HNMRで測定すると目的物と思われるピーク以外のピークもでてくることがあります。そのなかでもよく出てくる夾雑物や謎ピークを重溶媒別にまとめます。
重クロロホルム中に混入する夾雑物、謎ピークのまとめ
高磁場に良くて出てくるピークについては
- シリコングリース (0ppm付近のピーク)
0ppm付近に登場するピークはTMS(標準化合物)が入った重溶媒を使用している場合はTMSですが、これを加えていない場合はシリコングリースやシリコンオイルなどの場合があります。0ppmのような高磁場にピークはケイ素に結合した炭素の水素である可能性が高いです。
- 炭化水素類(ヘキサン)は1ppm付近
ヘキサンは0.88 t, 1.26 mに出てくるピークです。
- トリエチルアミン (1.03t, 2.53 q)
トリエチルアミンはよく加える有機塩基で沸点はそこまで高くないのできちんとエバポすれば出てくることはあまりないと思います。水には溶けにくいので分液で取り除くには酸を加えて塩にする必要があります。トリエチルアミンに似たピークでよく出てくるものとしては、TBA(テトラブチルアンモニウム塩)があります。TBAFなどを使った時には残りやすく強度も大きくでてくるので厄介です。
- 酢酸エチル (1.26t, 2.05s, 4.12q)
酢酸エチルはカラムクロマトグラフィーなどで大量に使うため、混入しやすい物質の一つです。沸点はそこまで高くないですが、割と残りやすいと思います。減圧乾燥させてフラスコ内の匂いをかいで酢酸エチルの匂いがする場合はNMRにピークが入ってきます。オイルや水飴状の化合物の場合はクロロホルムで共沸してからやると残りにくくなります。
- ジメチルホルムアミド(8.02s, 2.88s, 2.96s)
ジメチルホルムアミドは非プロトン性極性溶媒として汎用される高沸点の溶媒です。蒸留可能ですが、沸点が高いため残りやすく、分液で水層に落として除去することもできますが、極性の高い溶媒で分液すると有機層に混入することも多いです。トルエン共沸などで除去することもできます。ジメチルホルムアミドの3ppm付近のピークはヘテロ原子に結合したアルキルプロトンのピークにあたる部分で、2つに分かれて登場します。8ppmのピークはホルミル基のプロトンで通常のアルデヒドと比べて高磁場に出てきます。
- アセトン(2.17s)
アセトンは沸点が低めなので飛びやすく混入することはなさそうですが、NMRチューブやキャップがきちんと乾燥されていないと混入することがあります。パスツールピペットやニップルもアセトンで洗ってすぐの場合は混入する場合があるので注意しましょう。