ピバロイル基(Pv基)によるアルコールの保護

ピバロイル基とは?

ピバロイル基(Pv基)とは?

ベンゾイル基(Bz基)はエステル系のアルコールの保護基で、同じエステル系の保護基であるアセチル基などと比べて、酸・塩基加水分解条件に強く、脱保護にはより過激な条件が必要になります。そのため、脱保護はLAHやDIBAL等を用いた還元的な方法で行われることが多いです。

Pv基


特徴・利点

ベンゾイル基の利点や特徴は

  1. 酸性や塩基性条件に比較的耐え、還元条件で脱保護できる
  2. 立体障害のため、第一級アルコール優先的に反応する

などがあります。

反応機構

反応機構ー保護

保護反応は、アシルクロライドに対するアルコール求核アシル置換反応で進行する。

反応機構ー脱保護

塩基によるエステルの加水分解、あるいはエステルのヒドリド還元により脱保護反応が進行する。


反応条件-保護

保護条件例1

Pv基の保護例1

アルコール体(8.84 g,25.5 mmol)、ピリジン(3.1 mL,10,39 mmol)、PvCl (3.8 mL,6,31 mmol)、ジクロロメタン(51 mL)の溶液へ、4-DMAP (0.31 g,2.5 mmol)を室温で加えた。 80分間撹拌した後、ジクロロメタンと塩酸(1M)を加えた後、有機層を分離し、残りの水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮し、得られた残渣をカラムにより精製し目的物を得た(8.74 g,20.3 mmol, 79.5%)。

脱保護反応例

塩基性加水分解条件かヒドリド還元で脱保護することが多いです。塩基性加水分解ではt-BuOKやジメチルアミンなどが用いられます。ヒドリド還元はより扱いやすいDIBALが使いやすいです。

反応例1

Pv基の脱保護例1保護アルコール体(1.02 g, 3.28 mmol)のジクロロメタン(33 mL)に溶解し、−78℃で冷却した後、DIBAL溶液(1M in PhMe, 6.56 mmol)を加え、30℃で30分間撹拌した。反応後硫酸ナトリウム10水和物を加えてクエンチした後、得られた懸濁液をセライトろ過し、ジクロロメタンで洗浄した後、濾液を濃縮しカラムクロマトグラフィーで精製し、アルコール体を得た(704 mg,95%)。Ueda, Atsushi et al. JACS, 2014, 136, 5176.より引用。

反応例2

Pv基の脱保護例2

アルコール保護体(2.02 g, 7.52 mmol)のMeOH(50.0 mL)溶液に、LiOH・H2O (237 mg, 5.64 mmol)を加えた。 20時間後、Dowex-50W (7.1 g)で反応を停止させた。 15分後、樹脂ををろ過除去した。濾液を濃縮し、粗生成物をカラムで精製して目的物を得た(93%)。Mahapatra, Subham et al. JACS, 2013, 135, 10803.より引用。

注意事項ーTips

  • ピバロイル基はアセチル基と比べて外しにくい。その場合はヒドリド還元が役立つ。

アルコール保護 アルコールの保護基のまとめ

参考まとめ

Wuts, Peter G. M.. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis fifth edition (p.310). Wiley.

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