⚠️ 記事内に広告を含みます。

クロマトグラフィーの歴史

クロマトグラフィーの歴史

クロマトグラフィーは化学物質の混合物を分離する方法で、今日の化学では欠くことのできないものです。薄層クロマトグラフィーもカラムクロマトグラフィーもペーパークロマトグラフィーもHPLCもすべてクロマトグラフィーの一種です。

本記事ではクロマトグラフィーの歴史について紹介していきます。

クロマトグラフィーの発見者

クロマトグラフィーはロシアの植物学者Mikhali Tswettによって開発・名づけられました。

そのため、Tswettはクロマトグラフィーの父と呼ばれています。

Tswettは植物の色素成分を分離する方法として炭酸カルシウムをガラス筒に詰めたカラムに色素液を通すことによって分離しました。

カラム管の概要

カラムの概要:上から化合物を流して下まで移動させる

この実験は1906年に発表され、今日のクロマトグラフィーの基礎となっています。

M.S. Tswett, Ber. Deut. Botan. Ges., 24, 316, 384 (1906)

分離された時の様子を「クロマトグラム」分離操作を「クロマトグラフィー」と名付けています。

なぜ化学物質が分離するのか?ある物質Aは炭酸カルシウムとはほとんどくっつかないので早いスピードで下まで降りてきますが、ある物質Bは、炭酸カルシウムと強くくっつくのでなかなか下まで降りてこないので二つの物質A,Bを分けることができます。

こめやん

50m走と同じですね。速い人(化合物A)と足の遅い人(化合物B)とはゴールに達するまでの時間が違うので分離できます。

詳しいクロマトグラフィーの原理は別記事を参考にしてください。


クロマトグラフィーの進歩

クロマトグラフィーは最も偉大な化学の発明の一つですが、発表当初はほとんど利用されていなかったようです。論文中でクロマトグラフィーという用語が出てくるのは開発から約30年たった1930年代になってからのようです4)

良く使われるようになったのは、炭酸カルシウムよりもアルミナやシリカゲルを使ったほうが分離しやすいことが発見されてからです。シリカゲルを使ったクロマトグラフィーの開発により有用性が向上し、現在に至るまで利用され続けて化学実験に欠かせないものになっています。

クロマトグラフィーの発展に貢献した科学者はMartin、Syngeです。彼らは、1952年にクロマトグラフィーの研究の功績によりノーベル化学賞を受賞しています。

1941年Martin、Syngeはこれまでの固定相(固体)と移動相に液体を使った固液クロマトグラフィーから、固相上を液体(水とかの溶媒)で覆うことによって液体ー液体クロマトグラフィーを開発しました。これは原理上は分液ロートによる水と有機溶媒との間で化合物を分離する分配クロマトグラフィーと同じです。

1944年にはMartinらは液ー液クロマトグラフィーをペーパークロマトグラフィーに応用しました。紙はセルロースという分子でできており、セルロース上にまとわりついた水と移動相の有機溶媒との間で「液-液分配」が起こり、化合物を分離することができます。従ってペーパークロマトグラフィーも液液クロマトグラフィーの一種です。

ペーパークロマトグラフィーの原理と方法ペーパークロマトグラフィーのやり方 原理や考察

イオン交換クロマトグラフィーは1945年に論文で報告されました。イオンクロマトグラフィーは担体にイオン性の物質を利用して、静電的な相互作用によって分離することが可能です。担体がマイナスであればプラス電荷の化合物は強く吸着します。

逆相クロマトグラフィーは1947年のセルロースをアセチル化したセルロースアセテートを利用することでセルロース表面を親水性から疎水性に変換させた担体を使って分離させた論文が始まりですi)。さらにMartinらが応用し、シリカゲル上をシラン処理した「逆相シリカゲル」を使ったクロマトグラフィーを報告していますii)

化学修飾シリカゲルの特徴と選び方化学修飾シリカゲルの種類と選び方(アミノ、ジオール、カルボン酸)

i) Boscott, R. J.: Nature, 159, 342 (1947).

ii) Howard, G. A. and Martin, A. J. P.: Biochem. J., 46, 532 (1950).

ガスクロマトグラフィーは1952年にMartinらにより報告されています。ガスクロマトグラフィーにおいても担体を液体で覆い、移動相を気体にした気液クロマトグラフィーが利用されています。

ガスクロのまとめ記事ガスクロマトグラフィーとは?原理や操作方法、カラム選択等のまとめ

アフィニティークロマトグラフィーは酵素を分けるのに利用されるもので、酵素は特定のリガンドと親和性(アフィニティー)が高く選択的であるため、分離したい酵素と選択的に結合するリガンドを担持させた担体を詰めたカラムに酵素液を流すことで、目的の酵素を得ることができます。1953年にLermanが報告したチロシナーゼの分離が初めてであるといわれています。

薄層クロマトグラフィーの原型は1938年に登場したといわれていますが、実用的なものは1956年のStahlからであるといわれています。意外にクロマトグラフィーの中では薄層クロマトグラフィーは新しいのですね。

TLCの展開溶媒や原理など記事のまとめTLC(薄層クロマトグラフィー)の化学まとめ!原理と展開、やり方

ゲルろ過クロマトグラフィーは網目状のゲルのなかを通すことによって分子の大きさによって分離する方法です。ゲルろ過クロマトグラフィーの原型は1959年のPorath, FlodinのNatureへの投稿が初です。

HPLCは1970年にWatersのBombaughらによって論文が発表されています。HPLCは最も最近に登場したクロマトグラフィーの一種です。分離濃の高さはガスクロマトグラフィーに次ぎ、汎用性の高いクロマトグラフィーです。

歴史年表

  • 1906年:Tswettによる初のクロマトグラフィーの原型の報告
  • 1941年:Martin, Syngeによる分配クロマトグラフィーの開発
  • 1944年:ペーパークロマトグラフィーの開発
  • 1945年:イオンクロマトグラフィーの開発
  • 1947年:逆相クロマトグラフィーの開発
  • 1950年:逆相シリカゲルを用いたクロマトグラフィーの開発(Martinら)
  • 1952年:ガスクロマトグラフィーの開発(Martinら)
  • 1952年:Martin, Syngeが「クロマトグラフィーの開発の功績」でノーベル化学賞を受賞
  • 1953年:アフィニティークロマトグラフィーの開発
  • 1956年:実用的な薄層クロマトグラフィーの開発
  • 1959年:ゲル濾過クロマトグラフィーの開発
  • 1970年:HPLCの開発



参考論文

1) Weil, Herbert, and TREVOR I. WILLIAMS. “Early history of chromatography.” Nature 167.4257 (1951): 906-907.
2) Touchstone, Joseph C. “History of chromatography.” Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies 16.8 (1993): 1647-1665.
3) 岡澤敦司. “続・生物工学基礎講座 バイオよもやま話 ザ・ヒストリー・オブ・クロマトグラフィー.” 生物工学会誌 93.6 (2015): 345-348.
4) 荒木峻. “クロマトグラフィーの発展.” 有機合成化学協会誌 35.4 (1977): 304-307.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です