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ニトリルと医薬品 ドラッグデザイン

ニトリルを含む医薬品・機能性分子

ニトリル(CN)は他の官能基と比べてやや珍しい官能基ですが、天然物中にも含まれています。

有名な天然物としては青梅に含まれる「アミダグリン」があります。

アミダグリンの構造式

シアノ基は医薬品や農薬、材料中にも導入されています。

ニトリルを含む医薬品

ニトリルを含む医薬品




ファーマコフォアとしてのニトリル

ニトリルを分子に導入することで以下の機能を付与することができます。

  1. 高い電子求引性
  2. 高極性
  3. コンパクトなサイズ
  4. 水素結合アクセプター
  5. 高い代謝安定性
  6. 共有結合

高い電子求引性

ニトリルはニトロ基に次ぐ高い電子求引性を持っています。

芳香環にニトリルが結合することで芳香環を電子不足にし、別の芳香環とのπ-π相互作用を強化する作用があります。

電子豊富な芳香環は酸化されやすいので酸化安定性を向上させる目的でシアノ基を導入することもあります。

電子豊富な官能基との相互作用しやすく、カルボニル基やヒドロキシル基、カルボキシル基の生物学的等価体とみなされています。

高極性

シアノ基は大きく分極した高極性官能基です。

シアノ基を導入することによって水溶性を向上することができます。

ブロモ基をシアノ基に変換することで水溶性を10倍に向上

Hunt, John T., et al. “Discovery of (R)-7-cyano-2, 3, 4, 5-tetrahydro-1-(1 H-imidazol-4-ylmethyl)-3-(phenylmethyl)-4-(2-thienylsulfonyl)-1 H-1, 4-benzodiazepine (BMS-214662), a farnesyltransferase inhibitor with potent preclinical antitumor activity.” Journal of medicinal chemistry 43.20 (2000): 3587-3595.
シアノ基は分子サイズが小さいことから、水素をシアノ基に置換することでタンパク質間相互作用を低下せずに薬物の脂溶性を調整することができるかもしれません。

水素結合アクセプター

電子求引性のシアノ基は水素結合アクセプターとして機能します。

標的タンパク質のアルギニンのグアニジノ基やセリン・スレオニンのヒドロキシ基、グルタミン酸のカルボン酸などと水素結合を形成して分子と標的タンパク質との間の相互作用を強化します。

コンパクトな分子サイズ

ニトリルは三重結合であることから直線的な構造を持ち、そのボリュームはメチル基の1/8に相当するといわれています。

Eliel, Ernest L., and Samuel H. Wilen. Stereochemistry of organic compounds. John Wiley & Sons, 1994.
立体障害の小さいニトリルは標的タンパク質のアミノ酸に対して接近しやすい利点があります。

高い代謝安定性

ニトリル基は代謝的に安定で体内に入っても容易に代謝されないことが報告されています。

Boyd, Michael J., et al. “Investigation of ketone warheads as alternatives to the nitrile for preparation of potent and selective cathepsin K inhibitors.” Bioorganic & medicinal chemistry letters 19.3 (2009): 675-679.

α位に水素を持っているようなアルキルニトリルは肝臓で代謝されて有毒なシアノヒドリンを生成します。自然界にある青酸配糖体が毒性を発揮する原因です。

共有結合型ドラッグ

シアノ基が標的タンパク質のセリンやシステインの極性基と共有結合することが報告されています。

ニトリルは可逆的なピナー反応を介して活性部位の極性アミノ酸と反応します。

De Cesco, Stephane, et al. “Covalent inhibitors design and discovery.” European Journal of Medicinal Chemistry 138 (2017): 96-114.

参考

ニトリル含有医薬品に関するレビュー

Fleming, Fraser F., et al. “Nitrile-containing pharmaceuticals: efficacious roles of the nitrile pharmacophore.” Journal of medicinal chemistry 53.22 (2010): 7902-7917.

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