⚠️ 記事内に広告を含みます。

化学修飾シリカゲルの種類と選び方(アミノ、ジオール、カルボン酸)

化学修飾シリカゲルの特徴と選び方

シリカゲルは表面上にシラノール基(Si-OH)がありますが、この表面官能基をアミンやカルボン酸などに変換した「化学修飾シリカゲル」が販売されています。

化学修飾シリカゲルは、カラムクロマトグラフィーの充填剤、TLCとして入手可能で、普通のシリカゲルでは分離しにくい、酸性、塩基性物質の分離などに利用されます。ここでは化学修飾シリカゲルの種類と選び方について紹介します。

化学修飾シリカゲルとは?

化学修飾シリカゲルはシリカゲルの表面のシラノール基をカルボン酸やアミンに変換することによって、性質を変化させたシリカゲルのことです。最も汎用されている化学修飾シリカゲルはアルキル基によって置換されたいわゆる「逆相シリカゲル」です。化学修飾シリカゲルを利用することで

  1. 酸性化合物や塩基性化合物などのテーリングしやすい高極性化合物の分離が改善する
  2. 修飾官能基に対して高反応性な化合物の除去が可能

です。

化学修飾シリカゲルの構造

このように沢山の修飾シリカゲルがあります。


修飾シリカゲルの選び方

化学修飾シリカゲルは、高価なため通常のシリカゲルでは分離が難しい化合物に遭遇した時に利用します。

通常のシリカゲルは表面極性が高く、若干酸性であるため、塩基性が高い化合物、極性が高い化合物は吸着されやすいです。酸性の化合物も同様に強く吸着するため分離が難しいです。

塩基性のポリアミンやヌクレオシドや高極性な糖類などの分離は普通のシリカゲルでは困難なことが多いため、化学修飾シリカゲルを利用します。

  1. 高極性化合物 (ポリオール、糖類) → ジオール、アミン、カルボン酸シリカゲル
  2. 塩基性化合物 (アミン類、ピリジン等の複素環) → アミン、ジオールシリカゲル
  3. 酸性化合物 (カルボン酸、スルホン酸等) → カルボン酸、スルホン酸、ジオールシリカゲル

上記のような高極性化合物は、化学修飾シリカゲルを利用するとテーリングが抑制し、より低極性の溶媒でも溶出が可能になり、分離が改善します。

名称官能基特徴
逆相シリカ(ODS等)アルキル基脂溶性の高い炭化水素化合物類、脂質、ステロイド、多環芳香族炭化水素などに有効。修飾アルキル鎖が長いほど脂溶性物質が保持されやすい。
アミノシリカアミノ基アミン、核酸塩基などの塩基性、高極性化合物のテーリングが抑制される。酸性物質(CO2H,スルホン酸、リン酸、フェノール)は吸着除去できる。
カルボン酸シリカカルボキシル基酸性物質の分離が向上する。塩基性物質(アミン類)は吸着除去できる
ジオールシリカ水酸基シリカゲルの吸着力を弱くなっており、高極性化合物の分離に適する
シアノシリカニトリルジオールシリカと同様に吸着力が低下しているため、極性化合物の分離がしやすくなっている。選択性も変化する

基本的にTLCも販売されているので、TLCで分離の具合を確認してから、充填剤でカラムを行うと良いです。

おすすめはジオールシリカです。アミン類やカルボン酸類などの高極性化合物の分離に有効です。また吸着の選択性が変化するので、スポットが分離する条件が見つけられない時に試してみると良いかもしれません。

化学修飾シリカゲルの性質

アミノシリカゲルの性質

アミノシリカゲルは、アミノプロピル基などをシリカゲル表面に修飾したシリカゲルです。アミノシリカゲルを使うと塩基性の高い化合物のテーリングが抑制されます

れは表面官能基のアミノ基の存在によって塩基性化合物の吸着が低下するためです(シリカゲルはシラノール基により若干酸性)。

ジアミンシリカ (DNHシリカ)と呼ばれるアミノ基修飾量が多い?アミノシリカゲルが富士ゲルより発売されています。ジアミンシリカは強塩基性の化合物の吸着を抑えて、より低極性の溶媒でも溶出できるようになるそうです。
また、さらに強塩基性物質の分離に強力なポリエチレンイミンシリカゲル (PEIシリカゲル)もあります

