水素化ホウ素リチウムLiBH4による還元

LiBH4

水素化ホウ素リチウムLiBH4とは

水素化ホウ素リチウム(LiBH4は水素化アルミニウムリチウムと比べて還元力が低く、水素化ホウ素ナトリウムよりも高いちょうど中間の還元力を示します。

LiAlH4 > LiBH4 > NaBH4 (還元力)

LiBH4はNaBH4よりも利用可能な溶媒の幅が広いです。

  • エーテル系溶媒に可溶
  • アルコール系溶媒を利用可能(少し溶媒と反応するが)

溶媒としてアルコールが利用できるのが特徴です。イソプロパノールやメタノールを利用できます。溶媒の誘電率が高くなると反応性は落ちるので反応性を溶媒でコントロールできます。(Brownらによる報告によるとCa(BH4)2では反応性は逆になるようです。)

LiBH4のプロティック溶媒中での安定性

LiBH4は水にも溶解可能で徐々に分解します。水素化物の中では水に対する安定性が高いです。

エタノール中で0℃の条件では4時間後でもほとんど分解せず、イソプロパノールでは24時間経過しても分解しないようです。

ref) Brown, H. C.; Narasimhan, S.; Choi, Y. M. JOC 1982, 47, 4702.

LiBH4は溶媒への溶解性が高い!

LiBH4の溶媒への溶解度はNaBH4やCa(BH4)2と比べると高いです。

NaBH4はジエチルエーテルやTHFにはほとんど溶解しませんが、LiBH4は溶解します。特にTHFには良く溶けます。

水素化ホウ素リチウムを用いた反応

LiBH4の官能基選択性

反応しない官能基は

  • ニトリル
  • 第三級アミド
  • カルボン酸
  • ニトロ基
  • アルケン
  • アリルハライド(Cl, OTs)

です。

反応する官能基は、

  • アルデヒド
  • ケトン
  • 酸塩化物
  • エステル
  • ラクトン
  • エポキシド

です。

エステルとの反応は遅く環流が必要

水素化ホウ素リチウムはエステルを還元しますが、反応速度は遅く、室温下では還元されにくいです。

LiBH4でラクトンやエステルを還元してアルコールを得るにはTHF中で還流条件が良いです。

室温下で速やかに還元したい場合はLiAlH4Red-Alを利用するのが良いです。

COOHとNO2は還元されない

カルボキシル基は通常還元を受けません。

また、ニトロ基も還元されにくいです。

ケトンはメチレンまで還元

ベンジル位のケトンは条件によってメチレンまで還元されます。

アルコール体を得たいときはより弱い還元剤のNaBH4を使用したほうが良いでしょう。

溶媒による反応性の調整

LiBH4の反応性は溶媒によって変化します。特に低極性の溶媒を用いた際に最も反応性が高くなります。

例えば、ジエチルエーテル>THF>イソプロパノールの順に反応性が高くなります。

添加物による反応性・選択性の変化

LiBH4は添加物を加えることによって反応性・官能基選択性などが変化するようです。

メタノール添加でエステル還元が加速

エーテル中、基質と等モルのメタノールを加えるとエステル・ラクトンが迅速(<1h)かつ高収率で得られます。

ルイス酸の添加でアミドやスルホキシドを還元可能に

ルイス酸の添加も活性を向上させることが報告されています。例えばトリメチルボレートなどがありますが特にTMSClの添加はアミド、ニトリルを還元してアミンに、スルホキシドも還元を受けます。

LiBH4の位置選択性 1,4-還元優先

LiBH4によるαβ不飽和カルボニルの還元はLiAlH4よりも1,4-還元が優先的に進行しますが選択性はあまりよくありません。

位置選択性はTi(oiPr)4などのルイス酸の添加により向上することが知られています。

LiBH4の反応条件

溶媒はジエチルエーテルが基本

LiBH4はTHF中やジエチルエーテルを溶媒として利用することが多いです。ジクロロメタンやトルエン、メタノールを添加するなどの方法も利用されています。

扱いやすいLAHの代替(要加熱)

エステルやアミドを還元するのに使えます。またケトンやアルデヒドの還元にも使います。LiAlH4よりも安全性が高いのが利点です。加熱可能ならLiBH4のほうが向いているといえます。

エステル還元の例

Skidmore, John et al Journal of Medicinal Chemistry, 57(24), 10424-10442; 2014

エステル体(59 g、164 mmol)をEtOH(200 mL)に溶かしてEt2O(900 mL)で希釈、水素化ホウ素リチウム(THF中2M、246mL、491ミリモル)を窒素下で加えて溶液を室温で2時間撹拌した。反応後MeOH(20mL)を滴下してクエンチした後、激しく攪拌した水(300mL)に混合物をゆっくり加えた。分液抽出により目的物を96%で得た。

この方法ではシアノ基やカルバメート(Boc)は反応せずにエステルだけ還元されています。室温でエステルが還元されているのはエタノールの添加によって活性化されているからだと思います。高収率でエステル選択的に還元できる例です。LAHで還元するよりも扱いやすいでしょう。

アミド(オキサゾリドン)の還元

Kumar, Vemula Praveen and Chandrasekhar, Srivari
Organic Letters, 15(14), 3610-3613; 2013

0℃の乾燥THF(15mL)アミド体(1mmol)の溶液に、エタノール(4mmol)およびLiBH4(1.2mmol)を少しずつ加えた。 0℃で1時間撹拌した後、反応混合物を室温まで温め、撹拌をさらに12時間続けた。次にNH4Cl水溶液でクエンチし、THFをエバポした。精製して目的物を74%の収率で得た。

オキサゾリドンの還元によりアルデヒド及びアルコールを得るのにLiBH4はよく利用されています。キラルアルコールを得るのに有用です。THF+エタノールを加えることで0℃下での還元が可能になっています。(THFのみなら還流)

参考

1) ニ合憲三. “混合溶媒を用いる水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムによる官能基選択的還元.” 有機合成化学協会誌 45.12 (1987): 1148-1156.
2) EROS, “Lithium Borohydirde

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