化学

エバポレーターで溶媒を濃縮!エバポの使い方や原理、DMFも留去可能

エバポレーターの使い方

エバポレーターは有機合成の実験で溶媒を効率的に蒸発させるのに利用!

エバポレーター」はできるだけ液体を早く、効率的に蒸発させる装置です。その中でも有機合成ではロータリーエバポレーターと呼ばれるフラスコを回転させることによって効率的に加温、蒸発表面積を広げて蒸発させる装置を使います。

有機化学では、ジエチルエーテルやベンゼンなどの有機溶媒で天然物から化学物質を抽出したり、反応を行ったりします。この有機溶媒は最終的にはいらないものなので取り除く必要があります。有機溶媒は沸騰させて蒸発させることで簡単に取り除くことができますが、溶媒が1Lもあったり、溶けている化合物が熱に弱かったりすると熱をかけられないし、時間もたくさんかかってしまいます。

そんな時エバポレーターを使えば、あまり熱をかけなくても減圧することで素早く効率的に溶媒の除去ができます

エバポレーター(エバポ)を使った濃縮の仕組み・原理とは?

エバポレーターはどのようにして効率的に液体を蒸発させているかというと主に以下の工夫を行っています。

  1. 湯浴で溶媒を温める
  2. 回転(ロータリー)させて効率的に熱供給と蒸発表面積を広くする
  3. 溶媒蒸気を冷却して凝縮させる
  4. 減圧して沸点を下げる

①湯浴で溶媒を温める

液体は沸点に近づくほど蒸発していく量が増えるので、溶媒を湯浴で温めて蒸発スピードを上げます。エバポでは通常30-60℃くらいの範囲で温めます。沸点が100℃以上のものは60℃くらいまで温めますが、100℃以下のものは熱で化合物が壊れる危険があるのでなるべく低温(30-40℃)で温めます。

②ナスフラスコを回転させて効率的に熱供給、蒸発表面積を広げる

エバポでは溶媒が入ったスリ付きナスフラスコを回転させることによって、効率的に温められます。ちょうど缶ビールを氷水で回転させて冷やすのと同じ原理です。また、回転させることによって、フラスコの内壁に薄い溶媒の膜ができます。これによって、蒸発させる表面積を広げられるので蒸発が早くなります。

③溶媒蒸気を冷却する

どんどん蒸発させた溶媒蒸気は冷却、凝縮させて気体から液体に戻して回収します。エバポレーターでは0℃~-20℃くらいまで冷えた冷却液が循環した管が通っていてその管に蒸気が冷やされて液体になります。凝縮して液体になった溶媒は下にある溶媒溜めに溜まっていきます。

④減圧して沸点を下げる

溶媒の沸点は気圧が低いほど下がります。エバポではポンプで減圧することによって、溶媒の沸点を下げてあまり熱をかけなくても溶媒を素早く蒸発させることができます。

沸点が低い溶媒(エーテルやジクロロメタン)であれば、800 – 600 hPa,酢酸エチルやヘキサンなどでは400-150hPaくらい、トルエンなどの高沸点なものは20hPa以下まで減圧させます。

エバポレーター(エバポ)の装置ー冷却装置、ポンプ、湯浴 etc.

エバポレーターの概要

上の写真、中央の装置がエバポレーターの本体?です。右にあるのは冷却装置で、左にあるのはポンプです。エバポレーターはいくつかの装置の組み合わせで出来ています。

  1. 冷却装置
  2. 湯浴
  3. トラップ球(突沸止め?とも。使用しないこともある)
  4. ナスフラスコ
  5. 溶媒溜め
  6. 冷却管
  7. (ダイヤフラム)ポンプ
  8. 溶媒回収装置

