化学

TLCのRf値の計算方法や意味とは?

TLCのRf値

TLC(薄層クロマトグラフィー)のRf値で化合物を同定する?

TLCはすばやく化合物を分離し、目視できるので混合物中に含まれている化合物が「どのような物質か?」調べる方法として多用されています。TLCで分かる情報はたくさんありますが、そのなかでもRf値は重要です。Rf値は展開溶媒の移動距離と化合物の移動距離の比で表されます。例えば、上のスポットは展開溶媒の展開距離が10 cmに対して、化合物の移動距離が7 cmです。この化合物のRf値は、10÷7 = 0.7となります。

TLCRf値

なぜRf値を算出するの?分かることとは?

化合物の移動距離は展開距離によって変化してしまうため、比較することができません。展開距離と化合物の移動距離の比をとることで、他の条件と比較することができるようになります。特に、同じ条件の時にRf値が低いことは、その化合物中に極性官能基(NH2,COOH、OH等)があり、Rf値が高い時は、極性官能基が少ない分子であることがわかります。発色試薬と組み合わせることによって、より正確に「どんな官能基が存在するか?」を調べることが可能です。(ニンヒドリンはアミンが含まれると紫色に変色)

Rf値が高い = 極性が低い分子 = アルキル鎖やベンゼン環などCH化合物の割合が大きい

Rf値が低い = 極性が高い分子 = アルコール、カルボン酸、アミン等

基本的に展開溶媒が変化すればRf値は変わりますが、同じ条件で展開したときには同じ結果が得られます。したがって、同じ条件で展開すれば、Rf値を比較することで、同じ化合物かどうかを予想することができます(Rf値は結構ずれるので注意する)。特に、比較したい化合物が入手できていれば、それを直接同じプレートに打つことでより正確に予想できます。

例えば、エステルをカルボン酸に加水分解する反応を行います。この反応の原料であるエステルは持っていますが、カルボン酸は持っていません。反応を行った後に一番左側と真ん中に原料のエステルを打ち(スポッティングとも言う)、右側と真ん中には反応後の液体を打ちます。真ん中は原料と反応液の両方を重ねて打ちます。これを展開すると下図のようなTLCが得られてきました。(真ん中は重ねて打つ方法を重ね打ちや三点打ちなどと言う)

Rf値_エステル

まず「:原料」と「:反応液」を比較しましょう。カルボン酸は非常に高極性の分子であることから、エステルよりもRf値が高くなることが予想されます。右側のスポットはRf値が0。3と予測通りであり、Rf値が0.5離れています。よって、予想外の反応が起きていなければ、目的のカルボン酸体が得られていると考えられます。では以下のようなTLCが得られてきた場合はどうでしょうか?

TLCのRf値とは、分析の方法

先程とは違って、一番右側の上にスポットが現れています。これは何でしょうか?Rf値を計算するとRf=0.7と原料と同じであることが分かります。したがってこの右の上のスポットは原料であることが予想されます。より確実な予想をするために、真ん中のラインを見てみます。真ん中のラインでは、原料と反応液の両方を重ね打ちしています。もしも右側のスポットが原料であれば、ぴったり重なって一つのスポットにしか見えません。右側のスポットが原料とは別の物質だった場合は、雪だるまやひょうたんのような2つの丸が見えるようになります。上のTLCではピッタリと重なっているため、原料である可能性が一段と高まりました。では下のようなTLCだった場合はどうでしょうか?

Rf値_エステル3

右側のスポットは先程とおなじようにRf=0.7位でしたが、真ん中で原料と重ねて打ったラインではピッタリと重ならずに2つのスポットがあるように見えます。つまり、上に現れたスポットはRf値は非常に近くても、原料ではない化合物である可能性が非常に高いということが分かります。これはおそらく目的としているエステルの加水分解反応以外の副反応が起きてしまったことが考えられます。このように有機合成では反応の進行を調べるための簡便な手法として重宝されています。

Rf値は化合物同定に有用な情報の一つ

化合物のRf値は、展開溶媒によって変化しますが、展開溶媒が同じであれば大体同じ距離で展開されます。つまり、論文にTLCを展開した条件(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)とRf値が書いてあれば、それと同じ条件でTLCを打つことによって、論文に載っていた化合物と同じかどうかが推測できます。

昔の論文ではTLCに関する情報が結構載っていて、例えばスミチオンという化合物では、(A)ヘキサン:アセトン=4:1 (B)ヘキサン:アセトン=2:1 (C)ヘキサン:アセトン =1:1 (D) ヘキサン:ジオキサン9:1 (E) ヘキサン:メタノール=9:1 の条件でそれぞれ、Rf値が (A)0.57 (B)0.75 (C)0.83 (D)0.32 (E)0.55などのように記載されていたりします。

スミチオン

Rf値は展開溶媒の組み合わせによっても大きく変化するので、たいていは一つ以上の溶媒の条件が載せることによって、確実性を上げています。(最近はTLC情報は載っていないことも多い)

Rf値から分子の極性がわかる

Rf値が高いときは、化合物の極性が低いことを表します(相対的なもので、展開溶媒によって変化する)。化合物の極性が低いというのは逆に、極性官能基が少ないことを意味します。

極性官能基はヘテロ原子を含むものが多いです。なかでもカルボン酸のようなイオン化しやすい官能基は極性が高い傾向があります。他にも水酸基、あるいはアミド、エステル、アルデヒド、ケトンなども極性官能基です。

ここにタイトルを入力

極性が非常に高い官能基=カルボン酸、アミン
極性が高い官能基 = アルコール
極性がやや高い官能基 = アミド、エステル、アルデヒド、ケトン

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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております

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