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アニスアルデヒド・バニリンによるTLC(薄層クロマトグラフィー)の検出と原理

TLC(薄層クロマトグラフィー)の検出法の一つにアニスアルデヒドとバニリンを用いる検出があります。今回はこのアニスアルデヒドとバニリンを用いる検出の原理を解説します。

アニスアルデヒド・バニリンで検出できるもの

アニスアルデヒドおよびバニリンの検出は万能型と言われていて、様々な官能基をもった化合物と反応して化合物に固有な呈色がみられます

アニスアルデヒドのほうが様々な色のスポットを観察することができて、色によって化合物を判別することも可能です。こうした特徴から、同じく万能発色試薬であるリンモリブデン酸よりも好んで使用する人も多いです。

便利な発色試薬ですが、欠点も多いです。分子構造からもわかりますが、アルデヒド基を持つことから不安定で発色試薬を長期保存できないのでだめになったら作りかえる必要があります。代替数か月くらいはもちますが、溶液が赤く変色してくるとダメになっていて、焼いても真っ赤な背景になるだけで発色しにくくなります。

硫酸を含むためTLC板は素手で触るのは注意です。また、匂いの問題もあります。アニス・バニリン共に不快なにおいではありませんが、部屋中に充満してニオイハラスメントになる可能性があります。あまり焼きすぎると背景が真っ赤になって見えなくなるのも欠点です。

欠点をたくさん書きましたが、それ以上の利点があるのがアニスアルデヒドです。リンモリブデン酸では焼けない化合物も見ることができたりするので常備しておきたい発色試薬の一つですね。

アニスアルデヒドで発色

アニスアルデヒドで検出できる原理

アニスアルデヒドおよびバニリンで検出できる原理については、特定の化合物や色素が合成されているかどうかはわかりません。

しかしながら、アニスアルデヒドなどのアルデヒドは元々求電子性が高いうえ、硫酸のような強酸にさらされることで、酸素原子がプロトン化されて求電子性がさらに高くなります。そのため、少しでも求核性のある化合物であれば、求電子性が高くなったアルデヒドに対して求核攻撃して反応が進行して、呈色すると考えられます。


反応のタイプとしてはいくつか想定できると思いますが、考えられる例について記載してみます。

  1.  アルドール反応
  2.  アセタール化
  3.  フリーデルクラフツ型反応

それぞれについて解説していきます。

アルドール反応

アルドール反応は有名な反応なのでご存知の方も多いと思いますが、基質がケトンなどα水素を持つカルボニルを有する化合物の場合はアルドール反応が進行します。アルドール反応で生成する化合物は共役する化合物(α,β不飽和カルボニル)なので、色を持つ場合が多いです。

アルドール反応 (aldol reaction)

アセタール化

アルコールを有する基質の場合は、2分子のアルコールがアルデヒドと反応することでアセタールが生成することが考えられます。生成したアセタール中間体は共役系を持っているので、色を呈する場合が多いです。

フリーデルクラフツ型反応

トリアリールメタンが生成している?

アニスアルデヒドやバニリンで呈色する原理について、ResarchGateでも質問されていました。その回答を見るとこのような意見がありました1)

なにやらトリアリールメタン構造を有する化合物ができて、それが発色に関与していると考えられているようです。実際に調べてみると強酸性条件中でベンズアルデヒドと芳香族化合物を反応させると、ジフェニルメタノール化合物を経由してトリフェニルメタン化合物が生成することが報告されています。2)

この反応機構としては強酸によるジプロトン化を経由して反応が進行することが報告されています。3)


トリフェニルメタン類はフェノールフタレインなどの色素の骨格構造として知られているため、少なくとも芳香族を有する化合物はこちらの経路で発色している可能性があります。

実験方法

レシピとしては以下のようにp-アニスアルデヒド、酢酸、エタノールを氷浴中で混合し、濃硫酸を滴下します。

[box04 title=”アニスアルデヒドのレシピ”]
  1.  p-アニスアルデヒド  13mL
  2.  酢酸 5mL
  3.  濃硫酸 18mL
  4.  エタノール 478mL[/box04]

アルデヒドは酸化されやすいため、保存方法としては0℃での冷蔵保存が望まれます。個人的にはアニスアルデヒドの臭いが冷蔵庫に充満してしまって嫌なので、室温で保存しています。冷蔵保存した場合よりも溶液が少し汚くなりますが、室温保存でも、1、2ヶ月は問題なく使用できます。TLCの背景の色が染まりすぎて見えなくなった場合は新しく調整してください。

実験動画

YouTubeで実際にアニスアルデヒドを使って検出している動画があったので載せておきます。4)

動画では溶液にディップ(浸潤)した後にヒートガンであぶっています。個人的にはホットプレートが楽なので使っています。ヒートガンもたまに使いますが、動画のように充填剤に充てるのではなく、私の場合はガラス面からあぶっています(なんとなく直接充填剤に熱を当てると薄層がはがれてしまいそうな気がするので、、、)。

全てのTLCの記事は以下のリンクから!

TLCの展開溶媒や原理など記事のまとめ TLC(薄層クロマトグラフィー)の化学まとめ!原理と展開、やり方

参考文献

1) ResearchGate, Question Asked 2nd Feb, 2014, [ONLINE] Available at: https://www.researchgate.net/post/How_does_anisaldehyde_sulphuric_acid_reagent_yield_different_colours_in_TLC_during_derivatisation [Accessed, 26 April 2019]

2) Roberts, M.R.; El-Khawaga, M.A.; Sweeney, M.K.; El-Zohry, F.M.; The question of Friedel-Crafts transformylations. Acid-catalyzed reactions of aromatic aldehydes with arenes. J. Org. Chem., 1987, 52, 1591–1599, DOI: 10.1021/jo00384a038

3) Saito, S.; Ohwada, T.; Shudo, K.; Friedel-Crafts-type reaction of benzaldehyde with benzene. Diprotonated benzaldehyde as the reactive intermediate. J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 11081–11084, DOI: 10.1021/ja00150a007

4) Youtube, p-anisaldehyde staining a TLC plate, https://www.youtube.com/watch?v=bweDL6BgvAo [Accessed, 26 April 2019]

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