アミノシリカゲルは逆相溶媒を利用可能です(水をメインとした混合溶媒系)。

向いている化合物: 糖類、ヌクレオシド類、アミン類

吸着除去可能な化合物:カルボン酸 (塩の形成)、アルデヒド (イミン)、イソチオシアネート(チオウレア)、イソシアネート (ウレア)、酸塩化物 (アミド)

注意点:アミンの存在を確かめるために、ニンヒドリンはシリカゲル自体が反応して真紫になるので使えません。

同じくアミン類の展開に有用な担体としてアルミナがあります。

アルミナTLCの特徴と使い方

ODSシリカゲル (逆相シリカゲル)の性質

ODSシリカゲルは、オクダデシル基(C18アルキル鎖)で表面を修飾したシリカゲルです。

表面が長いアルキル鎖で覆われているので、通常のシリカゲルとは違って表面が疎水性になっています。そのため、通常のシリカゲルの親水性に対する「逆」という意味で逆相シリカゲルとも呼ばれます。

逆相シリカゲルを使用すると極性の低いものほど吸着されやすく、極性の高いものほど早く溶出します。使用する有機溶媒も極性の高い水を流すと溶出しにくく、水と比較して極性の低いアセトニトリルを流すと早く溶出します。このように溶出の様子も逆になります。

ODSシリカゲルは主にHPLC (高速液体クロマトグラフィー)で利用されます。ほとんどすべての化合物に適応できます。

オクタでデシル基以外にオクチル(C8)シリカゲルもあります。ODSよりも疎水性が低いので、疎水性が高くてシリカに吸着しするものはオクチル修飾シリカゲルを利用します。

向いている化合物:疎水性ペプチド、タンパク質

こめやん

ちなみに普通のシリカゲルは「順相」と呼びます

カルボン酸シリカゲル

カルボン酸シリカゲルはシリカゲル表面がカルボン酸で化学修飾されたシリカゲルです。カルボン酸などの酸性の高い化合物のテーリングを抑制し、分離がしやすくなります。表面極性が高くても、順相溶媒が利用可能です。

向いている化合物:カルボン酸、フェノール類、リン酸類、ホウ酸類

スルホン酸シリカゲル

スルホン酸シリカゲルはシリカゲル表面上をスルホン酸で化学的に修飾したシリカゲルです。スルホン酸シリカゲルは、カルボン酸シリカゲルよりもさらに酸性度の高い化合物でも分離が可能となります(酸性度 SO3H > COOH)。

向いている化合物:強酸性化合物の分離 (スルホン酸など)

ジオールシリカゲル

ジオールシリカゲルはイオン性の無いアルコール性水酸基でシリカゲル表面を化学修飾したシリカゲルです。シラノール基と比べてアルコールは分極が小さいため、通常のシリカゲルと比べて吸着力が穏やかです。

塩基性化合物に対しても強く結合しにくいです。さらに、フェノールに対して選択的に強く結合することから、フェノール性物質の分離にも利用できます。

向いている化合物:アミノシリカゲルなどでは分解・吸着してしまう塩基性化合物、カルボニル化合物、酸性化合物の分離、通常のシリカゲルでは強く吸着しすぎる化合物の分離

吸着除去可能な化合物:フェノール類

チオールシリカゲル

チオールシリカゲルは、表面がチオール基で保護されたシリカゲルで、主に重金属除去に利用されます。チオールは金属触媒と強く結合する性質があるため、パラジウム、ルテニウム、銅、鉛、カドミウム、亜鉛、ニッケル、銀、水銀、白金を除去可能です。

吸着除去可能な化合物:金属類 (Pd,Ru,Cu,Pb,Cd,Zn,Ni,Ag,Hg,Pt…)


その他の担体・充填剤

セライト

金属触媒、タール状物質、微粒子の除去に。担体への吸着は少ないと言われていますが、セライト微細粒子間の隙間に液が保持されるため、きちんと洗浄しないとロスが多くなります。

全てのTLCの記事は以下のリンクから!

TLCの展開溶媒や原理など記事のまとめ TLC(薄層クロマトグラフィー)の化学まとめ!原理と展開、やり方

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です