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DBUの塩基性が高い理由
一般的なアミン類(pka 10前後)と比べて強塩基性(pKa=12)を示すのは構造に秘密があります。
DBU、DBNは以下のような構造式です。
DBUがプロトン化すると正電荷が非局在化して、下記のような共鳴構造式が書けます。これが強塩基性を示す理由です。(共鳴構造式をたくさん書けるものほど安定なのでこの構造になりやすい)
DBUは環状のアミジン塩基という種類で以下の特徴があります。
- 強塩基
- 高い安定性
- 有機溶媒に可溶
- 高い沸点 ()
- 低い求核性
DBUは有機合成に求められる塩基の特徴を持っているため塩基触媒として利用されます。
有機合成において求められる塩基の特徴
- 強塩基かつ低い求核性
- 有機溶媒に溶けやすい
- 中程度の沸点
- 高い安定性
NaOHやNaHなどの無機塩基は塩基性は高いですが、求核性が高かったり、有機溶媒に溶けにくかったりする欠点があります。一方でトリエチルアミンなどのアルキルアミンは塩基性が弱いあるいは安定性が低いという欠点があります。DBUは間をとったちょうどよい塩基といえます。CH酸の脱プロトン化にも利用できます。
DBUの求核性が低い理由
求核性とは電子不足な原子に攻撃して結合を形成する能力のことです。水素に対しては塩基性と呼びます。かさ高い塩基は求核性が低いです。小さいプロトンに対しては接近することができても、それ以外には接近しにくいからです。
DBUやDBNの用途
DBUとDBNの間での使い分けはあまり考える必要はないと思います。
DBNのほうが若干塩基性が高いです。
無機塩基を溶かしにくい低極性のベンゼン等の炭化水素系の溶媒、ジフェニルエーテルなどのエーテル類及び高い温度を要する反応に向いています。DBNを使用することにより反応時間の短縮、副反応の低減、選択性の変化などが狙えます。
DBUの用途として、
があります。高沸点で高温度で安定、求核性が低いという特徴から脱離反応でアルケンを得る反応に使われることが多いようです。特に塩基性も高いのでハロゲン化水素を出すハロゲン化アルキルのアルケン合成に向いています
代替の対象となる塩基は、NaH、NaOH、tBuOK、TEA、DIEA、NMM、DABCO、LDA、LiMDS、BuLiなどほとんどすべての塩基を用いる条件で利用できます。
DBUの安定性について
DBUはアミジン塩基としては化学的に安定です。しかし、水存在下(80℃)では加水分解が起こるので注意が必要です。
NAKATANI, Keizo, and Sei HASHIMOTO. “Application of DBU as Strong Organic Base.” Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan 33.11 (1975): 925-935.
DBUの求核性について
DBUはイソシアネートと反応して付加体を生成します。
DBUは求核性が低いといわれていますが、無いわけではありません。
NAKATANI, Keizo, and Sei HASHIMOTO. “Application of DBU as Strong Organic Base.” Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan 33.11 (1975): 925-935.
DBUとDBNの求核性の強さ in MeCN
DBUやDBNおよび類似の求核性に関して、アセトニトリル中で測定した結果を報告している論文があります。論文によると求核性はDMAP < DBU < DBN < DABCO、ルイス塩基性はDABCO < DMAP < DBU < DBN
Baidya, M., and Herbert Mayr. “Nucleophilicities and carbon basicities of DBU and DBN.” Chemical communications 15 (2008): 1792-1794.
参考文献
- Ishikawa, Tsutomu. Superbases for organic synthesis: guanidines, amidines, phosphazenes and related organocatalysts. John Wiley & Sons, 2009.