダメージは深刻かも?“brain2” by hose902 is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

脳震盪を起こした後の症状としては

  • 記憶力が低下する
  • 記憶が無くなる、思い出せなくなる
  • 感情が不安定になる
  • 頭痛
  • 集中力の低下

などがあります。
これはバカになるレベルを超えていると言っても過言ではないですね。

何とこうした症状は頭以外の箇所(顔や体)に衝撃が加わっても発生して、脳にダメージを受けるという点です。

例えば、サッカーやアメフトなどのスポーツでも体がぶつかった時に、脳震盪を起こすことがあります。

体にぶつかっても脳震盪を起こすことがある

頭をぶつけたりした時に「流血もはれも無いから平気だろう」放っておいたらしばらくした後に意識を失うということ起こります。

実はこれが頭の怪我の怖いところです。

脳の構造と衝撃

脳は脳の表面と頭蓋骨との間に脳脊髄液という水が隙間を埋めていて、脳が水にプカプカと浮いているようなイメージで存在してます。

English wikipedia by OpenStax / CC BY 4.0

しかし、よく「頭に衝撃を与えるとプカプカ浮いている脳が頭蓋骨の内壁にバンバンぶつかって損傷する」
と言われますが、実際にはそのようなことは起こらないそうです。

ボクサーも頭を叩かれて脳にダメージを受けている

モハメド・アリといえば伝説的なプロボクサーで元ヘビー級世界チャンピオンですね!

若き頃のモハメド・アリ from wiki PD

彼の戦いは引退後も続いていました。彼は「パーキンソン病」という脳の病気と戦っていました。

パーキンソン病は脳神経の病気です。

  • 原因: ドーパミンの不足、ドーパミン神経の減少
  • 症状: 筋固縮(関節が自由に動かせない)が起こり、ゆっくりとしか歩けなくなり、歩幅も狭くとぼとぼ歩くようになる。

パーキンソン病になると自由に歩けず転倒しやすくなります。

「パーキンソン病」は高齢者に多い病気ですが、脳への衝撃を受けやすいボクサーにも多い病気としても知られています。

頭部を狙うボクシングは、頭部へ繰り返しの衝撃が起こるため、頭部への衝撃と「パーキンソン病」は強い関連性が疑われています

つまり、たくさん頭を叩かれることによって、脳神経がダメージを受けていることを示しています。
ボクサーは相手が倒れるまで殴り続けるので、脳へのダメージは非常に大きなものとなっています。確実に脳へのダメージは蓄積しているということですね。

脳震盪とセカンドインパクト症候群

喧嘩あるいはボクシングなどの格闘技だけでなく、身体の接触が多いスポーツ(フルコンタクトスポーツ:ラグビー、アメフト、アイスホッケーなど)では、頭への直接的な衝撃でなくてもよく脳震盪が起きます

脳震盪は脳への衝撃によって意識を失ったり、短期間物忘れや記憶障害などを起こす脳障害の一種。症状は一時的で時間が立つと正常に戻ることが多い

脳震盪は、脳のCTといった画像診断でも異常はみられない場合が多いのが特徴です。

実際に昔は、脳震盪は脳がびっくりしただけでダメージは無いというような見解が多かったそうです。しかし、これは現代では誤っているとされています。現在では脳の見た目では変化はなくても、より小さいレベル(神経細胞レベル)では変化が起きていて、一度受けた脳震盪のダメージは蓄積すると考えられています。

例えば、過去に脳震盪を起こした事がある人は、再度脳震盪を起こす確率が3-7倍になります[Guskiewicz, Kevin M., et al. “Cumulative effects associated with recurrent concussion in collegiate football players: the NCAA Concussion Study.” Jama 290.19 (2003): 2549-2555.]

セカンドインパクト症候群

セカンドインパクト症候群は一度脳震盪になった直後に、再度脳震盪をおこした時、軽度の外傷であっても、一定時間後に急激に悪化して昏睡などになり、死亡に至る症候群です。

死亡率は50%といわれています。硬膜下血腫が起きていることが多く、死亡に至る原因であると考えられています。繰り返し脳震盪を起こすような状況下にある人は脳震盪を甘くみてはいけません。スポーツで脳震盪が起こる状況が想定される場合はなるべくこれを避けなければいけません。

硬膜下血腫とは?

硬膜下血腫は交通事故、スポーツ、殴打によって起こる頭蓋骨の下にある膜の硬膜で内出血が起こり、血腫(血豆みたいなもの)が生じて脳を圧迫して損傷を起こす。極めて予後不良(病後の回復が望めない)です。

硬膜下血腫などが起こると脳は頭部の密閉された空間の中にあうので、頭蓋骨の裏側(脳と頭蓋骨の間)にたんこぶができると液の逃げ場がないので脳が圧迫されて脳が損傷します。

 頭部外傷後脳症

ボクサーの半分程度に観察される脳症。意識障害を起こさない程度の小さい衝撃を繰り返し受けることで起こると考えられています。ヘビー級など重いクラスであるほど起こりやすく加齢によって促進し、脳萎縮などがおこり、認知症、怒りやすい、多幸感、注意力の低下、言語学習の障害などがみられます。

脳震盪後症候群

軽症の脳震盪を受けたあとに起こる症状、頭痛やめまい、あたまがチカチカ、くらくらする、倦怠感、性格変化などがおこる。脳震盪後の症状が軽症でもこうした異常が観察されることがあります。

このように、脳震盪自体の症状が軽いとか、気を失ったりしなくても頭への衝撃が起こることで脳、身体に異常がみられることがあります

実際に記憶障害が起きたりするので、頭を叩くなどをするとバカになるというのは全くの的外れでは無いのではないでしょうか?

