⚠️ 記事内に広告を含みます。

ニトリルからケトン合成

ニトリルからケトン合成

ニトリルからケトンを合成する方法

グリニャール試薬・有機リチウム試薬の求核付加

ニトリルと有機金属化合物を用いる条件はケトンを合成する方法として有力です。

なぜなら、ニトリルへの有機金属化合物の求核付加により生成するイミンは有機金属化合物とはそれ以上反応しないからです。イミンを加水分解するとケトンを得ることができます。

ニトリルによるケトン合成

ニトリルによるケトン合成 イミニウム塩で反応が停止する

実際にケトンを合成しようかな?と思ったときに思いつくのがニトリルを基質にした変換方法です。

単純なカルボン酸誘導体からケトンを合成する場合は

  1. アルデヒドに有機金属化合物を求核付加させて第二級アルコールを作りそれを酸化してケトンを得る方法
  2. ニトリルに対して有機金属化合物を求核付加させる方法

が信頼性の高いケトン合成法です。

酸塩化物やエステル、カルボン酸、アミドからも合成は可能ですが、厳密・特殊な条件が必要であるためあまり合成上有用ではありません。

酸塩化物をケトンに変換

他の方法としてはワインレブアミドを用いる方法が有力な方法です。

ワインレブケトン合成: Weinreb Ketone Synthesis アミド→ケトン

副反応

ニトリルのα位水素はニトリルによる電子求引による影響で酸性度が上がって引き抜かれやすくなっています。グリニャール試薬やアルキルリチウムなどの炭素求核剤は塩基性が高くα水素を引き抜く可能性があります。

引き抜かれた炭素アニオンは他のニトリルを攻撃する可能性があります。

ニトリルへの求核付加における副反応

ニトリルへの求核付加における副反応

α水素を持たないニトリルを利用すればこのような問題は起きません、また、tert-ブチルリチウムなど強塩基性の試薬を使わないようにすると副反応を抑えられるかもしれません。

副反応の回避

副反応の回避

しかし、作りたいケトンがある場合にはこのような回避策はとれないので、別のケトン合成法を試してみるしかありません。

エノラートの求核付加

ブレイズ反応 Blaise Reaction

ブレイズ反応はαハロエステルと亜鉛から生成した有機亜鉛試薬からエノラートが生成します。このエノラートがニトリルに求核付加して生成したイミンを加水分解するとβケトエステルができます。これはニトリルを求核剤としたクライゼン縮合に似ていますね。

from wikipedia  [CC BY-SA 3.0]

参考 クライゼン縮合とディークマン縮合 酢酸エチルの縮合NaOMeを使う理由 | ネットde科学ネットde科学

参考 Blaise reaction - Wikipedia取得できませんでした

ヘッシュ反応 Hoesch reaction

ヘッシュ反応は電子豊富な芳香環からニトリルへの求電子置換反応により芳香族ケトンを合成する反応です。

この反応はニトリルを求電子試薬としたフリーデルクラフツ・アシル化の一種です。

ヘッシュ反応の概要 from wikipedia by LHcheM [CC BY-SA 3.0]

ニトリルは塩化亜鉛などのルイス酸により活性化され、求電子置換を受けます。生じたイミンは加水分解によりケトンを生成します。

参考 Hoesch reaction - Wikipedia取得できませんでした


反応条件

メチルグリニャールを使った反応例1

Huy, Luu D. and Diep, Nguyen T. Pharmaceutical Chemistry Journal, 49(7), 486-489; 2015

ニトリル(8 mmol)をトルエン(8.1 mL)中に溶解し、窒素雰囲気下3Mメチルマグネシウム(8.1 mL)を滴下して加えて、60-65℃に温めて3.5時間攪拌した。氷浴して10.8mLのTHFと2.4 gの氷、0.8 mLの水、および4 mLの酢酸の混合物を加えました。濃縮し、濃厚溶液を30mLの水に注いで。析出した結晶を分離し、水で洗浄し、乾燥させて、再結晶により目的物を78%で得た。

ニトリルに対してグリニャール試薬を共役付加させてケトンを合成しています。α,β位の不飽和結合よりもカルボニル炭素への攻撃が優先して起こっています。

ハロゲン化アリール等にマグネシウム、活性化剤としてヨウ素(ジブロモエタンなど)を加えてグリニャール試薬を調整してそこにニトリルを加えるという方法も使えます。

ブチルリチウムを使った反応例2

Liu, Xu-Guang and Sun, Wenfang Journal of Physical Chemistry A, 118(45), 10318-10325; 2014

基質(854 mg、2.0 mmol)のTHF(10 mL)溶液をドライアイスアセトン浴で冷却し、2.5 M n-ブチルリチウムヘキサン溶液(0.96 mL、2.4 mmol)を加えて1時間撹拌した後、THF(1.0mL)中のベンゾニトリル(0.33mL、3.2mmol)を滴下した。 1.5時間反応させた後、反応混合物を0℃まで温めた。反応物を水(2.4 mL)および濃塩酸(3.6 mL)を加えて8時間還流した。冷却後、希水酸化ナトリウム水溶液で中和して酢酸エチルで抽出した。精製処理を行い目的物を58%で得た。

ブチルリチウムでハロゲン-リチウム交換反応を行った後、生じた有機リチウム試薬をニトリルと反応させています。ヨウ素選択的とまではいかないものの、優先的にヨウ素置換位置にケトンを導入できています。ブロモの位置に置換されたケトン体も副生成物として得られているようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です