水素化ナトリウム (NaH)は有機合成で最もよく利用される強塩基の一つです。
非常に反応性が高く、空気中の湿気とも容易に反応してしまうため、通常はオイル中やオイルに分散させた状態で保存されています。
水素化ナトリウムは少量の水分とでも爆発的に反応するため取り扱いには注意しましょう。
水素化ナトリウム (NaH) とは?
水素化ナトリウムはアルカリ金属の水素化物です。
非常に強い塩基であることから、様々な極性基(NH, OH, SH, CH)からプロトンを奪って活性種を発生させます。
NaH(共役酸)のpKaは35を見ればわかりますが、とても塩基性が高いです。
水素化ナトリウムのプロパティをまとめると
- MW: 24.00
- 化学式: NaH
- 融点 : 800℃
- 密度 : 1.396
- 溶解度 : 水・アルコールには分解、多くの有機溶媒に不溶
- 保存:湿気に敏感、発火の危険もある。不活性雰囲気下オイル中に保存(ディスパージョン)
水素化ナトリウムは有機溶媒に溶けにくく、反応は水素化ナトリウムの固体表面上で起こっていると考えられています。
水素化ナトリウムのヒドリドは水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤のように還元性を示すことはありません(以下参考記事)。
参考 水素化ナトリウムの水素が求核攻撃しない理由: 日々の雑記帳日々の雑記帳
水素化ホウ素ナトリウム (NaBH4) ケトン、アルデヒドの還元
水素化ナトリウムが失活しているか?
保管方法が悪い水素化ナトリウムは失活している可能性があります。
疑惑がある場合は、耳かきいっぱいくらいの量を水を張ったオケに投げ入れてみましょう。失活していなければ泡がジュッと出てくるはずです。
オイルディスパージョンタイプのNaHは活性が残っていれば見た目が灰色です。白色のものは失活している可能性が高いです。
使用後は不活性ガス置換して、蓋にパラフィルムやテフロンシールテープなどを巻いて乾燥室に保存しましょう。
こめやん
水素化ナトリウムのオイル除去のための洗浄方法
水素化ナトリウム単体は非常に反応性が高いため、反応性を抑えるために市販されている水素化ナトリウムは重量の40%分は鉱石油で覆われています。
そのまま利用しても構いませんが、反応性があがる?とかオイルが混じらずに精製が楽になるなどの理由でオイルを取り除くことが多いです。
NaHはヘキサンに溶けないことを利用して、乾燥ヘキサンを加えて上清を捨てるという操作でオイルを除去します。
水素化ナトリウムの洗浄法
NaHを洗浄するか否か?は時々研究室で論争になったりしますが(笑)、大量のNaHを使う時はオイルが精製の邪魔になるので取り除くと良いです。逆に小スケール(数mg)であれば洗浄しないで加えたほうが良いです。
こめやん
水素化ナトリウムのクエンチ・後処理方法
水素化ナトリウムはとても反応性が高いので、大量に未反応のNaHがあるときは水を加えてはいけません。
クエンチは氷浴で冷却しながらメタノール、エタノール(イソプロパノール)を滴下して加えます。
NaHが消費されたのを確認したら、中和して廃棄します。
水素化ナトリウムを使用する有機化学反応
水素化ナトリウムは有機合成でよく利用されます。その一例を紹介します。
- Williamsonエーテル合成
ウィリアムソンエーテル合成: Williamson Ether Synthesis
- wittig反応
- ディークマン縮合
- クライゼン縮合
- ダルツェン縮合
- シュットベ縮合
- ケイ素ーケイ素結合の還元
- アジドの還元
水素化ナトリウムから水素を取り出し水素を使用した後水素化ナトリウムに戻して再利用
出来るのではないか 水素化ナトリウムの取り扱いがもっと簡単で安全が確保できれば
良いのだが(電気分解で元の水素化ナトリウムに戻して再利用する、砂漠に太陽光発電
で水素化ナトリウムに戻してやって はと思う。