求核剤とは?
求核剤(求核種)とは、電子対を渡すことによって結合を作る分子(化学種)のことです。
求核剤は電子対を別の原子に渡しやすい性質があります。
例えば求核剤に分類される化学種には下記の特徴があります。
- 電子が豊富(電子密度が高い領域をもつ)
- マイナスの電荷を持つ
- 非共有電子対を持つ
一方で求核剤とは逆の性質を持つものを求電子剤といい、電子を受け取りやすい性質があります。
求核剤や求電子剤は新しい化合物を作り出すのに重要なため、講義でも強調して解説されると思います。
例えば下記のような安定な化合物を混ぜても電子の受け渡しをしにくいため反応が起こりにくいです。
- 希ガス
- 二酸化炭素
- 窒素
逆に電子の受け渡しをしやすい求核剤・求電子剤の下記を組み合わせると反応が起こりやすいです。
- 塩酸(H+プロトンは求電子剤)
- 水酸化ナトリウム(HO-は求核剤)
- アンモニア(求核剤)
上のリストをみて「酸と塩基」だと思ったかもしれません。
実は酸と塩基も電子の受け渡しが基本なので求核剤・求電子剤と捉えられます。
小学校でも酸と塩基を学ぶのはこのように酸と塩基の概念が化学反応において基本的で重要だからです。
化学反応と求核剤
強い酸と塩基を混ぜると激しく反応します。
例えばH+ と -OーHを混ぜるとHとOの間に結合が生まれてHーOーHができます。
これは電子を渡しやすい求核剤である-OHと電子を受け取りやすいH+が出会って電子の受け渡しが起こったから結合が生まれています。
電子の受け渡しやすさを考えることで、どんな化学物質を混ぜわせれば反応が起こるか?
ということを予想することができるので、求核剤という概念はとても重要とされています。
極性反応は求核剤と求電子剤の反応
これまでにたくさんの化学反応が見つかっていますが、分類するとそんなにバリエーションは多くありません。
- 極性反応
- ラジカル反応
- ペリ環状反応
化学反応はいってしまえば結合が切れたり、つながったりするだけのことです。
そして化学結合は電子が作っているので、当然電子が原子から別の原子に移動すれば結合は切れたりつながったりします。
有機化学のよく目にする?ような一般的な化学反応は「極性反応」に分類されるものが多いです。
極性とはすなわち「電子の偏り」を意味するもので電子の偏った者同士の反応ということです。酸・塩基の反応、求核剤と求電子剤の反応がこの分類に入ります。
求核剤の例
どんな物質、官能基、化学種が求核剤に分類されるか例を示します。
電子を渡しやすい物質は、
- どんな状態の電子を持っているか?
- 原子がどんな状態か?(原子の種類はなにか?)
で変化します。
こうした違いによって電子が渡されやすくなります。
例えば下記のような化学種が電子を渡しやすいです。
- 非共有電子対(結合に使われていない電子、アンモニアとか)
- アニオン(HO-とか)
- π電子(アルケンやアルキン、エノラートなど)
- 偏った不安定な結合(有機金属試薬・ブチルリチウム・グリニャール試薬など)
があります。
求核性について
どの求核剤の強さを求核性と言います。
求核性と似ている塩基性があります。塩基性が高いものは求核性も高いことが多いですが違いもあります。
- 反応部位周辺が立体的にかさ高くなると求核性が減少する(原子と接近して結合を作ることができないから)
- 原子サイズが大きくなると求核性は大きくなる
- 共鳴による求核性の低下は塩基性と比べて小さい