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自己中心性バイアス

自己を正しく認識するのは難しい

自分をどういう人間か?ということを正しく(客観的に)判断するのはとても難しいことです。自分に対しては様々な心理的なバイアス(偏見)がかかってしまうからです。OOな自分で有りたいという期待が自己認識を捻じ曲げてしまいます。どんな人間も自分を優秀で、正しく、美しく、強く、稀有な存在で有りたいと考えます。(他人からみた自分と自分から見た自分は一致するか?:心理学者William Jamesはこれを概念的に区分した)

自己中心性バイアスとは

自己中心性バイアス(Egocentric bias)とは、

「過去の事実(記憶)を自分の都合が良いように解釈・改変してしまう傾向のこと」です*1,2

自分の都合が良いようにというのは「理想の自分」であれば~で有りたい~だったはずというような意味です。自己中心性バイアスは古い記憶であるほど強く働きます。よく覚えていない記憶の方が容易に改変可能だからです。

例えば、過去にとったテストの点数については実際の点数よりも高く見積もる傾向があること。誰かが人前で発表している時にあいつは緊張していると、彼が実際に思っているよりも大きく見積もる傾向。中年以降のおじさんに見られる「疑わしい武勇伝」など、昔はイケてたとか、やんちゃしていたなどというように過去の記憶を盛ってしまう傾向を感じたことはありませんか?これは自分を優秀あるは強いということを示したいというような心理から過去を捻じ曲げた「自己中心性バイアス」によるものと考えられます。自己中心性バイアスは記憶の定着性とも関係があります。研究によると、経験やアイデアなどは自分のもの(自分の理想)と一致するほうがより思い出しやすくなることが知られています。テストで言えば、良い点数をとった嬉しい記憶の方が、低い点数をとった悲しい記憶よりも記憶に残りやすいです。これは良い点数が理想の自分像と一致するためだと考えられます。

*1)Ross, Michael, and Fiore Sicoly. “Egocentric biases in availability and attribution.” Journal of personality and social psychology 37.3 (1979): 322. 自己中心性バイアスの最初の報告

*2)Greenberg, Jerald. “Overcoming egocentric bias in perceived fairness through self-awareness.” Social Psychology Quarterly (1983): 152-156.

自己中心性バイアスの問題と減らすための方法

自己中心性バイアスは個人差が大きいことが知られています。物忘れが激しい人、プライドが高い人、承認欲求が強い人は自己中心性バイアスがかかりやすいです。また、男性は女性と比べて他人よりも自分の言動や行動に注意を払いやすく、自己中心性バイアスが大きいと報告されています*3。年齢に関しては青年や高齢者に多いという報告があります*4。バイリンガルの人など他の国の文化に触れたような人々は自己中心性バイアスが減少する傾向があります。これは他人の考えにもっと注意を払うようになったためであると考えられます*5

自己中心性バイアスはただその人の過去の記憶を”盛る”だけならちょっとダサいなとおもわれるくらいで済みますが、会社・学校などにおいて、集団行動を行う際には問題になることがあります。例えば、グループワーク・チームワークにおいて、「私は他の誰よりも、少なくともあの人よりも貢献した」というバイアスです。こうした不満は全うな主張であれば、むしろ組織のマネジメントにとってプラスになるかもしれませんが、これがバイアスによる不当な主張であれば、人間関係を悪化させ、チームワークを阻害してしまいます。

口癖で「私はやってるのに、OO(他人)は~しない」とか「私はOOなのに、ずるい」ということを言う人は注意が必要です。自身に対する肯定的な言動や行動を大きく評価(自己中心性バイアス)して、他人の肯定的な言動や行動は過小評価、あるいは否定的な行動を過大解釈する癖がある人かもしれません。(多くの場合、他人に対するこのような指摘の仕方は反感を買うだけで相手の行動を変化求める指摘方法としては適切ではないので、やめたほうが良い)

自分が評価者(会社においては上司、管理者にあたる)であるときにも問題になります。他人の成功を過小評価して、自分の貢献を過大評価するために、部下の仕事に対して自分の貢献度が高いというような主張をする場合があります。このような主張は人材育成の障害となり、信頼関係の崩壊、組織力の低下を招きます。

自己中心性バイアスを減らす方法としては、他のどのバイアスにも共通する方法:バイアスの存在を認知し、意識することです。過去の記憶を思い出す時にも自己中心性バイアスが生じる可能性があると意識することで軽減できます。また、自分を他人のように意識する方法も有効です。例えば、「私は~だと思う」とかではなく「網戸まなぶは~だと思う」というように、氏名あるいは名前を使用すると心理的な距離を離すことができます。自分と異なる考えに関して肯定的な意見・考えを挙げるという方法も有効です。自分という一つの視点に固執せずに、多視点を持つように意識することが重要です(これは自己中心性バイアス以外にも有効です)。意思決定プロセスを遅くする(即決しないでよく考える)。また、他人に意見を求めることも重要です。

なぜ子供のころの記憶を思い出せないか?

なぜ小さい頃の記憶は思い出しにくいのか?それは単にはるか昔のことだからと言われればそれまでですが、心理学的な立場からみた脳の記憶方法を考えると面白いことが分かります。心理学的に脳は自分が記憶したいものを記憶しやすいという自己中心的な方法で記憶が行われていると考えられます。自己の感覚、自己像がはっきりしない幼児期では記憶の選別ができず、思い出すのがより難しいとも解釈できるかもしれません*6

 

*3) Tanaka, Ken’ichiro. “Egocentric bias in perceived fairness: Is it observed in Japan?.” Social Justice Research 6.3 (1993): 273-285.

*4)Riva, Frederica; Triscoli, Chantal; Lamm, Claus; Carnaghi, Andrea; Silani, Giorgia (April 26, 2016). “Emotional Egocentricity Bias Across the Life-Span”. Frontiers in Aging Neuroscience. 8 (74)

*5) Rubio-Fernández, Paula; Glucksberg, Sam (2012-01-01). “Reasoning about other people’s beliefs: Bilinguals have an advantage”. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. 38 (1): 211–217.

*6) Goleman, Daniel (1984-06-12). “A bias puts self at center of everything”. The New York Times.

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