死んだ神経細胞は再生しない?

頭への衝撃は体に良くないことはわかってきましまた。それでは、死んだ神経細胞が再生しないという話は本当でしょうか?

脳にある神経細胞は大人になると再生しないと聞いたことがある人が多いと思います。

でも実は、大人でも神経細胞は再生していることが分かっています

we demonstrate that new neurons, as defined by these markers, are generated from dividing progenitor cells in the dentate gyrus of adult humans. Our results further indicate that the human hippocampus retains its ability to generate neurons throughout life.
「私達は海馬の歯状回という場所で前駆細胞から新しい神経細胞が分化して生まれることを発見した。これは、大人になってもずっと海馬では新しい神経細胞が生まれ続けていることを示している。」
 
Eriksson, Peter S., et al. “Neurogenesis in the adult human hippocampus.” Nature medicine 4.11 (1998): 1313.

頭を叩くとバカになるという話が広まったのも頭の神経細胞が死ぬと二度と生まれ変わらないから、なるべく頭を守って神経細胞の数を保とうという意識があったからかもしれません。

もともと、神経細胞が二度と生まれ変われないという話は、1928年に(カハール:cajal)という人が「一度損傷を受けた成体哺乳類の中枢神経系は再生しない」と論文で発表したことが発端となったそうです。

しかし、カハールの学説は後に誤りということがわかってきました。その後の研究で、人以外の動物、げっ歯類(ネズミとか)などでは神経細胞が新しく生まれることが見つかっています。しかし、ヒトではその証拠が見つかっていませんでした。その後、1998年にErikssonらがヒトでも神経細胞が再生することを発見し、神経細胞は大人では再生しないと信じられていた説が覆されました

神経細胞が新しく生まれるってことは、頭を叩かれても大丈夫?というとそうでもないようです。

今のところ、神経細胞が新しく生まれるのは海馬など一部分に限られていて、脳全体で新しく生まれているかどうかはわかりません。
また、新しく神経細胞が生まれると、記憶能力が向上するという報告や[Sahay, Amar, et al. “Increasing adult hippocampal neurogenesis is sufficient to improve pattern separation.” Nature 472.7344 (2011): 466.]今まで居た神経細胞のネットワークが崩されてしまい記憶が失われるという報告もあります[Weisz, Victoria I., and Pablo F. Argibay. “Neurogenesis interferes with the retrieval of remote memories: forgetting in neurocomputational terms.” Cognition 125.1 (2012): 13-25.]
3歳よりも昔の記憶が思い出せない幼児期健忘という現象がありますが、これは海馬で生まれた新しい神経細胞によるものであるという報告もあります[Akers, Katherine G., et al. “Hippocampal neurogenesis regulates forgetting during adulthood and infancy.” Science 344.6184 (2014): 598-602.]

神経細胞は死んでも海馬では新しい神経細胞が生まれ続けている!
でも、新しく生まれても記憶の忘却が起きるという報告もあります。
また、神経細胞はストレスの無い良い環境にいると15%も神経細胞細胞(マウス)の新生が増えるという研究報告もあります。

重要なことは、神経細胞については生まれたりしているかもしれませんが、脳は複雑なシステムであるため部分的な機能が損なわれてしまえば障害が起こったり命を落としたりする可能性があるということです。

結論
頭に衝撃を与えると脳に損傷が起こる。バカになるどころか命を落としたり、前頭葉などを損傷すると知的機能が低下する。新しく神経細胞が生まれてはいるが、機能回復まではいたらない

頭は叩かないように!

頭部を保護する

乳幼児の頭蓋骨は柔らかく頭への衝撃に気をつけなければなりません。
転びやすく頭をぶつけやすいので目を離した状況で遊ばせる時にはヘルメットをつけると安心できますよ。
汗っかきの子や帽子をつけるのを嫌がる子はリュックタイプのものもあるのでこちらを利用してもよいと思います。

死亡事故例としては窒息や溺水、交通事故などが多く、頭部の殴打は決して多くはありませんが、脳へのダメージは後に影響するかもしれません。目を離す機会がある場合は持っておくと安心できます。

バイク乗りの方は死亡事故の多くが頭部・頸部損傷であることからより安全性の高いフルフェイスタイプのヘルメットをおすすめします。顎が出ている半ヘルタイプでは頭部損傷の割合が高いというデータがあります。

最近は通勤・通学、あるいはウーバーイーツなどの配達でロードバイクに乗る人が増えていますが、こちらも例外ではありません。原付バイクと同じくらいの速度が出て、公道を走っているのでヘルメットをしないのは自殺行為とも言えます。身を守るためにもヘルメットは着用しましょう

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3 COMMENTS

匿名

小さい頃から頭を叩かれて育てられたから今僕は記憶力が悪くて頭がすごく悪いのですか?

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こめやん こめやん

どのくらいの力で叩かれていたんでしょうか。小さい頃から頭を叩かれていたとあればそれが原因かもしれません。
死んだ細胞は蘇らないかもしれませんが記憶力・脳機能は強化できますし、近年では脳細胞は成人でも増えるという見解もあるようです。
情報技術の発展で記憶力は昔ほどの重要性はないので記憶力以外の情報処理力などを鍛えていけば頭良く見えるようになリますよ。

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