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NMRで見える不純物のピークは一体何だろう?まとめてみた。

化合物を精製し、いざNMR解析だ!と思って解析すると結構よくわからないピークがいますよね。特に研究室に配属されたばかりの初心者だと余分なピークが何なのか特定するのは大変だと思います。

今回はそんなNMR測定でよく表れる不純物と考えられるピークについてまとめてみました。

NMR測定で出てしまうもの

NMR初心者、あるいは慣れた人でも以外と忘れがちなのが不純物ではなく、NMR測定で原理的にどうしても出てしまうピークです。例えば下記のサテライトピークやスピニングサイドバンドなどがあります。

カーボンサテライト

1Hの場合には、デカップリングしている場合を除いて他の各種とのカップリングについて考える必要があります。特に有機化合物に多いのが13C核ですが、天然存在比が1.1%なのでその程度しか強度がないピークが検出されます。通常の1HNMRではほとんど無視できますが、溶媒など濃い濃度で混入しているものには13Cと1Hのカップリングしたサテライトピークが観測されます。もちろんカーボンサテライトは不純物なわけではないのですが、初心者は結構不純物と間違えたりするので注意しましょう。

スピニングサイドバンド

測定時にサンプルを回転させた速度と同じ感覚で、目的のピークの両脇に小さいピークが出ることがあります。これをスピニングサイドバンドと言って、普段は小さいため重溶媒のピークなど元々のピークが大きい場合のみに確認されます。スピニングサイドバンドが大きくシムの調製が不適切な時や、サンプルが回転していないときによく見られます。

ストロングカップリング

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溶媒由来

反応、精製時などに使用した溶媒、あるいはNMR用の重溶媒に含まれている不純物のピークが観測されることがあります。

残存溶媒由来

反応や生成で使った溶媒が微量でも残ってしまうとNMRのピークとして観測されてしまいます。それぞれのNMR残存溶媒のピークは論文でピーク値でまとめられているのでそちらでチェックできます。

[blogcard url=”https://www.chem-station.com/blog/2017/01/nmr-chemical-shifts.html”]

重溶媒由来

NMR測定に使用する重溶媒からも、化合物由来とは異なるピークが観測されることがあります。

重溶媒の分解物

重溶媒によっては分解しやすいものがあります。例えばTHFなどは分解すると開環したような不純物がいくつか検出されることがあるので気を付けましょう。そのような場合はいったん重溶媒だけでピークを取ってみて、不純物が観測された場合は新しい重溶媒で測定するようにしましょう。

Double Water Peaks

NMRを測定する際に使う重溶媒には、水との重水素交換によって二種類の水分子H2OとHDOが観測されることがあります。これをDouble Water Peaksと言って、重アセトンなどの交換されやすい重溶媒の場合はこのようなピークが観測されます。

[blogcard url=”https://m-hub.jp/chemical/1174/tips-on-handling-nmr-solvents-and-double-water-peaks”]

コンタミネーション

有機合成を行っていると、反応でできる副生成物以外にも色々なところから不純物が混入(コンタミネーション)してきます。よく混入するのは、オイルや可塑剤などです。

オイル

有機合成ではガラス器具を使う場合が多いので、そのすりに対してオイルを塗ったりします。また反応中で使う油浴ではシリコンオイル、真空ポンプにもオイルが使われたりするため、結構オイルが混入することは多いと思います。こちらも残存溶媒がまとめてある論文にも載っているのでチェックしてみましょう。基本的にはかなり高磁場にでるのでわかりやすいです。

ちなみにオイルを取り除きたいときは、カラム等でも精製するのもよいですが、極性の高い化合物に混入してるのであればヘキサンなどの低極性溶媒を加えた後にデカンテーションすることでも十分取り除けます。

安定剤

使用した溶媒や試薬には安定剤が含まれている場合があります。よくある例でいえばTHFなどのエーテル系溶媒には、酸化による過酸化物の生成を抑えるためBHTが安定剤として加えられています。そのような場合は溶媒や試薬のラベルに「安定剤含有」などと書いてあるはずなので、チェックしてみましょう。

可塑剤

可塑剤はプラスチック等を柔らかくする目的で使われていて、実験中に使われる色々なものに使用されています。主にはフタル酸エステルなので、芳香族領域に不純物が見られた場合は可塑剤を疑ってみましょう。先程の残存溶媒の論文にこちらもピークが載っているので覚えておくと、反応と関係がない混入だと予測できますよ。


化合物の分解

最後にNMRを測定する段階で化合物が分解している可能性があります。そんな時は、測定し終わったNMRサンプルからそのままTLCを打ってみましょう。前見たものと違うスポットが表れていればおそらく化合物が分解していることになります。

化合物自体が空気中で不安定でない場合は、NMR溶媒が古くなっている可能性があるので新しいのに変えることで改善できるかもしれません。例えば、よく使われる重クロロホルムでは、古いものではHClが出てくるため、酸に弱い化合物などは分解してしまうことがあるので気を付けましょう。

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