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脂肪酸の種類と構造

脂肪酸の種類と構造

脂肪酸は最も単純な脂質の一つで脂肪族カルボン酸です。脂肪酸は長い炭素鎖を持ち、炭素鎖に二重結合を持つものは不飽和脂肪酸、二重結合を持たないものを飽和脂肪酸と呼びます。

脂肪酸とは?

脂肪酸はカルボキシル基(COOH)を持つ炭化水素類のことです。

脂肪酸は私達が目にする脂質(植物油など)の主要な構成成分となっています。脂質は脂肪酸とアルコールが縮合したエステルの形で存在していることが多いです。

炭素数の数によって、

  • 短鎖脂肪酸 (2-4)
  • 中鎖脂肪酸 (5-10)
  • 長鎖脂肪酸 (>10) 高級脂肪酸とも

という名前がついています。

単純な脂肪酸は炭素2つの酢酸を始めとして、悪臭のあるプロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸などの中短鎖脂肪酸から油脂成分として重要なミリスチン酸、パルミチン酸などの高級脂肪酸があります。単純脂肪酸の構造

また、脂肪酸には炭素鎖中に二重結合(不飽和結合)を含むものがあります。これらは不飽和脂肪酸とよばれています。

植物油脂の重要な成分であるオレイン酸やリノレン酸などは代表的な不飽和脂肪酸の一種で、不飽和結合を含む脂肪酸は融点が低く、液状であるものが多いです。二重結合を含まない飽和脂肪酸は炭素数が8までは常温で液体でそれ以上は固体になります。

脂肪酸の一覧

よく言われているω-3やω-6は「脂肪酸の末端の炭素から何番目に二重結合が存在するか」で決まります。ω3は3番目の炭素に二重結合が存在しているものを指します。世間ではω3脂肪酸は体に良い油だといわれています。代表的なものはαリノレン酸やEPA,DHAなどがあります。

ω脂肪酸

一方でω6の脂肪酸であるアラキドン酸などは炎症に関わる脂肪酸であることから、ω6脂肪酸の摂取に偏ると体に悪いのでは?と思われています。

脂肪酸の存在場所

脂肪酸は自然界の至るところに存在しています。いくつかの脂肪酸の代表的な発生源・存在場所を以下の表にまとめました。

名称 慣用名 場所
ブタン酸 酪酸 牛の乳脂
ヘキサン酸 カプロン酸 乳脂
デカン酸 カプリン酸 やし油、パーム油
ドデカン酸 ラウリン酸 パーム油、ヤシ油
テトラデカン酸 ミリスチン酸 パーム油、ヤシ油、バター
オクタデカン酸 ステアリン酸 牛脂
ドコサン酸 ベヘン酸 落花生
cis-13-ドコセン酸 エルカ酸 なたね油
cis-9-オクタデセン酸 オレイン酸 油脂類
cis-9,cis-12オクタデカジエン酸 リノール酸 大豆油
cis-9, cis-12,cis15-オクタデカトリエン酸 リノレン酸 あまに油
4,8,12,15,18,21-テトラコヘキサンエン酸 DHA さっぱ油

飽和脂肪酸は牛などの動物系の油に多いです。

不飽和脂肪酸は植物油に多いです。その中でも二重結合が多い油は青魚(イワシ、アジ、ニシン)などに多いです。

脂肪酸の性質

分子構造

脂肪酸は基本的にカルボン酸の性質を持っていると考えます。炭素鎖の長さや二重結合によって性質が少し変化します。

脂肪酸の二量体構脂肪酸の二量体構造カルボン酸同士は二量化してつながった分子対層を作っています。

不飽和脂肪酸の折れ曲がり構造

折れ曲がっているせいで重なりが悪いため、融点は低めになっています(固まりにくい)。

酸性度

酸性度は酢酸のKa=1.76に対して、炭素鎖が長くなるごとに基本的に酸性度が低下しますが、C10程度になればKa=1.2くらいに落ち着きます。カルボン酸程度の酸性度は持つため、ナトリウム塩になるのに炭酸ナトリウム程度の塩基で十分に反応して脂肪酸塩(石鹸)になります。一般的にけん化の際に水酸化ナトリウムを使用するのはグリセロールとの脂肪酸エステルを加水分解するためにはより強い塩基が有効であるからだと思います。

溶解度

親水性の高いカルボン酸を持っていますが炭素数が8を超えてくるとほとんど水に溶けにくくなっていきます

脂肪酸はクロロホルムに良く溶解し、ベンゼンなどの芳香族溶媒にもよく溶けます。ヘキサンは高級脂肪酸など融点の高い脂肪酸には熱を加えないと溶けにくくなります。炭素鎖が大きくなるほど溶けにくくなります。

脂肪酸の性質と反応

脂肪酸は食品としても重要な物質で、その反応性は食品劣化に関わるために重要です。脂肪酸は基本的には酢酸と同様にカルボン酸として捉えてよく、炭素鎖が長くなっても立体障害などの影響によってカルボキシル基の反応性が低下することは少ないとされています。

一方で、炭素鎖二重結合への付加反応などは立体障害の影響を受けやすいとされています。

自動酸化

自動酸化は油脂の酸敗など、劣化の原因となるために重要です。脂肪酸に酸化防止剤が入っているのも自動酸化を防止するためです。

自動酸化とは空気中の酸素と反応して勝手に酸化していく反応です。

自動酸化は酸素とのラジカル反応で進行します。

油脂中の炭素鎖は酸素とのラジカル反応によってフリーラジカルが生じます。とくに不飽和結合を含む脂肪酸のアリール位はラジカルが安定化するためにフリーラジカル(・)が生じやすいです。その結果、O-O結合(ペルオキシド結合)を含む過酸化物が生成します

脂肪酸の自動酸化

自動酸化の受けやすさは二重結合の数と活性メチレン基の数が影響します。

二重結合に挟まれた活性メチレン基

活性メチレン基は2つの二重結合に挟まれたメチレン基(CH2)のことで、ラジカルが発生しやすいです。

αリノレン酸、アラキドン酸、DHA、EPAなどは活性メチレン基を複数もっているため非常に酸化に弱いです。特に脂肪酸はcis-オレフィンが多く、トランス体と比べて更に反応性が高いです。

脂肪酸の一覧

銅や鉄などは自動酸化を触媒するため、なるべく金属を混入させないことが酸化を防ぐのに重要です。また、油脂中の水分も自動酸化の進行を助けます。また、光も酸化を促進させるので遮光するべきです。特に染料で着色された油などは注意します。

自動酸化は基本的には温度が高い方が進行しやすいです。

酸化防止剤としては、ビタミンCやビタミンEなどが添加されます。

異性化 シスからトランス脂肪酸への反応

シス体はトランス体よりもエネルギーが高く不安定で、特定の条件下では容易にトランス体に異性化します。

シスとトランス体

特に水素添加反応(二重結合を還元して一重結合にする反応)によるトランス体の生成が問題になっています。

トランス体の生成機構

これは副反応として、ニッケルなどの水素添加触媒中にある水素原子が二重結合に付加反応を起こしてフリーラジカルを生成し、隣の炭素に結合した水素が脱離して二重結合が生成します。この時エネルギー的に安定なトランス体の二重結合が生成します。

中和によるカルボン酸塩の生成 (けん化)

カルボン酸はアシルグリセロールようなエステル体でなければ炭酸ナトリウムなどの塩基と反応してカルボン酸塩を生じます(けん化)。これらは石鹸として利用できます。

せっけん・鹸化の原理けん化とけん化価をわかりやすく解説

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