TLC(薄層クロマトグラフィー)の検出法の一つにリンモリブデン酸を用いた検出があります。今回はこのリンモリブデン酸を用いた検出の原理を解説します。
リンモリブデン酸で検出できるもの
TLCを展開後254nmの紫外線を当てて検出することが多いと思います。しかし、UVで検出できる化合物は芳香環などの共役化合物だけなので、高級脂肪酸やステロイドなどは検出できません。そのような化合物の場合は発色試薬を使ってスポットを染色して検出することができます。その代表例がリンモリブデン酸です。
リンモリブデン酸は万能な検出試薬で有機化合物全般を検出できます。また、水酸基を持った化合物が特に検出しやすいです。
万能試薬としてはヨウ素、CAM、YellowCAM、改良リンモリブデン、アニスアルデヒドなどがありますが、リンモリブデン酸は平均点が高めの試薬です。調製も簡単で焼きすぎてもOKで、安定性も高く、検出感度もちょうどよいです。最初に作るべき・試すべき発色試薬の代表例です。
リンモリブデン酸の検出原理
リンモリブデン酸アニオンの構造はMoO6の八面体とPO4の四面体からなる縮合酸となっていて、この構造はKeggin型とも呼ばれます。
このリンモリブデン酸は強酸化剤であるため、簡単に還元されてしまいます。そしてリンモリブデン酸が還元されるとモリブデン・ブルーと呼ばれる青色-緑色の化合物になります。リンモリブデン酸の還元される部位は全部で12個あるのですが、TLCにスポットされた化合物の還元力によって還元される数が変化することでスポットの色が異なります。
実験手順
レシピとしては以下のように、リンモリブデン酸、エタノールを入れて混ぜるだけです。混ぜた後にTLCを浸漬あるいは噴霧した後、少し乾かし、200℃程度の熱で焼きます。一般的な焼き方としてホットプレートとヒートガンがあります。
- リンモリブデン酸 5g
- エタノール 100ml
背景の色が少しついてしまうのが難点ですが、ガラス製のTLCプレートの場合後ろから見るとキレイに見えます。
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