脂質は生物を作る重要な成分の一つです。食品の栄養素でも脂質は欠かすことのできない三大栄養素ですね。そんな脂質には、動物脂、植物油、ろうなどたくさんの種類があるのをご存知ですか?細胞一つ一つを囲っている膜も脂質です。
こめやん
そんな超重要な物質・脂質の種類とその性質について一覧にして紹介していきます。
脂質とは?
石油でもバターでも、ろう、オリーブオイル、ガソリンなどあらゆる脂 (油)に共通しているモノがあります。それは「長い炭素鎖」です。
例えば、イソオクタンはガソリンの成分の一つですが、炭素が8個です。酸素0です。
こめやん
このように脂質には共通して長い炭素鎖があります。
物質は「似た構造を持つものほど混ざりやすい」という性質をもっています。
ですから、長い炭素鎖を持つ脂質同士は混ざりやすいです。一方で水は炭素を持っていないので脂質と混ざりにくいです。水の構造要素であるOHを持っている分子は水にとけます。一方で炭素鎖が長いもの、OHを含まないものは油同士で混ざります。OHやOを持っていても炭素鎖が長ければ油にとけます。どっちもどっちなものはどっちにも溶けます。
脂質の種類
脂質は以下のように全部で7つに分類されます。
- アシルグリセロール
- ろう(ワックスエステル)
- リン脂質
- スフィンゴリピド
- グリコリピド
- アルキルグリセリルエーテル
- テルペノイドリピド
それぞれの脂質は、化学構造を元に分類されています。
脂質の化学構造は一見複雑に見えますが共通部分を分解して考えてみると案外単純です(だと思います)。
カルボン酸とグリセロール(グリセリン)が脂質でよく見られる基本構造です。これらに対して、リン酸基、アルコール、スフィンゴイド塩基、糖類、アルコール、イソプレンなどが結合して様々な脂質のバリエーションが生まれます。多くの脂質はエステルといって、カルボン酸とアルコール[ーOH]がくっついた形をしています。
私達が普段目にする食用油脂(オリーブ油やバター)は①アシルグリセロール(トリグリセリド)です。トリグリセリドは中性脂肪と呼ばれている理由は脂肪酸(カルボン酸)のCOOHは酸性のHを持っていますが、トリグリセリドになるとエステルになって酸性Hがなくなるからです。
ワックスエステルはアルコールがグリセロールではなく、枝分かれのない長鎖アルコールとのエステルです。これは人間には消化できない脂質で深海魚など一部の食べられない魚はこれを多く含んでいます。
こめやん
脂質の機能
高カロリーのイメージが強い脂質ですが、様々な機能を持っていて生物にとっては無くてはならないものです。
脂質の機能の一部を紹介します。
- エネルギー源 (アシルグリセロール[トリグリセリド])
- 細胞膜の材料 (リン脂質、コレステロール[テルペノイドリピド])
- 他の脂質(VD, ステロイドなど)の原料
- 脂質や脂溶性成分の運搬・輸送
- 断熱・保水
- 情報伝達(ホルモン)
- ミトコンドリアの電子伝達系の材料
① エネルギー源
エネルギー貯蔵源として脂質は有用で重さあたりのエネルギー量は糖質、タンパク質の約2倍です。
②細胞膜の材料
細胞膜は脂質二重層というリン脂質からなる膜でできています。
③他の脂質の原料
脂質は外部から摂取するだけでなく、体内で生合成されています。炎症に関わるエイコサノイド類はリノール酸やαリノレン酸といった脂肪酸から合成されます。ビタミンDやエストロゲンなどのステロイドホルモンはコレステロールを原料に生合成されています。
④脂質の運搬
水に溶けない脂質を血液やリンパ液で運ぶには、乳化(ミセル)にして運搬します。運搬に係る胆汁酸やカイロミクロンなど物質もまた脂質でできています。
⑤断熱・保水
皮脂(アシルグリセロール、スクアレン)の分泌は細菌感染を防いだり、水分の蒸散を防ぐ作用があります。皮下脂肪は、体温低下を防ぐ作用を持っています。
⑥情報伝達
細胞間の情報伝達物質として脂質は利用されます。炎症を知らせる脂肪酸であるエイコサノイドや糖質コルチコイド、性ホルモンといったステロイドホルモンも脂質からできています。これらは血液やリンパ液、組織液を通して遠隔地に運ばれて機能を調節しています。
⑦ミトコンドリアの電子伝達系
ミトコンドリアはエネルギー産生に重要な細胞小器官の一つです。エネルギー生産に関わる電子伝達系はミトコンドリアの内膜に存在しているリン脂質と共に存在しています。