淡水魚は臭いのか?
淡水魚は海水魚と比べて臭いと思う人が多いのではないでしょうか
ところで、最近食べた魚は淡水魚ですか?
おそらくそのほとんどが「海水魚」ではないでしょうか?
実は海水魚が臭わなくて、淡水魚が臭いわけではなく、単純に淡水魚の臭いに慣れていないので臭いが気になるだけかもしれません。
実際に淡水魚と海水魚ではにおいの成分に違いがあるようです。
日本人はたくさん魚を食べるといいますがそのほとんどは海水魚です。ちなみに日本人の魚の消費量はどんどん下がっています。
魚の臭い成分
海水魚のにおい成分
魚の独特の生臭いにおい成分はアミン類、低級脂肪酸、チオール類が混ざり合ったにおいです。特に特徴的なのはアミン類です。
海水魚中の特徴的な成分はトリメチルアミンです。
トリメチルアミン自体のにおいはアンモニアに似た刺激臭です。
淡水魚のにおい成分
淡水魚・海水魚に共通して存在するアミン類のにおい成分はピペリジンです。
一方で、淡水魚には海水魚中には無いにおい成分があります。
ゲオスミンや2-メチルイソボルネオール(2-MIB)は「土臭」「かび臭」のする成分として知られています。
こめやん
淡水魚に特徴的な成分ともいえる土臭物質は魚由来の成分ではなく、環境中に存在する細菌によって発生した成分です。
栄養に富んだ池や川で発生するアオコはカビのような墨汁のような臭いが発生しますがこれもゲオスミンや2-MIBによるものです。
汚い川というか微生物がたくさん発生している川にいる魚が臭いのはこれらの成分が染みつくからでしょうか。
海水魚と淡水魚どっちが臭い?
淡水魚と海水魚の匂い成分が違うというのは分かりました。
それではどちらのほうが臭いと感じやすいのでしょうか?
においに関する感受性は人それぞれであり、慣れもあると思います。
そこで、海水魚に特徴的なにおい成分トリメチルアミンと淡水魚に特徴的な匂い成分ゲオスミン・2-MIBの嗅覚閾値を比較してみましょう。
嗅覚閾値とはどの程度の薄さまで匂いを感じられるか?という濃度です。
嗅覚閾値を調べるとどちらも非常に低濃度でもにおいをかぎ分けられることが分かりました。
- トリメチルアミン 0.000032ppm
- ゲオスミン 0.0000065ppm
- 酢酸 0.006ppm
永田好男, and 竹内教文. “三点比較式臭袋法による臭気物質の閾値測定結果.” 日環セ所報 17 (1990): 77-89.
2-MIBについてもゲオスミンと同程度の閾値らしいです。
どちらかというとゲオスミンのほうが低濃度でも感じやすいようですね。測定方法によって値は大きく変わるので何とも言えませんがどちらも低濃度で匂いを感じるということは分かりました。
また、よく新鮮な魚はあまりにおいが気にならないといいますが、これに関しては海水魚は淡水魚と比べて新鮮な状態の時に含まれる揮発性物質が少ないという報告があります。
Kawai, Tetsuo, and Morihiko Sakaguchi. “Fish flavor.” Critical Reviews in Food Science & Nutrition 36.3 (1996): 257-298.
魚臭さはどこからくる?
魚臭さは魚自体が最初からもっているというよりも、時間経過で持っている物質が酸化・分解したり、外部の臭い成分を取り込んでしまったものです。
身は意外と臭くない?
淡水魚の特徴的なにおいの由来は環境中に含まれるゲオスミンや2-MIBによるものなので、そういった匂いが少ない川に住んでいる淡水魚はこうした匂いが薄くなり、
成分でみれば海水魚とそんなに変わらない匂いといえそうですね。きれいな川の淡水魚は臭くないというのはこういった理由があるからかもしれません。
とはいえ、淡水魚の臭いやっぱり気になるという人もいると思います。においが気にならなくするために香草などを使って調理することも多いですね。
あとは魚の部位によってにおいの程度は変わります。
魚の体表のぬめりや皮、内臓はにおいがしますが、身の部分はそんなに臭わなかったりします。調理する時も皮ごと調理しないで身だけにして煮つけたりするとにおいがきにならないかもしれません。
参考文献
- 太田静行. “魚の生臭さとその抑臭.” 油化学 29.7 (1980): 469-488.
- Liu, Tingting, et al. “Production and fate of fishy odorants produced by two freshwater chrysophyte species under different temperature and light conditions.” Water research 157 (2019): 529-534.
- Ólafsdóttir, Guðrún. Volatile compounds as quality indicators in chilled fish: Evaluation of microbial metabolites by an electronic nose. Diss. 2005.