エバポレーターの使い方

  1. 冷却装置のスイッチをいれます。冷却と循環のスイッチが別々の場合はどちらもスイッチをいれます。冷えるまで時間がかかるので、30-60分前くらい余裕を持ちます
  2. 湯浴のスイッチを入れます。湯浴はすぐに温まるので直前でも良いです。もちろん冷却装置のスイッチを入れたときに入れておいても良いです。
  3. 溶媒溜めに入っている溶媒を捨てる。特に低沸点溶媒が入っていると蒸発スピードが大幅に落ちるので注意する。
  4. 飛ばしたい溶媒が入ったナスフラスコを接続します。通常はトラップ球と呼ばれる?ガラス器具をエバポレーターとナスフラスコの間に接続します。
  5. コックを閉じる
  6. ゆっくりと回転数を上げて回転させる。小さいナスフラスコは早めに回して良いと思います。液面がバシャバシャ波打たないような回転で(6-7くらい?常にMAXの人もいる?)
  7. 低沸点溶媒とか熱に弱い化合物の場合は先にゆっくり軽く減圧してから温める。高沸点な溶媒や中程度の溶媒の場合は先に温めてからゆっくり減圧していっても良い。気圧を数値で細かく指定できる場合はそちらのほうが初心者は突沸しにくいと思います。
  8. 突沸に気をつけて気圧を下げる
  9. 溶媒が飛んだら湯浴から上げてからコックを開けて常圧にもどす。しばしば、ナスフラスコがはずれないので、木槌などで叩いて外す。
  10. もう使用しないなら湯浴、ポンプ、冷却装置のスイッチをきって溶媒溜めの溶媒を捨てる。トラップ球も洗っておく。

ナスフラスコの容積が1Lの場合は折れる時があるのでナスフラスコが立つように角度を変えたり、溶媒量を減らしたり、有機溶媒を少なくするなど注意が必要です。特にクロロホルムやジクロロメタンなどの密度の大きい溶媒

エバポの詳細

エバポレーターで突沸する、DMFは飛ばせる?Q&A

ナスフラスコがはずれない

エバポレーターは減圧するので、スリがはずれなくなることは良くあります。木槌などで叩きましょう。叩くポイントなどは以下の記事でも取り上げているので参考にしてください。叩くときは雑巾やキムタオルなどで覆ってからやると割れにくいです。

分液ロートのスリの外し方
固着したガラス栓スリを簡単に外す方法!固着したガラス栓を外す方法は簡単です。机で叩くだけ!外れることを確信して叩き続けることで外せます。...

突沸してしまう

あなたが何回かエバポレーターを使用した経験があり、いつもより以上に突沸してしまうという場合なら、溶媒の中に固体が入っているか確認してください。ゴミや化合物の結晶などがある場合は、それが沸騰石のような役割を果たして、泡が出やすくなります。大抵はろ過したほうが時間の節約になるので、取り除きましょう。撹拌子も同様です。その他の原因としては、

  1. 温めすぎ→温度を下げる
  2. 減圧しすぎ→減圧しすぎない
  3. 回転しすぎ→ゆっくりと回転させる、波打たせない
  4. ナスフラスコの内壁にヒビが入っている→泡みたいな傷?は見にくい、内壁を擦ったあとなど小さいものも。ナスフラスコを変える
  5. 湯浴のそこやヘリにあたって衝撃が加わっている→衝撃、振動を与えない。
  6. トラップ球とかどこかが歪んでいて、回転がおかしい(グワングワン回っている)、まっすぐなガラス器具を使う。ナスフラスコも手作りっぽい、いびつなものは使わない
  7. 減圧や加温が急激すぎる→ゆっくりと減圧、加温を心がける
  8. クエンチしていなくて温めることで反応が起きて反応熱で沸騰している→クエンチする。
  9. 粘性が高い液体で泡が消えにくい→しょうがない。粘性の低い溶媒に変える方法もあるが化合物の性質の場合は、諦めてゆっくり蒸発させる
  10. 化合物の溶解度が低い→蒸発していくと結晶が析出する→溶媒を変える溶けやすいものにする。ろ過する。

蒸発するのが遅い

最も初歩的なミスは冷却装置が動いていないことです。スイッチが入っていない、ちゃんと冷えていない、または循環のスイッチが入っていない。たまに、冷却液が固まってしまっている場合もあるので冷却液を覗いてみる。凍っていたらエチレングリコールなどの不凍液を追加する。

それでも遅い場合はポンプを疑います。ポンプが正常に引いているかを確認します。ポンプが正常に引いている場合は、ポンプとエバポレーターを接続する耐圧管にヒビ割れがないか?コックはしまっているか?ナスフラスコやトラップ球はきちんとハマっているか?スリの間にゴミはないか確かめる。溶媒溜めの部分もしっかりとしまっているか確認する。分液後の溶媒を飛ばしている場合は中身が水だったというパターンもあるので確認する。これらが正常だった場合は、1.溶媒溜めに入っている溶媒を捨てる。2.ウォーターバスの温度を上げる。3.できるだけナスフラスコの回転を速くさせる。4.ナスフラスコのウォーターバスにつける角度を水平に近づける。5.溶媒を入れ過ぎない or 大きなナスフラスコに変更する。などの方法があります。

