有機化学

TLCトラブル集!別れない、スポットの形が変、見えないのは失敗?

TLCトラブルシューティング

TLCで別れない、スポットの形がおかしい?などのトラブル!

有機合成においてはTLCは最もよく利用する分析手法の一つでしょう。ですから、そのうち「いつもの何か違う?」と感じる時が出てくると思います。スポットの形がおかしいとか、上がり方が変、スポットが見えない、焼けないなどいろいろなトラブルに遭遇すると思います。そこで、日頃から遭遇しやすいTLCのトラブルなどを取り上げて紹介していきたいと思います。TLCに限らずいつもと違うな?と思ったことがあったら確認しておくと良いです

TLCで良く起こる失敗やトラブル-原因や解決法-

スポットの形がおかしい

通常キャピラリーで打ったスポットの形は円形になっています。試料を打つときに同じ箇所にきちんと打てていないと複数のスポットがあるように見えたり形がおかしく見えるようなことが起こります。

スポットが縦長になる

スポットが円形ではなく縦長になるのは、展開速度が早い場合があります。展開溶媒の極性を落としたりすると改善する場合がありますが、特に問題は無いと思われます。スポットの下方向に尾を引くような場合はテーリングといって対処が必要です。

スポットが横長になる

展開スピードが遅いと横長の円になります。展開溶媒の極性を上げてRf値を上げましょう。これもそんなに問題ではないでしょう。

スポットの形がアメーバみたいに均一じゃない

試料を適切に打ったにもかかわらず形がおかしくなるのは、薄層板が均一になっていない時に起こります。自作でTLCプレートを作った場合など。購入した場合はめったに起きないです。

二次関数の上に凸みたいな形になっている

スポットが円形ではなく二次関数の上に凸みたいな形になっている場合の多くは溶媒が飛びきっていない時に起こります。DMFやDMSO、ピリジンなどの高極性・高沸点溶媒を使用している時にそのまま試料を打ったりしていませんか?固体試料を溶かしている場合は低極性・低沸点溶媒に溶かして試料を打ちます。反応溶液を打っているときは、ミクロサイズで分液をした有機層を打つと高極性溶媒を除くことができるので解決できるかもしれません。

やり方は、まず小さいミクロ試験管に反応液を1,2滴加えて、酢酸エチル等の溶媒、水(塩基or酸or塩水)を少量加えてパスツールピペットで溶液をまとめて出し入れしたり、蓋を締めて振ったり、ボルテックスミキサーでとにかく撹拌した後静置します。二層になった有機層をとってTLCに打って展開します。

水平線のようになる

展開ラインのすれすれにいる場合は展開溶媒の極性が高すぎるため、極性を下げます。そうでない場合は溶媒の組み合わせが良くないため、別の溶媒の組み合わせを検討します。ヘキサン/酢酸エチル系であれば、ジクロロメタン/メタノール or アセトン or アセトニトリル or 酢酸エチル or ヘキサン等を検討しましょう。展開溶媒の組み合わせは無限にあるので極性を見ながらいろんな組み合わせを試しましょう。

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テーリングする

下に尾を引くような場合はいくつかの原因が考えられます。スポットが全体に渡って濃い場合は、試料濃度が濃すぎます。もっと薄めてスポットしましょう。試料1mgに対して0.5 mLくらいの濃度で十分です。上の方が濃くて下に行くに連れて薄くなっている場合は、

  1. 化合物の極性が高い(カルボン酸やアミンなど)
  2. 分解性・高反応性の化合物(酸ハロゲン化物、イソシアネート、アルデヒドなど)

化合物の極性が高い場合は、展開溶媒をアルコール系、ハロゲン系の展開溶媒に変更するとテーリングが抑えられるかもしれません。展開溶媒を検討してみましょう。また、官能基が予測できて、それが酸性あるいは塩基性の場合は、カルボン酸の場合は酢酸やギ酸、TFAなどの酸性物質を添加する(一滴とか0.01-0.1%くらい)と改善する可能性があります。塩基性の場合はアンモニア水、トリエチルアミン、ピリジンなどを加えると改善する場合があります。また、担体を変えると改善する可能性があります。例えば、修飾シリカゲル(カルボン酸やアミン)などやアルミナなども良いです。アルミナはアミン類などではテーリングしにくいらしいです(ものによって)。アルミナの場合は中性ー塩基性などがあるので注意する。シリカゲルも同様に酸性のものがあるので注意する。

Rf値がおかしい・論文と合わない

Rf値は条件によって大きくずれることもあるので、参考程度にする。展開溶媒が複数載っている場合は全て試して文献値に近いか確認する。展開溶媒は基本的には使い回さずにその都度作る。(分析の時は、カラムのときなどは1枚毎ではなく1スパン?ごとでも) 。展開槽は展開溶媒の蒸気でしっかりと満たしておく。槽内にろ紙を立てておくと拡散しやすいです。

スポットが正円ではない場合は、最も濃い部分の中心が基準となる。また、Rf値は0.2-0.7以内に収まるようにすべきで、範囲外の値はあまりあてにならない。

スポットが一つなのにNMRは複数いる

TLCはかなり分離能が高いがスポットがかぶることもある。ジアステレオマーなど極性が近いものは重なることも多いです。重なったスポットを見過ごさないためにも展開溶媒は2種類以上は試すべきです。

また、脂肪族の化合物などは特にUV観察だけで確認しているとUV吸収のない化合物を見過ごしてしまいます。ヨウ素やリンモリブデン酸、アニスアルデヒドなどの発色試薬を使用ししてきちんと確認しましょう。UVだけに頼るのは危険です。また、蛍光性の化合物の場合、TLCの蛍光の背景に色が被って見にくいこともあります。このような場合は波長を変えるか(365nmなどを)発色試薬を使用しましょう。

化合物の中には発色試薬で検出しにくいものがあります。PdCl2などが良かったり、水をかけてスポット浮かび上がらせたり、硫酸で300℃くらいまで熱して炭化させて見る方法などがあります。

10%硫酸やリンモリブデン酸溶液の噴霧がキレイにできない

硫酸やモリブデン酸エタノール溶液などは粘性がちょっとあるので噴霧がきれいにできないことも多いです。噴霧するよりもディップしたほうがキレイに発色試薬をつけられます。ディップするときは、TLC全体が浸かる深さの容器を用意して(縦長が良い)ピンセットでTLCプレートの端をもって、一気につけるのがコツです。ガラス面を拭き取って、ホットプレートで加熱するなどしましょう。噴霧だと空気中に撒き散らして鼻が痛くなったり、周辺が汚れたりして良いことがありません。ただし、化合物によっては薄い場合溶け出して見えなくなる可能性があるかもしれません。

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溶媒フロントはTLCを展開したときに、溶媒がしたから上に上がっていったときのラインのことです。

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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております