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カニッツァーロ反応 Cannizzaro Reactionでアルデヒドをカルボン酸とアルコールに変換

カニッツァーロ反応eye

カニッツァーロ反応はアルデヒドが塩基性条件下でアルコールとカルボン酸に分解する反応のことです。別々のアルデヒド分子間で起こるカニッツァーロ反応を交差カニッツァーロ反応と区別することもあります。

カニッツァーロ反応とは

カニッツァーロ反応はStanislao Cannizzaroによって1853年に発見されました。

Cannizzaro, St. “Ueber den der Benzoësäure entsprechenden Alkohol.” Justus Liebigs Annalen der Chemie 88.1 (1853): 129-130.

 

カニッツァーロ反応はアルデヒドに対して水酸化物イオンが攻撃してできたジェミナルジオール中間体から別のアルデヒドへのヒドリド移動によってアルコールとカルボン酸が生成します。

カニッツァーロ反応の概要

カニッツァーロ反応の概要 from wikipedia public domian

カニッツァーロ反応は有機合成上通常の方法ではアルデヒドの半分がアルコール、半分がカルボン酸となるので、収量が50:50になってしまいます。

もしもアルコール体が欲しくても半分がカルボン酸になってしまっては、有機合成ではあまり使いものになりません。

有機合成上では交差カニッツァーロ反応が利用できます。交差カニッツァーロ反応はアルデヒドを二種類使って合成します。そのうち貴重なアルデヒドAに対して、貴重ではないアルデヒドを大量に使うことで貴重なアルデヒドをアルコールに還元することが可能です。

特に反応性が高く安価なホルムアルデヒドはこの用途に最適です。

交差カニッツァーロ反応

交差カニッツァーロ反応(カルボン酸は塩基性条件なので実際は塩になる)

あらかじめホルムアルデヒド溶液に水酸化ナトリウムを作用させておいて、そこに貴重なアルデヒドを加えていく方法をとったら収率は良くなるんですかね?

カニッツァーロ反応で起こりうる副反応

α水素を持つアルデヒドではエノール化するためにアルドール反応が起こります。

α水素でアルドール縮合が起こる

α水素でアルドール縮合が起こる

アルドール反応 (aldol reaction)

カニッツァーロ反応の有用性

カニッツァーロ反応はアルデヒドと塩基だけでよいので非常に低コストで簡単にアルコールとカルボン酸塩が得られます。

しかし、アルデヒドの還元には水素化ホウ素ナトリウや酸化には亜塩素酸酸化など有用な方法がいくつもあるので精密な有機合成では使われる機会は少ないかもしれません。

水素化ホウ素ナトリウムによる還元水素化ホウ素ナトリウム (NaBH4) ケトン、アルデヒドの還元

亜塩素酸ナトリウム酸化亜塩素酸ナトリウム酸化でアルデヒドをカルボン酸に変換

カニッツァーロ反応はアルデヒドが塩基性条件下で起こしうる副反応として理解しておくと役に立つかもしれません。例えばライマーチーマン反応では芳香族アルデヒドを強塩基性水溶液中で反応させるためカニッツァーロ反応が副反応として進行する可能性があります。

ライマーチーマン反応でサリチルアルデヒドの合成

カニッツァーロ反応の展開

カニッツァーロ反応は他の有用な合成法がいくつもあるためにアルデヒドの酸化還元法としては実用性は低いですが、現在においても研究されています。

分子内カニッツァーロ反応

αケトアルデヒドは分子内にケトンとアルデヒドがあるため、カニッツァーロ反応によりアルデヒドからの還元がより速い分子内のケトンへの還元が優先して起こります。この時アルコキシドを使えばエステルになります。

分子内カニッツァーロ反応

分子内カニッツァーロ反応

参考 ティシュチェンコ反応 Tishchenko reactionでアルデヒドをエステルに変換 | ネットde科学ネットde科学

この時生じるアルコールは不斉であり、適切な触媒を利用すれば立体選択的に進行するのではないか?ということで適切なルイス酸触媒を検討した研究があります。

実際はあまり良い選択性を有する条件は見つからなかったようですがこういった研究が行われたりしています。

Russell, Albert E., Steven P. Miller, and James P. Morken. “Efficient Lewis acid catalyzed intramolecular Cannizzaro reaction.” The Journal of organic chemistry 65.24 (2000): 8381-8383.

参考 Cannizzaro reaction - Wikipedia取得できませんでした

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