ポンプの音がおかしい、引かない

エバポレーターを長時間使っていたり、するとポンプの方まで溶媒が行ってしますことがあります。その時は空引きを5分位します。(空引きはポンプに何も繋がないで常圧で稼働させることです)。高沸点溶媒の場合は飛ばないので強引な方法ではアセトン流してポンプに引かせるという方法もあります。あるいは分解して清掃します。ゴミが詰まっていたり、昇華した化合物がへばりついたりしていることがあります。ダイヤフラムのパッキン?にヒビや割れ、変形が起きると減圧しなくなります。自分で交換できるなら交換、できないものは修理対応になります。

飛ばしたら何も残っていない

何も無いように見えて実は内壁に薄くへばりついていることがあります。ナスフラスコを使用前に重さを測定しておくと、飛ばしたあとのナスフラスコの重さを測定することで、化合物の量を割り出すことができます。その際はエバポレーターで蒸発させたあとに、真空ポンプ(もっと強く減圧する装置)で減圧後に測定しましょう。絶対にあるはずなのに無いという場合は、化合物の分子量が小さい、極性が低い場合は欲しい化合物が蒸発、昇華してしまった可能性があります。化合物の色や匂いがある場合は、溶媒溜めの色や匂いあるいはTLCを確認しましょう。こういう化合物を扱う場合は低沸点の溶媒を使用するか、直接カラム、昇華、再結晶をするなど工夫が必要です。

使用していたら突然フラスコが割れた

ナスフラスコにヒビが入っていると割れることがあります。過酸化物が含む溶媒を濃縮すると、爆発することがあります。THFやジエチルエーテルなどのエーテル系の溶媒は古く放置されたものは危険です。

蒸発するスピードが遅い

冷却装置は正常に動いてますか?スイッチが入っていないことがよくあります。冷却管の部分に触れて冷気を感じない場合は冷却液が循環していないことがあります。またはポンプの劣化、耐圧管のひび割れ、ガラススリが汚れている。また、長期間使ってメンテナンスしていない場合は、フラスコと冷却管の方へとつなぐガラス管のパッキンが劣化している場合があります。その場合は冷却管側を外して、ガラス管を割れないように気をつけて叩いて取り外してゴムパッキンを交換します。

ポンプの空運転は必要?

トラップをしていても、どうしてもポンプの方に溶媒がいってしまいます。それですぐに壊れることはありませんが、空運転をすることで、この溶媒を除去できます。だいたい5分もやれば十分です。

水はエバポできる?

水の蒸発も可能です。思い込みで水の蒸発はできないと思っているひとも多いですが、突沸しやすく、時間もかかりますが、十分飛ばせます。大容量の水を蒸発させると冷却管が氷で覆われて飛びにくくなるので、アルコールやアセトンで流すと良いです。

DMFやDMSO、水、ブタノールは飛ばせるの?

湯浴の温度などによりますが、DMF(153℃)はエバポレーターでも留去することができます。ブタノールや水も可能です。湯浴の設定温度は60℃くらいで、減圧度は20hPa以下で可能です。NMP, DMSOは熱をかければやれないこともないかもしれませんが、基本は飛ばせないと思ったほうがよいかもしれません。

突沸したらどうする?

コックを開けて減圧を解除します。コックを握りながら減圧していくとすぐに対応できます。ポンプのスイッチを切っても突沸は収まりません。トラップ球も清浄な状態にしておけば、突沸しても回収できます。

ジョイントクリップ?クランプは必要?

ジョイントクランプは落下を防ぐために個人的には使用したほうが良いと思います。使用しなくてもエバポの利用はできます。プラスチック製は着脱容易ですが、もろくて壊れやすくしかも高いです。金属製は壊れることはまず無いですがつけにくいです。

グリースは塗っても良い?

エバポレーターはコックの部分など冷却管の方以外はグリースは塗りません。ナスフラスコの部分などに塗ってしまうとグリースが混入して、除去が困難になる場合があります。減圧度がいまいちでもグリスを塗るのはやめたほうが良いとおもいます。

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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております

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