化学

ドコサヘキサエン酸 (DHA) の構造と効果

DHAの構造と効果

ドコサヘキサエン酸 DHAは健康に役立つ脂質の一つです。魚をたべると頭がよくなると言われるようになったのは、このDHAの効果によるものです。

DHAが植物油やバターなどと同じ油脂だと聞くと驚くかもしれませんが、実際に化学構造をみてみると非常によく似ていることがわかります。このドコサヘキサエン酸の構造や効果について紹介します。

ドコサヘキサエン酸の構造

DHAnumbering

ドコサヘキサンエン酸 DHAは脂肪酸の一種で、酢酸と同様に構造中にCOOHを含みます。

ドコサヘキサエン酸の特徴は長い炭素鎖とその炭素鎖中に含まれるたくさんの二重結合です。この二重結合は全てがシス型で6個もあります。

ドコサヘキサエン酸の名前の由来ですが、二重結合(エン)がヘキサ(6という意味)あるためヘキサエン酸という名前になっています。ちなみにドコサ-は炭素数が22という意味です。まとめると

「ドコサ(炭素が22個で)、ヘキサ(6個の)、エン(二重結合)を含む酸(COOH)」

という意味が名前に込められています。

なれてくると色んな化学物質の呼称から構造式が浮かぶようになりますよ

DHAはオメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸が話題になっています。ドコサヘキサエン酸もオメガ3脂肪酸の一種です。DHAnumbering右側の端がオメガ(ω)1の炭素です。ここからたどって、3番目のところから二重結合が始まっています。このような脂肪酸をω3脂肪酸と呼んでいます。

二重結合のある脂肪酸の中には3番目に二重結合があるオメガ3脂肪酸と6番目に二重結合があるオメガ6脂肪酸があります。

オメガ6脂肪酸の代表はリノール酸で植物油中に豊富に含まれており、簡単に摂取することができます。オメガ6脂肪酸は炎症に関わる物質(アラキドン酸)を作り出すことからとりすぎはあまり良くないのではというような話があります。

オメガ6脂肪酸からオメガ3脂肪酸を作り出すことができないので、オメガ3の脂肪酸(DHA、EPA、αリノレン酸)は別できちんと摂取する必要があります。

DHAが多い食品などはこちらの記事を参考にしてください

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ドコサヘキサエン酸の代謝

ドコサヘキサエン酸は、他のオメガ3脂肪酸のEPAやαリノレン酸、オメガ6のアラキドン酸とは異なりシクロオキシゲナーゼ(COX)によって炎症に関わるプロスタグランジンやロイコトリエンといったエイコサノイド類には変換されません。

代謝としては二重結合が酸化されてヒドロキシ基が付加したものが生成することが報告されています。

ドコサヘキサエン酸 DHAの効果

脂質は炭水化物と同じエネルギー源として考えられてしまうことが多いですが、ドコサヘキサエン酸はエネルギー源としてだけでなく様々な生理活性があると言われています。

報告されているものとしては、

  1. 学習機能の向上
  2. がんに対する作用
  3. 血清脂質の低下作用
  4. 抗血栓作用・血栓症予防
  5. 血圧の降下
  6. 抗炎症・アレルギー作用
  7. 血糖値の低下

などです。DHAの中でも脳機能に関する効果が注目されているのは、胎児期に脳にDHAが蓄積され、さらに出産後にもDHA量の蓄積が起こるという報告やDHAが血液脳関門を通過することができる性質を持っていることが発見されているからだと思われます。

そう言われれば脳の発達や機能維持にDHAが関わっている気がしますね

DHAのみが血液脳関門を通過して脳に移行するのであれば、脳に対して何らかの作用を及ぼしている可能性が考えられます。DHAがニューロンやグリア細胞などの脳細胞膜の流動性を変化させることによって、機能に影響を及ぼしているという推測もあります。

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がんに対する効果

DHA単独でのがんを抑制する作用というよりも、既存の薬剤やがん治療法と併用することで効果が上がるという研究がいくつか報告されています。

たとえば、温熱療法に対する感受性の向上 3)、抗がん剤のアドリアマイシンのがん細胞への感受性向上 4)、抗がん剤のシスプラチンの耐性低下作用 5)、肺がん増殖抑制作用などが報告されています。

これらの作用は炎症に関わるプロスタグランジンE2などのエイコサノイド産生の変化やDHAの膜取り込みによる膜流動性の変化によって起こると考えられています。

エイコサノイド代謝への影響

DHAは、アラキドン酸類の代謝に影響を及ぼすことが報告されています。血小板のアラキドン酸からトロンボキサンB2への変換を抑制することによって抗血小板作用を示します。

DHAがシクロオキシゲナーゼ代謝を抑制することによってプロスタグランジンの合成を抑制するという報告もあります。リポキシゲナーゼ代謝抑制に関しては意見が別れています(ロイコトリエン類の生成に関わる)。

参考文献

1)  鈴木平光, & 和田俊. (1988). EPA 及び DHA の代謝と機能. 油化学, 37(10), 781-787.

2) 矢澤一良, & 影山治夫. (1991). ドコサヘキサエン酸の生理活性. 油化学, 40(10), 974-978.

3) Guffy,M.M.,et al.CancerRes.42:3625-3630,1982

4) Guffy,M.M.,et al..CancerRes.44:1863-1866,1984.

5) H.Timmer-Bosscha et al.,J.Natl.CancerInst. 81,1069-, 1989

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