アミン合成法のまとめ

アミン合成法

アミンは多くの生理活性物質に含まれている重要な構造です。特に脂肪族アミンは高反応性・高極性の理由から合成が難しいです。これまでに有用なアミン合成法が報告されているので紹介します。

アミン合成は単純だが難しい

様々なアルキルアミンを合成しようと考えた時に真っ先に思い浮かぶのがアミンとハロゲンなどの脱離基を有するアルキル鎖との反応だと思います。しかしこれを実際にやってみると、第二級アミンを得ようとしても第三級アミン体も生成してしまうため、第二級アミンを得るのが難しいです。

アミンの過剰アルキル化

このような過剰アルキル化を防ぐようなアミン合成法がこれまでにいくつか報告されています。今回はアミノ基導入方法について紹介します。

ガブリエル合成法(フタルイミドを利用する方法)

ガブリエル合成はアミンの保護基としても使用されるフタルイミド(phth基)を利用する方法です。フタルイミド自体をアルキルハライドや光延反応によって導入し、フタルイミドを脱保護することによって第一級アミンを得る方法です。反応性の高い第一級アミンを保護状態で導入できるというメリットがあります。

光延反応を使えば、アルコールに対して塩基を使わなくても穏和な中性条件で導入フタルイミドを導入できます。

当然ガブリエル法では第一級アミンしか導入できません。また、フタルイミドが頑丈なため脱保護が面倒というデメリットがあります。

ガブリエル合成の概略

メリット

  • 頑丈な保護第一級アミン体が得られる
  • 第一級アミン選択的に得られる
  • 再結晶で精製しやすくなる

デメリット

  • 脱保護が面倒(ヒドラジン脱保護不良時)
  • 導入・脱保護ともに高収率で得にくい
ガブリエルアミン合成法

還元的アミノ化

還元的アミノ化はアルデヒドあるいはケトンとアミンとの間で生成するイミンを還元してアミンを得る方法です。還元的アミノ化ではイミンを経由するため第二級アミンを優先的に合成することが可能です。還元的アミノ化は水素化シアノ化ホウ素ナトリウムや水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムを用いて還元します。これらの還元剤は弱い還元剤であるため他の官能基を侵さずにイミン選択的に還元できるの官能基許容性は高いです。

還元的アミノ化の概略

メリット

  • 第二級アミンを合成できる
  • 官能基許容性が高い

デメリット

  • 有毒な還元剤を使用する(NaBH3CN以外を使えば回避可能)
  • 求電子剤としてアルデヒドを用意する必要がある
  • 反応性の低いアニリンなどイミンになりにくい基質は収率が低い
還元的アミノ化反応(ボーチ還元的アミノ化)還元的アミノ化反応 (ボーチ還元的アミノ化)

福山アミン合成法

福山アミン合成法は2-ニトロスルホンアミド(ノシル基)を利用する方法です。ノシル基もフタルイミドと同様にアミンの保護基としても利用されています。スルホンアミドは通常アルキル化されませんがニトロ基の電子吸引によってスルホンアミド上の水素が引き抜きやすくなっているため、アルキルハライドと求核置換反応を起こしてアルキル化できます。

福山アミン合成の戦略

福山アミン合成の戦略

2-ニトロスルホンアミド上に予めAlloc基Boc基を導入しておけば保護アミンを得ることも可能です。

メリット

  • 第二級アミンを選択的に合成可能
  • ノシル基は保護基として優秀
  • 保護アミンを得ることも可能

デメリット

  • 臭いチオフェノールで脱保護(回避可能)
  • 直接アミン体を得られない
福山アミン合成 ノシル基でアミン合成

ホフマン転位

ホフマン転位はアミドを臭素と水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ中で反応させるとブロモアミダートの生成によりアルキル基が転位してイソシアネートが生成し、加水分解、脱炭酸を経てアミン体が得られる反応です。ちょうどアミドのC=Oが取れてアミンができるような形になります。強塩基性条件が必要なのが欠点です。

ホフマン転位の概要 from wikipedia public domain

メリット

  • 第一級アミンを合成できる
  • 一炭素減炭できる

デメリット

  • 強塩基条件が必要
ホフマン転位ホフマン転位でアミドからアミンを合成

クルチウス転位

クルチウス転位は酸アジドを加熱することによってアルキル基が転位してイソシアネートが生成し、加水分解、脱炭酸により第一級アミンを得る方法です。イソシアネートをtert-ブチルアルコールで分解すればBoc保護体、ベンジルアルコールで分解すればベンジル保護アミンが得られます。酸アジドはカルボン酸からアジ化ナトリウムやジフェニルリン酸アジド(DPPA)との反応によって誘導します。DPPAを使うほうが簡便です。クルチウス転位はカルボン酸のCOOHが外れたアミン体が得られます。イソシアネートに対してアルコールを作用させれば対応するカルバメートを合成できるので保護アミンを得られる点で有用です。

from wiki by lh.779 [CC BY-SA 4.0]

マンニッヒ反応

マンニッヒ反応はイミン(アクセプター)とエノール(ドナー:アルデヒドかケトンから誘導)との反応で、βアミノカルボニルが得られます。これはアルドール反応の派生形と考えられます。カルボニル基を適当な還元剤で還元すればアルキルアミンを得られます。

マンニッヒ反応: Mannich Reaction

芳香族アミンの合成

ニトロ基の還元

芳香族アミンの合成で重要なものはニトロ基の還元により得る方法です。

ニトロ基の還元ニトロ基の還元でアミンを得る

ゴールドバーグアミノ化

ゴールドバーグアミノ化は芳香族ブロモから直接アミンを合成する方法で、銅を使います。

ゴールドバーグアミノ化ゴールドバーグアミノ化ーアリールハライドからアリールアミンを合成する方法!

バックワルド・ハートウィグアミノ化

触媒的アミノ化として有用です。

バックワルド・ハートウィグ クロスカップリング: Buckwald-Hartwig Cross-Coupling

官能基変換によるアミンの合成

アミドの還元

アミドはカルボン酸との縮合により簡単に得ることができます。第二級アミドを還元すれば第二級アミンを選択的に得ることが可能です。

しかし、アミドは通常強い還元条件が必要なので第一選択的には使われないですが、還元が可能であれば有用な方法の一つです。

Red-AlやLiAlH4、BH3などを使って還元します。

アミドを還元してアミンにアミドからアミンを還元反応で合成

ニトリルの還元

脂肪族ニトリルはアルキルハライドに対して求核置換反応によって導入、芳香族ニトリルはザンドマイヤー反応でアニリンから合成できます。

一炭素増炭しますが、これを還元すればアミンが得られます。ニトリルを加水分解してカルボン酸にした後クルチウス転位でアミンを合成すれば炭素数の増減無しに合成できますが、脂肪族の場合はアジドからアミンを合成したほうが良いです。

ニトリルの還元は比較的強い条件が必要です。Pd/CやLiAlH4を使うことでアミン体を合成できます。

ニトリルの還元でアミンを合成する方法

アジドの還元

脂肪族第一級アミンを得る方法としてはガブリエル法が有名ですが、アジドの還元により得る方法も有用性が高いです。アジドはアルキルハライドを求電子剤として簡単に導入できます。

アルコールに対してもメシル基などの脱離基に変換した後、アジド化することで簡単に得られます。

還元はPd/Cを使うほか、ホスフィン還元(シュタウディンガー反応)でも可能です。

アジドの還元でアミンを合成eyeアジドの還元でアミンを得る方法

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