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PMB基 (p-メトキシベンジル基)によるアルコールの保護

PMB基とは?

PMB基 (p-メトキシベンジル基)とは

p-メトキシベンジル基(PMB基)はベンジル系のアルコールの保護基で、ベンジル基と同等の頑丈さを保ちながら、DDQ等の酸化剤を用いて酸化的に脱保護できる特徴を持っています。一方で、ベンジル基 (Bn基)よりも酸性に弱いことから、PMB基は強酸性条件で脱保護可能です。PMB保護


特徴・利点

PMB基の利点や特徴は

  1. ベンジル基よりも劣るが酸や塩基条件などに比較的強い保護基
  2. 酸化的脱保護が可能(DDQ酸化)

です。PMB基は入手容易で保護化反応も簡単に進行します。

PMB基の保護・脱保護の反応機構

PMB保護の反応機構

PMB保護反応機構

強塩基であるNaHによってアルコールが脱プロトン化して生成したアルコキシドがベンジルハライドと反応して保護が完了します。この時2つの機構が考えられますが、メトキシ基による電子の押し出しのため、塩化物イオンが脱離して生成する中間体を経由するSN1機構のほうが起きやすいです。

DDQを用いた脱保護の反応機構

PMB脱保護反応機構

PMB基はDDQ酸化によって脱保護できます。メトキシ基によってベンゼン環が電子豊富な状態になっており電子不足なDDQとπ錯体を形成します。メトキシ基からの電子の押し出しによりベンジル位水素が脱離し、次いで水が攻撃して生じたヘミアセタールが分解して脱保護が完了します。


PMB基の保護反応の例

PMBClとNaHを使ったPMB保護反応の条件

PMB保護反応例1乾燥したナスフラスコに窒素置換下、アルコール体 (2.64 mmol, 0.56 g, 1.0eq)と脱水DMF(13.2 mL, 0.2M)を加えて0度に冷却し、NaH(3.96 mmol, 95.0 mg,1.5eq)をゆっくり加えた。 30分間撹拌した後、KI(10.6 mmol, 1.50 g, 4eq)およびPMBCl (3.17 mmol, 496.0 mg, 0.43 mL, 1.2eq)を加えて室温で一晩撹拌した。ヘキサンで抽出し、水で洗浄後、有機層をMgSO4で乾燥、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し保護体を得た(99%)。Delcamp, Jared H., et al. JACS, 2013, 135, 8463.より引用。

脂肪族アルコールの保護は、上の例のようにアルコールの求核性が低いため水素化ナトリウムなどの強塩基でプロトンを引き抜いてアルコキシドとして反応させるのが一般的によくやられます。溶媒は高めの沸点が難点ですが、DMFがよく使われますが、アセトニトリルやTHFなどもよく使われます。強塩基はNaHが無難だと思いますが、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウムなども使えます。

PMB基の脱保護反応の例

DDQを使ったPMB基の脱保護条件

PMB脱保護反応例1ジクロロメタン(2.5 mL)と水(0.2mL)に保護体(30.0 mg, 56.0 μmol, 1eq)を加えて溶解した後、DDQ(25 mg, 0.112 mmol, 2eq)を加えた。 1時間撹拌した後、飽和NaHCO3水溶液で反応停止した後、反応液をジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和NaHCO 3水溶液およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチルのヘキサン溶液)で精製して、生成物を得た(91%)、Lu, Ping et al. JACS, 2014, 136, 17749.

ベンジル基 (Bn基)と比べたPMB基の大きな違いは、DDQを使って酸化的に脱保護できる点です。PMB基は接触還元の条件でも脱保護可能ですが、時に反応が進行しなくなることも多いです。その時にPMB基であれば、還元条件だけでなく、DDQを使った酸化的条件で脱保護可能なので心強いかもしれません。

Pd/Cによる接触還元のやり方 | 反応条件と特徴

注意事項ーTips

  • PMB基はベンジル基よりも酸性に弱いので強酸条件は注意!

アルコール保護 アルコールの保護基のまとめ

参考まとめ

Wuts, Peter G. M.. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis fifth edition (p.). Wiley.

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