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クリプトムネシア

クリプトムネシア

クリプトムネシアは過去の記憶の改ざん

自分が思いついたアイデアを実行している思っていたら、実は他の人がアドバイスしたものだと言われた経験はありませんか?どちらが本当のことを語っているかは定かではありませんが、もしかしたら、それはクリプトムネシア(Cryptomnesia)によるもの、無意識に記憶の改ざんをしてしまった結果かもしれません。

1965年にTaylorが発表した心理学の論文にクリプトムネシアは登場します。クリプトムネシアという現象は、実は、他人が語っていたものを見聞きしただけなのに、時間の経過とともに、記憶が薄れていくと、自分が思いついたと思ってしまう傾向のことです。Taylor, F. Kräupl. “Cryptomnesia and plagiarism.” The British Journal of Psychiatry 111.480 (1965): 1111-1118.

クリプトムネシアはなぜ起こる?

前世、歴史上の偉人の体験や記憶を語る人を見かけたことがあると思います。このなかには本当のことを語っている人がいるかも知れませんが、その一方で、クリプトムネシアが起きて、本や人が語っていることを見聞きしたものをまるで自分の記憶かのように改ざんした結果であるかもしれません。クリプトムネシアは、

  1. 人間の記憶の限界
  2. 高評価を得たいという欲求の高さ(他者承認)
  3. 専門性

などが原因となり、生じやすくなるという報告があります。記憶の限界は過去の体験や記憶が時間経過とともに薄れていくことで情報源が曖昧になることでクリプトムネシアが発生すしやすくなります。クリプトネムシアはアイデアが他者から高い評価を受ける場合に生じやすくなる傾向があります。これは、そのアイデアを思いついた人間が自分であり、それによって他者から高い評価を受けたいという感情が影響します。ですから、自信やプライドが高い人はクリプトムネシアが生じやすくなる傾向があると考えたほうが良いでしょう。専門性と関係のあるアイデアの場合も生じやすくなる傾向があります。これは、専門性の高い内容は過去に考えを巡らせた場合、その記憶を失っても後にアイデアが相違されやすくなります。そのため、突然思いついたアイデアだと考えやすくなり「自己剽窃」が起こると言われています。

Perfect, T. J., Field, I., & Jones, R. (2009). Source credibili-ty and idea improvement have independent effects on unconscious plagiarism errors in recall and gener-ate-new tasks. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35, 267–274.

クリプトムネシアの問題

クリプトムネシアは通常の生活ではそこまで問題にはなりませんが、ビジネスや研究の場では、問題になることがあります。クリプトムネシアの問題は、「自信の明確な自覚なしに他人のアイデアを剽窃してしまうところにあります。」多くの人は、独創的な自分のアイデアが、他人に我が物のように扱われることを良しとしません。クリプトネムシアによって起こるアイデアの盗みは信頼関係を破壊する可能性があります。

有名な話の一つに、ヘレン・ケラーの「霜の王様」事件という話があります。ヘレン・ケラーが出版した「霜の王様」という物語が、他のとある物語と酷似していることが指摘され、ヘレン・ケラーが盗作したという嫌疑がかけられたという事件です。ヘレン・ケラーにとっては盗作の意識はなく、過去に見ていた物語が脳内に残っていて、それが自分自身が考えついた物語であると考えてしまう「クリプトムネシア」が起きてしまったことが事件の原因でした。ヘレン・ケラーが本当に盗作の意識が無かったかどうかは確かめようがありませんが、このようなことが起きる可能性があるとして、「クリプトムネシア」の危険性を示す題材としてしばしば引用されます。

このように、作家ではクリプトネムシアが多少なりとも生じ得るので、作家の頭を悩ませる一つの問題でもあります。また、作家だけでなく、研究者にとってもクリプトムネシアは起こります。論文の剽窃やアイデアの盗作などが研究室内でも起こりえます。クリプトムネシアは創造的活動をしている人(作家、作曲家、研究者等)にとっては現実問題として重要な心理現象といえるでしょう。

クリプトムネシアを減らすには

クリプトムネシアは無意識下で起こる心理現象であるため、完全になくすことは不可能です。特に自分自身の過去の体験に対するクリプトムネシア(自己剽窃)は回避が難しいものの一つです。過去の記憶はどうしても薄れてしまうため、古いアイデアをまるで新しく思いついたかのように感じてしまうのは避けがたいです。しかしこのような 自己剽窃は、他人に迷惑をかけるわけではなく問題になりません。でも他人のアイデアを剽窃するクリプトムネシアは人間関係あるいは法的にも問題であり、予防が必要です。クリプトムネシアを減らす方法として

  1. アイデアの着想時に他人のアイデアではないか気をつける
  2. アイデアの着想によって他人から大きな評価を得ようとしない

クリプトムネシアが増加傾向になる条件

  1. 高齢者(認知機能の低下のため) ref.1
  2. ポジティブな思考、感情を抱く人(ネガティブな感情、思考状態のほうが意識的に慎重になるため) ref.2
  3. ワーキングメモリ(短期記憶)が少ない人 ref.1
  4. 着想アイデアに関する知識量が少ない場合(独自性の高い創造が難しいため他人のアイデアを無意識に模倣する) ref.4

ref.1 McCabe, David P., Anderson D. Smith, and Colleen M. Parks. “Inadvertent plagiarism in young and older adults: The role of working memory capacity in reducing memory errors.” Memory & Cognition 35.2 (2007): 231-241.

ref.2 Gingerich, Amanda C., and Chad S. Dodson. “Sad mood reduces inadvertent plagiarism: Effects of affective state on source monitoring in cryptomnesia.” Motivation and Emotion 37.2 (2013): 355-371.

ref.4 Dow, Gayle T. “Do cheaters never prosper? The impact of examples, expertise, and cognitive load on cryptomnesia and inadvertent self-plagiarism of creative tasks.” Creativity Research Journal 27.1 (2015): 47-57.

まとめ

クリプトムネシアを完全に防ぐことはできないでしょうが、意識して気をつけることである程度抑制することが可能です。創造的な仕事をしている方は、他人のアイデアを自分のもののように利用してしまう潜在的な危険性があるということを自覚して行動するようにしたいですね。ヘレン・ケラーのように無意識下の盗用によってその後の作家生命が立たれるという自体にも発展します。特に楽観的で自信家の人などは気をつけたほうがよいかもしれません。

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