⚠️ 記事内に広告を含みます。

ニトロソアミンの化学 発がん性のある危険な物質の化学的性質

ニトロソアミンとは?

ニトロソアミンはニトロソ基(-N=O)とアミン(R-NH2)からなる化合物群のことです。

ニトロソアミンの構造式

ニトロソアミンの構造式

加工肉や調理により発生するニトロソアミンが発がん性を示すために問題視されています。

名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

求核性の高いアミンが求電子性の高い亜硝酸が反応するとニトロソアミンが生成します。

ニトロソニトロソアミンの生成

ニトロソニトロソアミンの生成(赤:アミン 青:亜硝酸)

1956年Magee, Barnesによってニトロソアミンの毒性に関する最初の報告が行われました。

ニトロソアミンの毒性が注目された事件として1957年にノルウェーでニシンを含む餌を与えられた家畜が急性中毒で死亡した事件があります。これは試料中に添加された亜硝酸ナトリウムとニシンのジメチルアミンやトリエチルアミンが反応して生成したN-ジメチルニトロソアミンによるものであることが明らかになりました。

Magee, Peter N., and J. M. Barnes. “The production of malignant primary hepatic tumours in the rat by feeding dimethylnitrosamine.” British journal of cancer 10.1 (1956): 114.

ニトロソアミンはどこにある?

ニトロソアミンはアミン類と亜硝酸塩が反応することで発生します

反応は高温下で進行しやすいため、アミンと亜硝酸類が多く存在する物質が加熱されると生成しやすいです。

ニトロソニトロソアミンができる

ニトロソアミンができる

アミンとニトロソアミンが多い食品

  • アミン類:アミンは魚介類に多いです。魚が臭いのはアミン類によるものです
  • 亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウムなど)は発色や保存のために食品添加物として添加されます

亜硝酸ナトリウムが加工肉含まれる理由

 

亜硝酸ナトリウムは食肉の腐敗や、肉色が灰褐色に変化していくのを防ぐ作用があります。一酸化窒素はヘモグロビンと反応してピンク色を呈するニトロソヘモグロビンに変化します。

  1. たばこ
  2. 加工肉・燻製肉
  3. チーズ
  4. 漬物
  5. 魚介干物(調理により増加)

特にタバコはニトロソアミンを多く含んでいるため、タバコを吸っている人は摂取量が多くなります。

ニトロソアミンは様々なところに含まれているので完全に避けるのは難しいですが、たばこを吸わないだけでもニトロソアミンの摂取を減らすことができます

ニトロソアミンの生成はビタミンCやビタミンEなどによって低減できることが報告されています。

ニトロソアミンの反応

ニトロソアミンの共鳴式は下記のように書くことができます。

ニトロソアミンの共鳴式

ニトロソアミンの共鳴式

ニトロソアミンは酸性溶液中でプロトン化することにより求電子性が向上するため、求核試薬と反応しやすくなります。これによりニトロソ化体とアミンが得られます。

ニトロソアミンは酸性溶液中、求核試薬と反応して脱アミン化する

ニトロソアミンは酸性溶液中、求核試薬と反応して脱アミン化する

ヒドラジン合成 – 還元

アミンから合成したニトロソアミンを還元することでヒドラジンを合成できます。

ニトロソアミンの還元

ニトロソアミンの還元

ニトロソアミンの還元は接触還元酸性/亜鉛などの一般的な条件で還元することが可能です。

参考文献

  1. Beard, Jessica C., and Timothy M. Swager. “An Organic Chemist’s Guide to N-Nitrosamines: Their Structure, Reactivity, and Role as Contaminants.” The Journal of Organic Chemistry 86.3 (2021): 2037-2057.
  2. 慶田雅洋, and 津郷友吉. “食品中のニトロソアミンについて.” 食品衛生学雑誌 10.2 (1969): 59-67.
  3. Gushgari, Adam J., and Rolf U. Halden. “Critical review of major sources of human exposure to N-nitrosamines.” Chemosphere 210 (2018): 1124-1136.
  4. 高屋むつ子, and 後藤美代子. “市販漬物中の亜硝酸塩とニトロソアミンについて.” 調理科学 20.1 (1987): 54-59.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です