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NMRの基準物質 (TMS)のピーク一覧

NMR標準物質の一覧

測定する機器や溶媒、溶質、温度など様々な条件によってNMRスペクトルは変化するので、他の物質間のNMRスペクトルを比較するときには基準となるピークに化学シフト値をあわせる必要があります。

NMRの基準物質とは?

NMRのスペクトルは測定条件毎に化学シフト値が若干ずれるため、特定のピークを基準に合わせて校正する必要があります。このときに基準となるピークを持つ物質を基準物質と呼びます。H-NMRでは、重クロロホルムを使用することが多いと思いますが、このときに重水素溶媒に含まれる若干のクロロホルムがピークとなって7.26ppmに出てきます。重クロロホルムではこのクロロホルムのピークを7.26ppmに合わせて調整します。他にも基準となるピークはいくつかありますが、代表的なものは0ppmに出てくるTMS(テトラメチルシラン)やDSS(3-(トリメチルシリル)-1-プロパンスルホン酸ナトリウム)がよく利用されます。基準物質に化学シフト値を合わせることで、違うときに測定したスペクトル間の化学シフト値を比較することができるようになります。


重水の基準物質は何?

重水はクロロホルムのような鋭いシングレットを与えるような安定した基準がありません。そのため、基準物質を加えたいところですが、有機溶媒系の重水素溶媒で多用されるTMSは脂溶性が高く水に溶けないため別の基準物質が必要です。よく利用されるものはDSS (3-(トリメチルシリル)-1-プロパンスルホン酸ナトリウム)でスルホン酸塩の形なので水に溶けます。TMSと同じくピークは0ppmに出てきます。また、トリメチルシリルプロパン酸(TSP)もプロパン酸で水溶性のため、重水の溶媒として利用されます。

NMR基準物質の構造

この他にもアセトンなどを加えて標準ピークとすることもあります。

よく使われる基準物質

1H-NMRで使用する基準物質

  1. TMS(テトラメチルシラン): 0ppm[疎水性、低沸点27℃]
  2. HMDS: 0ppm [疎水性、高沸点]
  3. DSS: 0ppm [水溶性]
  4. TSP: 0ppm [水溶性]

1HNMRでは各々の溶媒ピークに合わせることも多いですが、基準物質としては、TMS(テトラメチルシラン)が最もよく利用されます。TMSが予め入った重溶媒が販売されているのでそれを利用するのが簡単です。TMSの問題としては

  1. 低沸点のため徐々に揮発してピークが小さくなる
  2. 疎水性のため重水には使えない
  3. 0ppm付近にピークが出てくるものには使えない(TBSとか)

などがあります。TMS入りのNMR溶媒はTMSの沸点が27℃と非常に揮発しやすいことから古いと揮発してピークが小さくなることがよくあります。揮発してほしくない時はHMDSのほうがよいです。こちらは沸点が100℃くらいなのですぐに揮発してなくなることは無いと思います。

またTMSは疎水性のため重水の標準には使えないので、DSSなどを利用しましょう。

13C-NMRの基準も同様に溶媒ピークか、TMSを利用します。

フッ素NMRの基準物質

異種格のNMR測定のうちフッ素は特徴的な性質を有するため分子構造中に組みこまれやすいと思います。フッ素は通常使用するNMR溶媒には入っていないため、標準物質を加える必要があります。

フッ素NMRの標準物質としては不活性でシングルのピークを与えるCFCl3(トリクロロフルオロメタン)が使用されます。これはTMSと同様にフッ素NMR上では0ppmを示します。

CFCl3の欠点はTMSと同様に沸点が低い(23℃)ことで飛びやすいので作りおきなどは注意が必要です。

他の標準物質としては

  1. TFA(-78.5 ppm) 強酸性なため外部標準とするべき
  2. ヘキサフルオロベンゼン(-162.9 ppm)
  3. トリフルオロメチルベンゼン(-63.9 ppm)
  4. KF(-125.3)

などがあります。

ケイ素NMRの標準物質

ケイ素もシリコンとして有機材料分野や疎水性基として医薬分野での利用が拡大しています。ケイ素は天然の有機化合物には含まれていないのでケイ素NMRも有用です。ケイ素NMRの標準物質はTMS(テトラメチルシラン)がここでも利用されます。TMS(0ppm)で合わせます。

リンNMRの標準物質

リンNMRでは標準物質としてリン酸を利用します。リン酸は外部標準として利用します。リン酸を0ppmに合わせます。

窒素NMRの標準物質

窒素NMRではニトロメタンを標準物質として使います。ニトロメタンを0ppmに合わせます。

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