TBAFとは?
TBAF(フッ化テトラノルマルブチルアンモニウム)は第四級アンモニウム塩で、フッ化物イオン源としてよく利用されています。TBAFはTHF溶液で販売されていて吸湿しやすいので注意が必要です。フッ化物イオン源として重要で、特に有機合成ではシリルエーテルのフッ化物イオンによる脱保護反応によく利用されています。
TBAFを使った反応
TBAFはフッ化物イオン源、塩基性触媒、相関移動触媒などとして利用されます。
TBAFを使ったTBS基(シリルエーテル)の脱保護
TBAFの塩基性が問題になる場合は酢酸を用いる方法があるようです。TBAFを1~2当量、THF中などで室温で数時間撹拌してTBS基は脱保護できます
TABFの塩基性
TBAFはTHF等で加熱還流するとカルバメートが反応、外れることがあるようです。
Ref) Jacquemard, Ulrich, et al. “Mild and selective deprotection of carbamates with Bu4NF.” Tetrahedron 60.44 (2004): 10039-10047.
TBAFが除去できない?残存しやすいTBAFはどうやって取り除く?
シリルエーテルの除去によく使用されるTBAFは時々除去が困難になることがあります。
TBAFの残存を防ぐためには、
- 他のフッ化物イオン源を使用する方法
- TBAFを頑張って取り除く
があります。
他のフッ化物イオン源を使う方法
- TASF – ジフルオロトリメチルケイ酸トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム(tris (dimethylamino) sulfonium difluorotrimethylsilicate)や
- フッ化水素ピリジン(HF・Pyridine)
- フッ化アンモニウム(中性で除去が容易)
- KF&18-crown-6(クラウンエーテルによってKイオンを捕捉する)
- 酸性条件で脱保護する
TBAFの除去方法!
- NH4Cl水溶液でTBAFをTBAClとするとジエチルエーテルに溶解しなくなるので、エーテルに化合物が溶ければ、飽和塩化アンモニウム溶液で数回洗浄すると除去できる
- 化合物が水溶性の場合は、KPF6を加えてTBAFをTBA・PF6塩とすると脂溶性が増加してジクロロメタンに溶解しやすくなるためTBA塩を有機層に抽出できる
- DOWEX(陽イオン交換樹脂)と炭酸カルシウムを過剰量加えて室温、1h撹拌してろ過するとフッ化カリウムとTBAカチオンはイオン交換されて除去できる(ref2)
- 極性が低めの溶媒(トルエン、エーテル酢酸エチル)でとにかく分液して水層に落とす。
- カラムクロマトグラフィーにより除去する。ハロゲン系溶媒よりもヘキサン酢酸エチル系の方が良い?
(ref.2)Kaburagi, Y., & Kishi, Y. (2007). Operationally simple and efficient workup procedure for TBAF-mediated desilylation: application to halichondrin synthesis. Organic letters, 9(4), 723-726.
TBAFのHNMR
TBAFは除去が難しくNMRに混入すると強度が強くでてきます。
化学シフト値は3.314, 1.662, 1.451, 1.003付近に出てきます。