⚠️ 記事内に広告を含みます。

有機銅化合物 -ギルマン試薬 を使ったアルキル化 ケトン合成

ギルマン試薬

有機銅化合物は有機リチウム試薬やグリニャール試薬と比べて温和な反応性が特徴の有機金属試薬です。有機リチウム試薬とCuIから作られる有機銅試薬はギルマン試薬とも呼ばれています。

有機銅化合物は温和な求核試薬

有機銅化合物は有機金属試薬の中でも穏やかな反応性を有する試薬として利用されています。

有名な有機銅試薬は銅アセチリドがあります。(RC≡C・Cu)

アルキルリチウム試薬と一価の銅塩を加えると「ギルマン試薬」として知られる有機銅試薬が生成します。

ギルマン試薬

ギルマン試薬の構造

ギルマン試薬はHSAB則では「ソフト」に分類される求核剤であり、不飽和カルボニルに対しては、1,2-付加よりも1,4-付加が優先して進行します。

参考 HSAB則とは?硬いと軟らかいの覚え方 | ネットde科学ネットde科学

このようにギルマン試薬は穏やかなアルキル化剤として利用されています。

欠点としては

  1. 不安定で単離が難しいため反応系中(in situ)で発生させる必要がある
  2. 2つのアルキル基のうち片方のみしか使えない

があります。ギルマン試薬の調整はアルキルリチウムやグリニャール試薬と一価の銅塩(ヨウ化銅(I)等)を加えて簡単につくれます。

貴重のアルキル基を使いたい場合は注意が必要ですが、これを解決する方法も提案されています。

ここでは有機銅試薬のうちギルマン試薬について紹介します。


ギルマン試薬の反応

酸塩化物とギルマン試薬との反応

酸塩化物とギルマン試薬との反応は相性が良く、他の官能基が存在していても優先的に反応が進行することが多いです。

グリニャール試薬やアルキルリチウム試薬を使用してケトンを選択的に合成するには反応条件を厳密にコントロールしなければ第三級アルコールが生成していしまいます。

酸塩化物をケトンに変換

より温和な求核剤としてギルマン試薬を用いれば生成したケトンに対してはソフトなギルマン試薬は反応しにくいのでケトンが選択的に得られます。

実際にギルマン試薬による置換反応は酸塩化物に対して最も反応性が高く、アルキルハライド、ケトン、ニトリル、オレフィンという順に反応性が低下します。

ギルマン試薬を用いたケトン合成の優れた点酸塩化物側にエステル、ニトリル、アミド、アルケン、アルキルハライド(Brは収率は低い?)が存在していてもケトン合成が可能という点です。

傘高いアルキル鎖を導入したい場合はトリフェニルホスフィンを含むヘテロ有機銅試薬が有用です。

ターボグリニャールとヨウ化銅の条件

ギルマン試薬によるケトン合成1

ギルマン試薬によるケトン合成1  Didiuk, Mary et al WO. 2013014569, 31 Jan 2013

ヨウ素体(600 mg、2.17 mmol)をTHF(6.0 mL)に溶解し、-40℃にした。塩化イソプロピルマグネシウム塩化リチウム錯体溶液(1.0 M in THF、0.365 mL、2.17 mmol)を滴下し、黄赤色の溶液を-40℃で40分間撹拌した。 Cul(124 mg、0.65 mmol)を一気に加えた後、混合物を-15°Cで20分間撹拌して固体を溶解した。次に、黄色の溶液を-40℃に戻し、酸ハロゲン化物(450mg、3.07mmol)を滴下し2時間かけて0℃に温めながら撹拌した。混合物を1 N HClで希釈し、酢酸エチルで抽出し精製処理を行い目的物を74%の収率で得た。

グリニャール試薬による交換反応の後、銅塩を加えて有機銅試薬とした後酸塩化物と反応させてケトン体を合成しています。有機銅試薬は立体障害を受けて傘高い酸塩化物とは反応しにくそうですが、酸塩化物との反応は意外とスムーズに反応するようです。

ブチルリチウムとヨウ化銅の条件

ギルマン試薬によるケトン合成2

Kooistra, Floris B. et al Organic Letters, 9(4), 551-554; 2007

乾燥THF(100ml)に臭素体(4.5g、24.06mmol)を窒素雰囲気下溶解して-78℃に保ちながら、n-BuLi(15ml、ヘキサン中1.6N、24mmol)を滴下して加えて30分撹拌した後-55℃まで温めました。次に、ヨウ化銅(I)(2.38g、12.49 mmol)を加えて20分後に-30℃まで温めた。その温度でさらに30分間撹拌した後、酸塩化物(1.66 g、10.09 mmol)を加えて1時間攪拌後0℃まで温めた。乾燥MeOH(4 ml)、 NH4Cl水溶液(50 ml)を混合物に加え、セライト濾過し、ろ液をエーテル(3x 50 ml)で抽出、精製処理を行い目的物を得た(1.92 g、8.14 mmol、80.6%)。

この例ではアリールハライドをブチルリチウムによりリチウム化し、ヨウ化銅を加えてギルマン試薬を調整後、酸塩化物と反応させて高収率でケトン体を得ています。ギルマン試薬は半分のモルしか反応しないので、アリールハライドは酸塩化物に対して二倍モル加えています。

アルキルハライドとギルマン試薬との反応

脂肪族のハロゲン化アルキルやアリルハライドとギルマン試薬は反応してアルキル置換体が生成します。脱離などが進行しにくく炭素鎖の延長に有効です。

また、アルケニルハライドはシス臭素体、あるいはトランス臭素体どちらもギルマン試薬と反応して立体保持でアルキル化が可能であるという利点があります。

不飽和カルボニルへの1.4-付加反応

有機リチウム試薬やグリニャール試薬などはハードな求核剤であるため、HMPAなどの溶媒を用いたり、極低温で反応させるなどの工夫を行わない限り1,2-付加が優先的に進行します。

1,4-付加を進行させるのに便利な試薬がギルマン試薬などの有機銅試薬です。

ギルマン試薬はソフトな求核剤として不飽和カルボニルへの選択的な1,4-付加反応に利用されます。

有機銅試薬の生成にはブチルリチウムやグリニャール試薬に対してCuIやCuOTfなどを加えて反応を行います。CuCN・2LiClも有用です。

参考

参考 ギルマン試薬 - Wikipedia取得できませんでした

井深俊郎. “有機銅試薬を用いる有機合成の進歩.” ファルマシア 17.10 (1981): 973-980.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です