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よく使われるパラジウム触媒の特徴!0価と2価

Pd触媒の特徴

遷移金属の中でもパラジウムは有機合成化学で最もよく利用される金属の一つです。パラジウムの有機合成化学における利用は、エチレンをアセトアルデヒドに酸化するWacker酸化に始まり、これまでに数多くの反応が報告されています。そんなパラジウム化合物の中でもよく利用される化合物をいくつか取り上げます。

パラジウムの特徴・利点

有機合成化学ではパラジウム以外の金属(Cr,Mg,Pt,Zn)など様々な金属が使用されます。

パラジウムが良く使われるのは、パラジウムのイオン半径が大きく軟らかいために、軟らかいアルキル、アリールなどと結合を形成しやすく、配位子の置換速度が早い特徴をもっていることからクロスカップリング反応などの炭素ー炭素結合形成反応などへの触媒用途に向いています。また貴金属に分類されるパラジウムは酸化されにくく、パラジウム化合物の合成も比較的容易なところも良い点です。

有機合成化学に利用されるパラジウムは0価と2価のパラジウムで、1価はほとんど利用されません。

クロスカップリング反応などでは0価のパラジウムを使いますが、2価Pdを系中で0価に還元する方法もとります。これは不安定な0価よりも2価のほうが取り扱いやすいという理由と系内で発生させることによりフレッシュで活性の高い0価Pdを得られるというメリットがあるからです。

反応系内、フラスコ内で活性の高い反応種に変換させる方法は有機合成化学では良く取られる手法です。
in situ (イン サイチュ)[その場で、反応系内で]発生させるというように論文では書かれます。バーベキューに行く時、火は家から松明でもって行かないで、その場でマッチ、ライターで持っていきます。そのほうが火が消える心配もないし使うその場のほうが何かと便利ですよね!触媒も同じです。高活性な0価は壊れやすく活性ななくなっているかもしれません。



2価のパラジウム

塩化パラジウム・PdCl2

塩化パラジウムは良く使用される2価のパラジウム触媒です。
塩化パラジウムはMeCN,DMF、スルホラン等以外は溶けにくいという欠点があります。水やアルコールに溶けにくいので、溶かしたいときは、塩化水素やシクロオクタジエン、NaClなどの配位性物質を加える必要があります。アルコール中には不安定で徐々に分解して金属パラジウムが生じるのでこれらの溶媒を使いたい場合は別のパラジウム化合物を使用したほうが良いです。
塩素源を加えると生成するMPdCl4 (M= Li, Na,K)はアルコール中でも安定です。

塩化パラジウムは試薬会社から比較的安価に購入可能です。ワッカー酸化に用いることが多いです。金属パラジウムから王水と濃塩酸から合成もできます。
他のパラジウム触媒の合成原料として有用で(Pd(PPh3)4) や PdCl2(PPh3)2、Pd2(dba)3 などを合成できます。

PdCl2(MeCN)2は塩化パラジウムにアセトニトリルが配位した錯体で、ジクロロメタン、THF、アセトン、などに溶解する。一方で水には溶けにくい。塩化パラジウムから容易に合成できる。PdCl2をアセトニトリル中で不活性ガス下で24h室温で撹拌後、オレンジ結晶をろ過、エーテルで洗浄後、乾燥させてつかう。再結晶したい場合は、MeCN/DCM/Hexaneでやると明るい黄色の結晶が得られる。

ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)・
PdCl2(PPh3)2

PdCl2(PPh3)2も割と良く利用される二価のパラジウム触媒です。ベンゼンやクロロホルムにはわずかに溶けます。テトラキスと比べて安定であるのが利点?
ベンゾニトリルからなる錯体(PdCl2(PhCN)2)はKharasch塩とも呼ばれれる。ベンゼンやクロロホルム、アルコールなどの溶媒によく溶けるが、反応後沸点の高いベンゾニトリルが生成するのが難点。

合成法
1eq PdCl2、2.5eq NaClを MeOH(300mM)中で24h室温で撹拌後、PPh3(2eq)を加えて2時間還流後、室温に戻しながら12h撹拌する。生じた沈殿をろ過し、メタノールで洗浄し、乾燥すると9割程度の収率で得られる。

酢酸パラジウム・Pd(OAc)2

酢酸パラジウムは赤褐色の固体で、水には溶けず、ベンゼン、DCM、クロロホルム、アセトン、エーテル、THFには溶ける。アルコールは分解するため注意が必要。
有機溶媒への溶解性が高いので、PdCl2よりも使いやすい。二価パラジウムの代表例です。酢酸が生じるのが問題になる場合は使えない。

0価のパラジウム

テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)・Pd(PPh3)4

略称:テトラキス と呼ばれ、最もよく使用されてそうな0価の触媒。空気中ですぐに失活するのが難点で、薄い黄色から徐々にオレンジ、褐色に変化して失活する。溶液中の酸素とも反応しやすく、2価の酸素錯体になって失活するので、溶媒の脱酸素をする必要がある。ベンゼン中ではトリフェニルホスフィンを解離してPd(PPh3)3などの配位不飽和の状態をとるために高活性になる。
有機溶媒には割と溶ける(ベンゼン、クロロホルム)

トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)・Pd2(dba)3・CHCl3

溶媒への溶解性はあまり良くない(クロロホルム、ベンゼン、THFなどにわずかに溶ける)。溶液中で徐々に分解する。

パラジウムブラック・Pd

パラジウムブラックは通常触媒効率を高めるために炭素に固定させるPd/C(5~10%)として使われます。主に水素還元に使われ、触媒毒としてBaSO4やCaCO3などを用いて選択性を出させる場合も多いです。触媒はろ過で簡単に取り除ける点で、最近は、鈴木宮浦カップリング反応など、クロスカップリング反応の触媒としても注目されています。トリフェニルホスフィンなどの配位子がなく、炭素に担持された不均一性触媒です。

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