生存者バイアスとは?
生存者バイアスとは、生存者(成功者)には注意が払われるが、犠牲者(敗者)には注意が向けられない傾向のことです。
生存者バイアスの例として「とあるお守りの効果」について見ていきましょう
戦争から生還した人たちの共通点を調べたところ
お守りAをもっている人が多かったということがわかってきました。
したがって、お守りAの効果が高かったといえるでしょう。
たしかにこの結果を見るとお守りAの効果が高いと感じませんか?
しかし死亡者と生存者のデータが以下のような場合どうでしょうか?
- 死亡者
- お守りA:199万人
- お守りB:1万人
- 生存者
- お守りA:1万人
- お守りB:5000人
お守りを持った死亡者は集計されにくいため無視されがちです。
生存者数の絶対数はお守りAの方が5000人多いですが、死亡者数をみてください。
死亡者はお守りBが5000人に対してお守りAが199万人と圧倒的に多いです。
生存割合はお守りBは1/3ですが、お守りAは1/200しかいないです。
このように、生存者は記録に残りやすいですが、死亡者・失敗例などは記録されずに消えてしまい、目にする機会がなくなり無視されやすいのです。
これが生存バイアスです。
生存者バイアスは身近に!データの取得範囲に気をつけよう
記録として残っているデータ、取得しやすいデータは上記のような生存者のデータだと思います。
だからこそ、データとして残らなかった部分が無いか?を考える必要があります。
輝かしい成功者の話はためになる気がしますが、彼らはビジネスの生存者であり、その裏にはたくさんの失敗例、非成功者たちがいることに目を向けなければ間違った判断をしてしまう原因になります。
実は成功者の話よりも非成功者の失敗の原因をもとに対策を考える法が有益なこともあるので覚えておくと良いと思います。
生存者バイアスの例
生存者、成功者の数と比べて非成功者の数は多いはずです。
勝者は発言力も強く、目立ちますし、説得力もあるため、割合が少ない勝者だけのデータを重視されやすいです。そうすると判断に偏りが生じてしまう恐れがあるというのが生存バイアスです。ここでは生存者バイアスの例をいくつか紹介していきます。
飛行機の例
飛行機の例は生存者バイアスの例として最も有名なものだと思います。
第二次世界大戦時で活躍した戦闘機・軍用飛行機ですが、軍は出来るだけ敵の射撃によって撃ち落とされないようにするため、帰還した航空機の装甲で損傷が激しい部位を補強しました。
これは一見すると合理的のように見えますが、ここに生存者バイアスが隠れています。
こめやん
帰還した飛行機は打たれても大丈夫だったから帰還しているのであって墜落した飛行機の損傷部位を観察してそこを強化した方が墜落確率を減らせるかもしれないのです。
数学者のアブラハム・ウォールドは帰還した航空機の損傷部位だけ観察するのは問題があると指摘して、墜落した飛行機の損傷部位を考慮すべきだと提案しました。
要は本当に防御を固めるべき場所は撃ち落とされてしまった飛行機が被弾した箇所でそこを重点的に強化していくべきということでしょう。
残念ながら墜落した飛行機を回収して損傷部位を調べるのは難しいので、ウォールドは生存者バイアスを考慮に入れて帰還した飛行機の被弾していない部位を強化すべきだと提案しました。
こめやん
Suvivorship-bias © McGeddon(Licensed under CC BY 4.0)より引用
飛行機の例に限らず軍人の例でも同様ですね。
任務を終えて生き残った軍人が被弾した箇所が臀部や腹部が多かったからと言って、その部分を強化しても、死亡者の大半が頭をやられているのであれば、頭を最重要で守るように改良することが死亡率を下げるのには役立つはずです。
情報商材・成功メソッドの例
とある成功者が紹介する最強の起業メソッド。
成功者本人が実践してきた方法論を使えば同じように成功者になれる!
