ニトロ基はアミン合成の足がかり
ニトロ基(NO2)は芳香環に硝酸などを用いて行うニトロ化反応によって簡単に合成できるので、芳香環への窒素導入方法として有用です。
ニトロ基は容易に還元してアミンになります。アニリン類は芳香環に直接アミンを導入するのは難しいのでニトロを経由することが多いです。
ニトロ基の還元方法
ニトロ基の還元方法にはいくつか選択肢があります。よく使われる方法としては
- 金属還元(スズ、亜鉛、鉄)
- 接触還元(Pd/C等)
- ヒドラジン
Bechamp 還元(鉄を使った還元方法)
Bechamp還元(べシャン還元)は鉄と酸性溶液(NH4ClやHCl)を用いてニトロ基を還元する方法で金属を用いる還元の中でもスズや亜鉛よりも安価で温和に進行するため良く利用される還元反応です。
特に酸性に弱い基質であれば、NH4Clといった弱酸でも鉄還元は進行するので良いです。接触還元も簡単ですがアリールハライドや不飽和結合が還元される可能性があります。その一方でべシャン還元ではこれらの官能基は変換されず、選択性は高いです。
鉄は粉末を使い、表面が酸化している場合は濃塩酸などで表面を溶かしてから利用したほうが反応性が良いです。反応後はろ過、分液でアミン体が得られるので簡単です。
鉄で還元 ベシャン還元は穏やかなニトロ基の還元に最適!反応条件
亜鉛を使った還元
亜鉛による還元は鉄と同様に塩酸の他、酢酸や塩化アンモニウム中でも進行しますが、塩化アンモニウムなど中性に近い条件だとヒドロキシルアミンで還元がストップする場合があります。加熱するか、確実にアミンに還元するにはより強い酸(酢酸や塩酸)を使用する必要があります。
スズを使った還元
スズを使った還元でもニトロ基を還元できます。鉄や亜鉛を用いる方法と比べて塩酸を用いる必要がある点で酸性に弱い官能基を用いる必要がある場合には適用しにくいです。塩化スズを用いた方法では、塩酸を加えなくてもアルコール中で反応が進行します。