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ナトリウムとベンゾフェノンで脱水溶媒を作る方法

ナトリウムの脱水、ナイフで切って量りとる方法

ナトリウムとベンゾフェノンを加えて蒸留することによって、脱水溶媒を作ることができます。ベンゾフェノンケチルによる鮮やかな青色によって状態をモニタリングできるので便利です。特にTHFなどのエーテル類の蒸留に便利です。詳しいやり方をナトリウムの秤量から乾燥までを紹介します。

ナトリウムの秤量の仕方

ナトリウムはアルカリ金属の中でも塩基として、あるいは脱水剤としてよく利用します。マグネシウムや亜鉛、鉄などは普通に電子天秤で重さを測ればよいのですが、ナトリウムは空気中で簡単に酸化、水蒸気と反応するため重さのはかり方に戸惑う人がいるかもしれません。

ナトリウムは水と激しく反応するので水との接触は厳禁です。ナトリウムが触れ合う部分・ピンセットやテーブルの上などあらゆるところの水分が完全に無いこと確認します。特に脱水のときは無駄に大きいナトリウムをたくさん使いがちですが、後処理が大変で、かつ事故が起きやすいので必要以上の量は使わないようにします。

ナトリウムを秤量する方法

  1. 鉱油中に保存されたナトリウムを乾燥させたピンセットで取り出す
  2. 濡れていないペーパータオルなどの上に置いて普通のナイフで押し切る。(すぐに酸化するので手早く行う)
  3. 脱水されたヘキサンなどの炭化水素溶媒が入ったビーカーを秤において0補正しておき、そこに切ったナトリウムをペーパーでさっと鉱油を拭いて入れて重さをはかる
  4. ナトリウムのクズは屑入れ用の鉱油が入った容器を用意して入れておく。
  5. 使用した器具類にナトリウムが無いかを確認して廃棄する。ナトリウムがついている場合はとって、イソプロパノールで溶解後、中和して処理する

表面が酸化したナトリウムの被膜の剥がし方

ナトリウムは古くなったりすると表面が酸化皮膜に覆われています。ナイフで削ぎ落とす方法もありますが、すぐに酸化されるので、トルエン中に入れて加熱すると溶解して剥がすことができます酸化皮膜が剥がれたナトリウムが使いたい時は便利です。トルエンをデカンテーションやシリンジで除去して反応に利用します。蒸留の時は加熱するので酸化皮膜はそこまで気にしなくても良いです。


エーテル類の脱水・乾燥にナトリウム、ベンゾフェノン・ケチル系をつかう!

THFやジオキサンなどのエーテル系溶媒の脱水にはナトリウム/ベンゾフェノン系が使われます。このシステムの良いところはナトリウムによってベンゾフェノンが還元されてできるベンゾフェノンケチルが鮮やかな青色をしており、この色によってある程度脱水度合いを確認できるメリットがあります。青色になっていない場合はまだ水分が多く残っている可能性があります。もう少し加熱還流しましょう。ナトリウムが残っていてまだ色が変化しない場合はベンゾフェノンが少ない可能性があります。ある程度ベンゾフェノンを追加しましょう。ただしここで注意してほしいのは、実はベンゾフェノンの青色は酸素が含まれていないことを示すのであって、水がないことを示しているのではない点です。1) ベンゾフェノンケチルの青色は、8mol%の酸素がある場合には消えますが、等モルの水を加えても消えません。ナトリウムが溶媒中で生きていれば確実に脱水が出来ていることになりますが、あくまでベンゾフェノンケチルは無酸素の指標であるという点には注意しておきましょう。また、ベンゾフェノンケチルが分解するとベンゼン、トリフェニルメタノール、フェノール、ジフェニルメタン島の副生物が出来てくるので、この辺についても留意しておく必要があります。

LAHによる脱水もよく使われますが、爆発の危険やLAH粉末が蒸留とともに飛んでくることがあることからナトリウムを使用するのがおすすめです。ナトリウムを使った溶媒の脱水はクロロホルムなどのハロゲン系溶媒には使ってはいけません!爆発の危険があります。

  • ナトリウムの量: 5g / L
  • ベンゾフェノンの量:10~15g /L

くらいが目安です。これらを加えて加熱還流します。ジオキサンは湿気を吸いやすいので、アルミナカラムやモレシ等で予備脱水をしてから脱水操作をしたほうがナトリウム使用量の削減ができます。

ベンゾフェノンケチルあるいはナトリウムの廃棄方法

ナトリウム系の化合物を廃棄する方法としては、イソプロパノールに溶解させてアルコキシドとした後に、中和して廃棄する方法が安全です。エタノールやメタノールでも代用できますが、イソプロパノールのほうが温和で安全です。ナトリウムは塊になりやすく、反応が遅いので固まりが無いかをキチンと確認しましょう。これを怠って水を加えたりすると爆発する恐れがあります。メタノールを使用するときは、ドライアイス/アセトンで冷やして-50℃以上に温度が上がらないように気をつけます。


NaH(水素化ナトリウム)の量り取り方と廃棄の方法

金属ナトリウムではありませんが、水素化物のNaH(水素化ナトリウム)も危険です。活性を落とした60%オイルディスパージョンのものが売られていますが、これもものによっては活性が高く危険です。水との接触は厳禁で、量りとるときは薬包紙ではなく、ガラス容器を使うようにします。薬包紙上では発火した例があります。また、こぼした水素化ナトリウムはティッシュ等で拭き取るとまた、発火する危険があります。また量りとる前にオイルを落としてはいけません。空気の湿気と反応するので危険です。潰し方はナトリウムと同じくイソプロパノールに加えてアルコキシドとした後に中和して廃棄します。廃棄時は少量ずつ気をつけてやりましょう。

参考文献

1) 研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ、著: Jie Jack Li、Chris Limberaks、Derek A. Pflum、訳: 上村明男、p.5-6

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