塩基としては聞き馴染みの薄いフッ化セシウム (CsF)はカチオンのセシウムもアニオンのフッ素もあまりメジャーな元素ではないのでこれが塩基かどうかも判断がつきにくいと思います。フッ化セシウムはパラジウム触媒を使ったクロスカップリング反応などでよく利用されるのでそこで目にした人も多いかもしれません。
フッ化セシウムとは?塩基性はどのくらいか?
フッ化セシウムはフッ化物アニオンの供給源として有用です。フッ化水素と水酸化セシウムとの反応によって生成します。フッ化水素は弱酸のため、強塩基の水酸化セシウムとの間にできた塩であるフッ化セシウム (CsF)は弱塩基性を示します。フッ化物アニオンは求核性が低いため、塩基として作用します。合成例としては、Knoevenagel縮合で塩基として利用されています。
フッ化セシウムの性質一覧
- 分子量: 151.9
- 化学式: CsF
- 融点 : 682℃
- 密度 : 4.115
- 溶解度 :水やアルコールに溶ける。ジオキサンには溶けない
- 性状 : 白色の粉末
- 性質 : 潮解性がある
フッ化セシウムを用いた反応例
シリルエーテルの脱保護
TMS基などのシリルエーテルはケイ素ーフッ素結合の高い親和性のため、フッ化物アニオンで脱保護できます。代表的なフッ素源であるTBAFは非常に吸湿性が高く無水条件で反応させるのは困難です。フッ化セシウムはやや吸湿性を持ちますが、TBAFほどでは無いので脱シリル化に利用できます。
炭素ーフッ素結合の形成反応
フッ化セシウムは塩化アリールとの反応によりハロゲン交換が起こってフッ化アリールの合成に利用されます。
フッ化セシウムの毒性
フッ化セシウムを酸と接触させると、フッ化水素酸(HF)を発生させるため、注意します。フッ化水素酸非常に高い毒性と腐食性を持つために注意しましょう。手などに付着すると危険です。