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鉄で還元 ベシャン還元は穏やかなニトロ基の還元に最適!反応条件

鉄で還元(べシャンプ還元)ニトロ基をアミンに

鉄による還元は経済的かつ温和なであることからよく利用されます!

鉄の毒性は低く、環境負荷も小さいので大スケールでも使いやすいです。

特に酸として塩化アンモニウムを使った条件はベシャン還元と呼ばれます。ほぼ中性で進行するので温和な還元方法として重宝されています。

本記事では鉄を使った還元について、反応条件などを紹介します

鉄でニトロ基の還元(べシャンプ還元)

ニトロ基を金属で還元する方法はたくさん知られていますが、中でも鉄を使った方法は最も良い結果が得られる方法の一つです。

スズ亜鉛なども鉄と同様の還元ができますが、基本的に塩酸や酢酸を加える必要があります。

鉄を使った還元では鉄粉末や硫酸鉄(II)などが使われますが、ニトロ基の還元では鉄粉末を用いるのが良いです。

鉄と酸条件でニトロ基を還元する方法はべシャン還元とも呼ばれており、非常に信頼性の高いニトロ基の還元方法の一つです。

鉄と酢酸、塩化アンモニウムの組み合わせは温和で選択的なニトロ基の還元が可能であることからよく利用されています。

塩化アンモニウムを用いる還元は亜鉛でも進行しますが、一段階目のヒドロキシルアミンで停止することも多く、塩化アンモニウムを使った条件でアミンを得たい場合は鉄を用いたほうがよいです。

鉄を用いた還元では、芳香族ニトロ、脂肪族ニトロともに還元できます


べシャンプ還元の反応条件

鉄と塩酸を用いた還元条件

鉄と塩酸を用いた条件は良く利用される方法で酢酸よりも経済的で、酸に強い基質であれば利用できます。

水が入らず弱酸の酢酸を用いた方法が副反応が少ないので、塩酸を条件として選ぶ理由としては、反応を進行させたい、塩酸塩の析出を狙う、大量に仕込むという理由があるかもしれません。

鉄+塩酸の反応例1

鉄と塩酸で還元
鉄粉(129mg,2.30mmol)、2N HCl(0.07mL)を0度でエタノール(3mL)と原料(113mg,0.33mmol)の撹拌溶液に加えた。得られた混合物を2時間加熱還流し、反応後ろ過した。固体をエタノールで数回洗浄し、得られたろ液を濃縮し、残渣を酢酸エチル(15mL)に溶解し、1.5Nの炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。後処理を行いアミン体(205mg,約100%)を得た。(Ref. WO2009154769)

鉄と酢酸を用いた還元条件

鉄と酢酸は副反応が少なく良好な結果を与える組み合わせでおすすめです。

より酸に弱い場合は後述する塩化アンモニウムで反応させると良いです。ハロゲンは還元されません。

鉄+酢酸の反応例1

鉄と酢酸で還元

酢酸(200mL)中にニトロ体(12g,43.6mmol)を溶解し、鉄粉(24g,0.436mol)を加えて50℃で1時間撹拌する。反応後水及びEtOAcを加え、濾過して固体を除去し、ろ液をEtOAc(2×)で抽出して後処理を行い、アミン体(10.2g,94%)を得た。(ref: patent WO2013134252)

アセチルやトリフルオロアセトアミド、メチルエステル、プロパルギルエーテル、ニトリル、ベンゾイルは影響を受けません。

鉄と塩化アンモニウムを用いた還元条件

塩化アンモニウムを使った条件は非常に温和で酸性に弱い官能基でも利用できるのでおすすめです!他の金属還元(スズ、亜鉛等)の中でも反応性や選択性において優れています。

鉄と塩化アンモニウムでニトロを還元

25mLのエタノールに原料(5.97g,15.6mmol)、水(50mL)、塩化アンモニウム(3.367g,62.94mmol),鉄粉末(4.367g,78.2 mol)を加えて、75度で1.5時間撹拌した。反応後室温に冷却し、DCMで希釈、セライトろ過し、ジクロロメタンで洗った。ろ液をあわせて150mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を処理して、アミンを得た(5.50g)。(ref: Hanan, Emily J. et al Journal of Medicinal Chemistry, 55(22), 10090-10107, 2012)

NH4Clを使った条件ではBoc基やTBS基などが存在しても反応させることができます。

鉄粉の活性化

鉄粉は亜鉛と同様に酸によって表面皮膜を剥がすことによって活性化できます。

鉄粉の活性化方法

鉄粉に固まらないようにかき混ぜながら濃塩酸を滴下していき(5gに対して1mL)、数分間撹拌した後、ろ過、水で洗浄後、アルコールで置換して得ます。

ニトロ化反応の反応機構と反応条件のまとめ ニトロ化反応の条件とやり方

スズ(Sn)による還元

2 COMMENTS

mint

現在、脂肪族ニトロアルカン(ニトロアルケン)の還元について調べている者です。
資料によって鉄粉+塩酸の条件ではアミンが生じるというものとケトンが生じるというものがあったため、調べているうちに下記論文に行きつきました。
https://sciencemadness.org/scipics/Fe_HCl_Amine.pdf
どうも、第一級脂肪族ニトロ化合物だとベシャンプ還元になり、第二級脂肪族ニトロ化合物だとネフ反応になってしまうようです。

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こめやん こめやん

情報提供ありがとうございます。論文を読みましたが、確かに第一級の脂肪族ニトロ化合物(ニトロアルケン)ではアミンが生成しますが、第二級の場合はカルボニル化合物が生成するようですね。
第二級の脂肪族ニトロ化合物を還元するときは鉄ではなく、亜鉛+酸(塩酸や硫酸)を使ったほうが良いようですね。
Cristòfol, Àlex, Eduardo C. Escudero-Adán, and Arjan W. Kleij. “Palladium-Catalyzed (Z)-Selective Allylation of Nitroalkanes: Access to Highly Functionalized Homoallylic Scaffolds.” The Journal of organic chemistry 83.17 (2018): 9978-9990.

Patent: Isonicotinamide derivatives as aspartyl protease inhibitors and their preparation and use for the treatment of Alzheimer’s disease, zinc-dust+HCl

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