アセチル基は最も有名な官能基の一つです。
この記事ではアセチル基の構造、化学的性質や特徴などを紹介します。
アセチル基とは?高校化学でも登場!アセチル基の構造
アセチル基はCH3-C=Oで表される官能基の一つです。
略称は「Ac」です。アセチル基の英語名は「Acetyl group」で酢酸「Acetic Acid」と名前がにているように構造も近いです。
アセチル基の導入は反応性を低下させる
アセチル基を導入する反応をアセチル化と呼びます。
アセチル基はアミンやアルコールと反応すると、化学的な性質が大きく変化します。
アミンのアセチル化は無水酢酸と混合して導入します。
アミンをアセチル化するとアミドに変化します。
アミンは極性、求核性の高い物質ですが、アセチル化によりアミドになると極性が低下し、求核性もなくなります。
そのためアセチル基はアミンの保護基として利用されます。
アミンについたアセチル基は酸や塩基を使って元のアミンに戻すことができます。
アセチル基は疎水性基?アセチル基導入で分子の極性が低下する?
アセチル基はアミンやアルコールなどの極性の高い化合物に導入することが多いです。
アセチル基がアミンやアルコールに導入されると極性が低下します。
アミンにアセチル基が導入されると「アミド」、アルコールにアセチル基が導入されると「エステル」というグループに変化します。アミドやエステルは比較的極性の低い化合物として知られています。
- 極性の高い官能基:アミン、アルコール、カルボン酸
- 極性の低い官能基:アミド、エステル、アルカン
アセチル基が与える影響 電子吸引効果により化学的性質が変化する
アセチル基導入で極性が低下するのはアセチル基による電子吸引効果が影響しています。
アミンやアルコールは非共有電子対という移動しやすい電子を持っています。そのためアミンやアルコールは(電子供与性)です。
この電子供与性の電子は「H2Oの水素」のようにプラスに分極している分子と水素結合しやすいです。このような性質のため、アミンやアルコールは水にとけます(アルコールよりも反応性の高いアミンは実際に水素を奪ってHO-を発生させるので塩基性を示します)。
化学的性質の変化
アミンとアルコールにアシル基を導入させると化学的性質はどのように変化するでしょうか?
アミンを例にとるとアセチル化(アシル化)するとアミドになります。そうなるとアミンの窒素に対して「距離が遠い水」よりも「距離の近いカルボニル酸素」に非共有電子対の電子が奪われます。
なぜならカルボニル酸素も電子を引っ張る性質を持つためです。そうなると、アミンと同じように水素結合ができなくなっています。
アセチル基(アシル基)は酸素の電気陰性度が高いため、酸素と結合する炭素の電子が奪われて電子不足になっています。そこに電子を渡しやすいアミンが結合するとアミンの電子がカルボニル酸素に奪われる形になります。このように原子と結合することによってその原子の電子を奪う性質を持つ官能基を「電子求引基」といいます。
このようにアセチル基に電子を奪われることによってアミンやアルコールの反応性は低下します。
このような性質を利用したのが保護基です。
アルコールやアミンはそのままでは他の分子と反応を起こしてしまうことがあるので、反応しにくくするため、アルコールやアミンをアセチル化します。
アシル基とアセチル基の違いは?
アセチル基と似た表現にアシル基というものがあります。
アセチル基はアシル基の一部です。アシル基のほうが意味が広いです。
アシル基はCH3以外の炭素鎖があってもOKです。アシル基を付与させる反応を「アシル化」といいます。アシル化反応といったりします。
アセチル基とカルボニル基の違いとは?
アセチル基と似ている表現にカルボニル基があります。
カルボニル基はC=Oを意味します。
アセチル基にはカルボニル基が含まれています。カルボニル基を含む化合物として、酢酸やアセトン、アセトアルデヒド、酢酸エチルなどがあります。
しかし、一般的に「カルボニル化合物」という場合は性質が結構大きく異なるため酢酸などは含まれません。
特に、ケトン・アルデヒドをカルボニル化合物と呼びます。
アセチル化の方法や脱保護について
アセチル化は「無水酢酸」や「塩化アセチル」を反応剤として塩基として「トリエチルアミン」を加えたり、DMAPを触媒として加えて行います。
アセチル化の脱保護は炭酸カリウム・アルコール溶液などで行います。反応は簡単で定量的に進行します。
アセチル化の反応機構や詳しい手順などについては以下の記事を参考にしてください。
アセチル基の検出方法
アセチル基の検出方法としてヨードホルム反応が使えます。ヨードホルム反応はアセトアルデヒドやアセトンなどのアセチル基を持つケトンやアルデヒドなどを検出することができるからです。一方で、2-プロパノールなども検出されるので選択性は低いです。
ハロホルム反応 ヨードホルム反応とは?頻出疑問を簡単に解説!
アミン類をアセチル化した場合はアミンがアミドに変換されるため、アミン検出試薬であるニンヒドリンで間接的に検出することができます。
ニンヒドリンによるTLC(薄層クロマトグラフィー)の検出と原理
また、アミンとアルコールをアセチル化すると極性が低下するため、TLC分析を行うとアセチル化によりRf値が上昇することで検出可能です。
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