化学

ウォルフ・キシュナー還元: Wolff-Kishner Reduction

ウォルフ・キシュナー還元について

アルデヒドおよびケトンから対応するヒドラソンまたはセミカルバゾンを経由し、塩基性条件で炭化水素へ変換する脱酸素化はWolff-Kishner還元(W-K還元)として知られています。この反応の報告以来、反応条件をより温和に、また収率を改善するため大いに改良されています。標準的な方法としては長い間、カルボニル化合物を100%ヒドラジンと高沸点溶媒(エチレン-またはトリエチレングリコールなど)中、過剰の塩基(金属ナトリウム、ナトリウムエトキシドなど)の存在下で混合し、反応混合物を2、3日間還流条件で行います。その際の主要な問題は、ヒドラゾンの生成時に生じる水が反応温度を下げてしまうことで、そのため長い反応時間を必要とし、過剰の反応剤と溶媒も必要でした。Huang-Milon改良法ではいったんヒドラゾンが系内で生成すると水と過剰のヒドラジンが蒸留により除かれるので、反応温度を約200℃に上昇でき、反応時間が劇的に短縮されて収率も増加しました。また水に可溶な塩基(水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム)と、より安価なヒドラジン水和物が使用できるようになりました。

ウォルフ・キシュナー還元の特徴

還元は通常、高沸点溶媒中(約180-200℃)で行われます。この際に封管する必要はありません。塩基に敏感な基質はヒドラゾンをあらかじめ調製し、低い温度で塩基を加え、続いて反応混合物を還流することで良好な収率が得られます。エステル、ラクトン、アミドおよびラクタムはこの反応条件で加水分解されます。立体障害のあるカルボニル化合物は立体障害のないものよりゆっくり脱酸素化されるため、より高い反応温度が必要になります(Barton改良法)。カリウムt-ブトキシドを含む反応系として、グリコールの代わりにDMSOを使用し、あらかじめ調製したヒドラゾンをゆっくり加えることにより還元を室温で行えます(Cram改良法)。小規模ではこの方法は不便で、結果は基質に強く依存します。あらかじめ調製したヒドラゾンは、還元を効果的に行うためトルエン中でカリウムt-ブトキシドと混ぜ、還流(約110℃)することもできます(Henbest改良法)。α、β-不飽和カルボニル化合物の場合、ヒドラジンは反応してピラゾリンを与えやすいため、あらかじめ調製したセミカルバゾンの使用するのがお勧めです。セミカルバゾンはもともとの条件、あるいはほとんどの改良法の条件で還元されます。ある種の芳香族カルボニル化合物(例、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒド)は還元に強塩基の使用が必要でなく、過剰のヒドラジン水和物と熱すると還元されます。 ウォルフ・キシュナー還元の強力な別法はトシルヒドラゾンをヒドリド反応剤で処理して、対応するアルカンを得る方法です。(Caglioti反応)。

ウォルフ・キシュナー還元の副反応

アジンの生成、反応がうまく進まないときの基質のケトンからアルコールへの還元、二重結合の異性化(とくにα、β-不飽和カルボニル化合物の場合)、アルケンを与えるα-ヘテロ原子置換基の脱離(Kishner-Leonard脱離)、カルボニル基に隣接する歪みのある環の開裂あるいは転位などが副反応として挙げられます。

反応の歴史

1911年、N. Kishnerは、熱した水酸化カリウムと白金の多孔質板の混合物にヒドラゾンを滴下すると、対応する炭化水素が生成することを報告しました。1年後、L. Wolffは独立にセミカルバゾンとヒドラゾンのエタノール溶液をナトリウムエトキシドの存在下、封管中で約180℃に熱すると同じ結果が得られることを示しました。

反応機構

反応の律速段階は炭素末端のプロトンの捕捉です。この過程は、溶媒の窒素末端でのプロトンの引き抜きによりジイミドが生成し、それが窒素の脱離を伴いながら協奏的に起こります。

実験手順

 

 

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えぬてぃー
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専門: 有機化学

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