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TLCトラブル集ースポットがテーリングや分離しない原因や対処法!

TLCのトラブルの原因と対処法!テーリングやスポットが焼けないのはなぜ?

TLCではスポットがテーリングしたり、形が変、見えない、別れないなど多くのトラブルが起きやすいです。こういったTLCのトラブルの多くはちょっとした工夫で簡単に解決することが多いです。TLCが使いこなせるようになれば有機化学実験が格段に上手になります。よくあるトラブルの原因や対処法について紹介しますので是非頭に入れておきましょう。

TLCでよく起こるトラブルの原因と対処法は知っておくと役立つ!

有機合成ではTLCを何度も確認します。なので、そのうち「いつもと何か違うな?」と感じる場面に遭遇する時がきっとでてくると思います。

よくあるトラブルとしては、「スポットの形がおかしい」とか、「上がり方が変」、「スポットが見えない」、「発色試薬で焼けない」など様々なトラブルがあります。そこで、本記事では遭遇しやすいTLCにまつわるトラブルを紹介していきます。実際にトラブルが起きていなくてもとっさに対処できるようにTLCトラブルの原因と対処法を頭に入れておくと役に立つと思います。


TLCで良く起こる失敗やトラブルの原因や解決法を紹介

スポットのテーリングなど形が変になる原因と対処法!

通常TLCのスポットの形は円形になっているはずですが、それが複数見えたり、形が歪になる、扁平、縦長、テーリングするなどスポットの形がおかしくなることがあります。これらの原因と対処法について紹介します。

①複数のスポットが見える

もしも展開する前であれば、試料を打つとき(スポット)に同じ箇所にきちんと打てていないことが原因です。知らぬ間に試料が入った液体が飛び散ってTLC板に付着した可能性もあります。展開したあとで、スポットを打った位置の真上のラインにスポットがあるのなら、その試料中に複数の化合物が存在していることを意味し、何の問題も起きていないので安心してください。原因を解明するためにもう一枚TLCをとって同じことが起きるか(再現性があるか)確かめましょう。この時展開する前にスポットの位置をUVで確認しましょう。

②スポットが縦長になる・スポットが伸びる

以下の原因が考えられます。

  1. スポットの濃度が濃すぎる
  2. 展開溶媒の極性が高すぎる
  3. 化合物の極性が高い(カルボン酸やアミン類)

スポットが円形ではなく縦長になるのは、展開溶媒の極性が高すぎることが原因の一つです。展開溶媒の極性を落としたりすると改善する場合がありますが、特に問題は無いと思われます。展開距離の1/3を占めるくらいの長い縦長で、UVなどで観察したときにスポットの上端と下端まで濃度が同じくらいの場合は、スポットした濃度が濃すぎる可能性があります。UVを見たときに1回スポットを打っても真っ黒にならずにシリカの下地が見えるくらいの濃度?です。UVを見た時1回で真っ黒になったり、キャピラリーが詰まったりするような状態では濃すぎです。溶媒で薄めてから再度TLCとってみましょう。

スポットの下方向に尾を引くような形をしていて、UVで見た時のスポットの濃さが上端よりも下端のほうが薄い場合は「テーリング」といって別の原因と対処が求められます。

③スポットが横長になる

展開スピードが遅いと横長の円になります。展開溶媒の極性を上げてRf値を上げましょう。このトラブルは問題になるほどひどい状態は見たことがないです。濃縮ゾーン付きのTLCを使っている場合は、スポットが円状でも展開すると横線状(帯状)になるので間違って使っているかもしれません。

④スポットの形がアメーバみたいに均一じゃない

試料を適切に打ったにもかかわらず形がおかしくなるのは、薄層板が均一になっていない時に起こります。最近は市販品を購入している場合が多いのであまり起きない問題かもしれません。自作でTLCプレートを作った場合にはよく起こります。複数回、スポットを打っている場合は同じ位置に打てていないかもしれないのでシルシを付けて同じ位置に同じ大きさでスポットするように注意すれば改善します。

⑤二次関数の上に凸みたいな形になっている

スポットが円形ではなく二次関数の上に凸みたいな形になっている場合の多くは溶媒が飛びきっていない時に起こります。DMFやDMSO、ピリジンなどの高極性・高沸点溶媒を使用している時にそのまま試料を打ったりしていませんか?固体試料を溶かしている場合は低極性・低沸点溶媒に溶かして試料を打ちます。反応溶液を打っているときは、ミクロサイズの試験管などを使用して分液をしましょう。分液後の有機層を打つと高極性溶媒を除くことができるので解決する可能性があります。スポット後はドライヤーでよく乾かすのも重要です。

ミクロサイズの分液方法

やり方は、まず小さいミクロ試験管に反応液を1,2滴加えて、酢酸エチル等の溶媒、水(塩基or酸or塩水)を少量加えてパスツールピペットで溶液をまとめて出し入れしたり、蓋を締めて振ったり、ボルテックスミキサーでとにかく撹拌した後静置します。二層になった有機層をとってTLCに打って展開します。