というものですが、ここにも生存者バイアスが隠されています。
会員にはこの方法を使うことによって本当に成功する人が何人もいます。
これは本物だろう!→この方法で成功している人が何人もいても、失敗している人は何千、何万人もいるかもしれません。一部の成功者だけで判断すると危険かもしれません。
起業関連では、成功者の中に大学を中退した人がいるのが強調されることがありますが、大学を中退したほうが成功しやすいというような考察は生存者バイアスがかかっています。
とある予備校の例
とある予備校では東大合格者が全生徒の3%ほどいました。
彼らの勉強のやり方には共通点があって、夜間はちゃんと寝て、休日はしっかりとっています。
このようにメリハリつければ東大合格できるから実践しましょう。
これにも生存者バイアスが関わっています。
→東大合格者以外の人たちとの差は本当にあるのかわからない。夜間は勉強などやらず、休日は勉強をサボっている人も多いのではないか?
ネコの生存率
1987年に高所(6階建て以上)から落下したネコはそれよりも低い位置から落下したネコよりも生存率が高いという報告がありました。6階建て以上にもなると落下時の空気抵抗で落下スピードが平衡に達するためであると考えられていましたが、これも生存者バイアスが働いているとされています。
なぜならば、6階建て以上から落下したネコは2階や3階から落下したネコよりも怪我をすることが多くそのほとんどが病院につれていかれますが、2,3階から落下したネコは怪我せずに病院に行かず、打ちどころの悪い重症のネコだけが連れて行かれるせいで死亡率が上がったように見えるだけだと指摘されています。
内定者から就活生へのアドバイスも生存バイアス
内定をもらった学生からの就活生へのアドバイスは生存者(内定者)が語るので説得力がありそうですが、就活生が「面接でここを突かれてうまく答えられなかったから、きちんと対応しておくと良いよ!」というようなアドバイスはまさに、「帰還した軍用機の被弾箇所」と似ています。
本当に必要とするアドバイスは内定をもらっていない人のアドバイスかもしれません。
病気の予後
重度な病気の生存率にも生存者バイアスがかかることがあります。病気が診断されてからどのくらいの年数生存したか?という調査集計は診断後すぐに死亡してしまった患者は数字に含まれないため、見かけ上の生存率が高くなります。
努力は無駄?生存者バイアスか?
成功者は輝かしい経歴や成功の裏に地道な努力が隠れていることが多いです。成功者が語る「成功するには努力が大事だ」というのは生存者バイアスなのでしょうか?
失敗した人の中にも努力をしてきた人はたくさんいます。したがって、努力すれば成功できるというのは違うのかもしれません。成功者の中にも努力をしなくても成功している人もたくさんいるのだと思います。
しかし努力しても成功はできないかもしれませんが、無駄であることはないでしょう。
何かを達成するためには努力を要する場面はあります。
こめやん
まとめ
1人の人間が収集できる情報量が限られています。また、前提、ベースとなる知識のばらつき・偏りがあります。人間の判断には様々なバイアスがかかっていることに注意を払いたいものです。
果たしてそうなのか?そうでない場合もないのか?などと疑ってかかる視点を持つことも重要です。
世の中の調査統計はバイアスにあふれています。このようなバイアスが存在していることをきちんと理解して調査されているかどうかはかなり疑問が残ります。数字はわかりやすく、説得力があるため騙されないように気を付けましょう。
参考文献
- Brown, Stephen J., et al. “Survivorship bias in performance studies.” The Review of Financial Studies 5.4 (1992): 553-580.
生存者バイアスが非常にわかりやすい内容でした。しかし、修正が必要である部分が見受けられたので、コメントさせていただきます。飛行機の例の部分で登場しているウォールド氏の提案に誤りがあり、彼は生存者バイアスを考慮した提案をしていたと思われます。
ご覧いただきありがとうございます。
ご指摘の通り誤りがありました。
逆の意味になっていたので修正しました。
何か気になる点がありましたらお知らせ下さい!