化学

トリチル基(Tr基)によるアルコールの保護

トリチル基保護とは

Tr基(トリチル基)とは

Tr基(トリチル基、トリフェニルメチル基)はトリチル系のアルコールの保護基で、酸条件で脱保護される保護基として利用されます。トリチル基はその嵩高さから、第二級アルコールとの反応が遅く第一級アルコール選択的に保護できる保護基として利用されています。特に核酸合成では糖5’位の第一級アルコールを選択的に保護する試薬として多用されます。酸条件では容易に脱保護されますが、塩基性条件、求核剤、酸化、還元剤には比較的安定です。接触還元には反応します。

Tr保護

特徴・利点

Tr基の利点や特徴は

  1. 第一級アルコール選択的な保護が可能(嵩高いため)

であるという点です。

反応機構

反応機構ー保護

Tr保護反応機構

3つのフェニル基によって安定化されたトリチルカチオンが生成し、そこにアルコールが攻撃するSN1機構で反応が進行すると考えられます。

反応機構ー脱保護

Tr保護脱反応機構プロトン化に続くトリチルカチオンの脱離によって脱保護が完了します。

反応条件-保護

保護条件例1

Tr保護脱反応例1

窒素雰囲気下TrCl(3.00 g,10.6 mmol)をDMAP(74 mg,0.59 mmol),アルコール体(865 mg,5.92 mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液に加えた。激しく撹拌しながらトリエチルアミン(1.64mL, 11.8 mmol)をゆっくり加え、反応物を室温で一晩撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(30 mL)を加えて反応を停止させ、ジクロロメタン(2×60mL)で抽出した。合わせた有機物を水(20mL)で洗浄し、乾燥、濾過、濃縮し、粗残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(10%EtOAc/Hex)によって精製し、トリチル保護体を得た(98%)。 Joe, Candice L., et al. JACS, 2014, 136, 8559. より引用。

保護条件

塩基はトリエチルアミン、ピリジン、DIEA、4-DMAP などが用いられます。ピリジンは溶媒として用いられることも多いです。他にジクロロメタンやTHF、DMFが溶媒として良く用いられます。長時間反応(34-48h)かけることも多いですが、反応が進行しにくい場合は60℃付近まで温めて反応させることもあります。

脱保護反応例

反応例1

p-トルエンスルホン酸一水和物(635mg, 3.34mmol)および保護アルコール体(3.21g, 8.35 mmol)をジクロロメタン(14mL)および無水メタノール(10mL)中で一晩撹拌した。濃縮後、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム(20mL)を加えて、ジクロロメタン(40mL)で抽出した。水層を再度ジクロロメタン(40mL)で洗浄した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮してシリカゲルクロマトグラフィー(15%EtOAc / Hex)によって精製して目的物を得た(62%)。

Tr保護脱保護反応例1Joe, Candice L. et al. JACS. 2014, 136, 8559.より引用。

脱保護条件

脱保護には酸を使います。ギ酸や酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、トシル酸などのブレンステッド酸やSnCl2、BiCl3、CeCl3、FeCl3、BF3、ZnBr2などのルイス酸を用いる事もできます。トリチルカチオンのスカベンジャーとしてチオアニソールなどのチオールを加える場合もあります。

注意事項ーTips

  • トリチル基のフェニル基上に置換するメトキシ基の数が多くなるほど電子供与によるトリチルカチオンを安定化させるため、酸による脱保護が容易になる(MMtr, DMtr)

参考まとめ

アルコール保護
アルコールの保護基のまとめ脱保護条件でまとめるアルコールの保護基 ヒドロキシ基はアミンと同様に非共有電子対による反応性(求核性・塩基性)があるため、意図しない反...
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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております

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