⑥水平線のようになる(溶媒の展開ラインにいる)

展開ラインのすれすれにいる場合は展開溶媒の極性が高すぎるのが原因なので、極性を下げます。混合溶媒の低極性側の溶媒を目一杯に増やしてもダメならm溶媒の組み合わせが悪いです。ジクロロメタン/メタノール系を使っているならヘキサン/酢酸エチル系などヘキサンが入った混合溶媒を試してみましょう。アセトン or アセトニトリル or 酢酸エチル or ヘキサンなど使用している溶媒によって使うべき溶媒は変化します。展開溶媒の組み合わせは無限にあるので極性を見ながらいろんな組み合わせを試しましょう。

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⑦テーリングする

下に尾を引くような場合でスポットが全体に渡って濃い場合は、試料濃度が濃すぎます。もっと薄めてスポットしましょう。試料1mgに対して0.5 mLくらいの濃度で十分です。上の方が濃くて下に行くに連れて薄くなっている場合はいわゆるテーリングで、

  1. 化合物の極性が高い(カルボン酸やアミンなど)
  2. 分解性・高反応性の化合物(酸ハロゲン化物、イソシアネート、アルデヒドなど)

化合物の極性が高い場合は、展開溶媒をアルコール系、ハロゲン系の展開溶媒に変更するとテーリングが抑えられるかもしれません。展開溶媒を検討してみましょう。

また、官能基が予測できて、それが酸性あるいは塩基性の場合は酢酸やトリエチルアミンなど酸塩基を添加する方法が有効です。

カルボン酸の場合は酢酸やギ酸、TFAなどの酸性物質を添加する(一滴とか0.01-0.1%くらい)と改善する可能性があります。

塩基性の場合はアンモニア水、トリエチルアミン、ピリジンなどを加えると改善する場合があります。また、担体を変えると改善する可能性があります。例えば、修飾シリカゲル(カルボン酸やアミン)などやアルミナなども良いです。アルミナはアミン類などではテーリングしにくいらしいです(ものによって)。アルミナの場合は中性ー塩基性などがあるので注意する。シリカゲルも同様に酸性のものがあるので注意する。

Rf値がおかしい・論文と合わない

Rf値は条件によって大きくずれることもあるので、文献値は参考程度にしておきましょう。展開溶媒が複数載っている場合は全て試して文献値に近いか確認します。展開溶媒は使い回すとRf値がずれていくので、定量性を求めるときは展開の都度作ります。展開槽は展開溶媒の蒸気でしっかりと満たしておく。槽内にろ紙を立てておくと溶媒蒸気が拡散しやすく、再現性があがります。

スポットが正円ではない場合は、最も濃い部分の中心が基準となります。また、Rf値は0.2-0.7以内に収まるようにすべきで、範囲外の値はあまりあてにならないとされています。

スポットが一つなのにNMRは複数いる

TLCはかなり分離能が高いがスポットがかぶることもある。ジアステレオマーなど極性が近いものは重なることも多いです。重なったスポットを見過ごさないためにも展開溶媒は2種類以上は試すべきです。

また、脂肪族の化合物などは特にUV観察だけで確認しているとUV吸収のない化合物を見過ごしてしまいます。ヨウ素やリンモリブデン酸、アニスアルデヒドなどの発色試薬を使用ししてきちんと確認しましょう。UVだけに頼るのは危険です。また、蛍光性の化合物の場合、TLCの蛍光の背景に色が被って見にくいこともあります。このような場合は波長を変えるか(365nmなどを)発色試薬を使用しましょう。

化合物の中には発色試薬で検出しにくいものがあります。PdCl2などが良かったり、水をかけてスポット浮かび上がらせたり、硫酸で300℃くらいまで熱して炭化させて見る方法などがあります。

10%硫酸やリンモリブデン酸溶液の噴霧がキレイにできない

硫酸やモリブデン酸エタノール溶液などは粘性がちょっとあるので噴霧がきれいにできないことも多いです。噴霧するよりもディップしたほうがキレイに発色試薬をつけられます。私はディップのやり方をおすすめします。ディップするときは、TLC全体が浸かる深さの容器を用意して(縦長が良い)ピンセットでTLCプレートの端をもって、一気につけるのがコツです。ガラス面を拭き取って、ホットプレートで加熱するなどしましょう。噴霧だと空気中に撒き散らして鼻が痛くなったり、周辺が汚れたりして良いことがありません。ただし、化合物によっては薄い場合溶け出して見えなくなる可能性があるかもしれません。

溶媒フロントって何?

溶媒フロントはTLCを展開したときに、溶媒がしたから上に上がっていったときのラインのことです。溶媒の展開したときの最端のラインです。

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