化学

ウォルフ転位: Wolff Rearrangement

ウォルフ転位について

α-ジアゾケトンからケテンおよびケテンから誘導される生成物への変換はWolff転位として知られています。

α-ジアゾケトンの合成法

エーテルまたはジクロロメタン溶液中、室温あるいは低温で酸塩化物または酸無水物と2当量のジアゾメタンとの反応(Arndt-Eistertホモログ化)でα―ジアゾケトンを合成することができます。しかし、高級ジアゾアルカンの場合、1当量のジアゾメタンが必要であり、競合するアゾカップリングのため低い温度が必要となります。N-アシル-α-アミノケトン(Dakin-West反応により調製)をメタノール中、三酸化二窒素、続いてナトリウムメトキシドで処理する方法でも、第二級のα-ジアゾケトンが合成できます。この方法を使うことで、高級ジアゾアルカンの使用を避けられます。塩基の存在中で有機アジド(例トシルアジド)から活性メチレン基をもつ基質(例、β-ケトエステルまたはβーケトニトリル)へのジアゾ基を転位させる手法もあります(Regitzジアゾ移動)。簡単なジアゾモノケトンは、ケトンからClaisen反応によるα位へのホルミル基の導入、ついで生じたαホルミル誘導体をトシルアジドと第三級アミンで処理することで合成できます(脱ホルミルジアゾ移動)。α-ケトオキシムのクロラミンによる酸化や水酸化物イオンによるトシルヒドラゾンの分解でも合成できます。

ウォルフ転位の特徴

反応は熱、光、あるいは遷移金属触媒により開始させます。基質は分解する可能性があり、副反応が起こる(例、転位を伴わないジアゾ基の直接置換反応)ため、熱的条件はそれほど頻繁には用いられません。遷移金属錯体の使用は熱的な反応に比べ、必要な反応温度をかなり低くできるばかりではなく、より反応性の低い金属カルベン錯体(Rh-およびPd-錯体は一般にWolff転位を防ぐ)の形成によりαーケトカルベン中間体の反応性を変化させます。調製した酸化銀(I)あるいは安息香酸銀(1)が反応に最も適しています。光による活性化も有用で、低温でも進行しますが生成物が光に敏感な場合は問題となります。転位基が立体中心を含む場合、立体配置は完全に保持されその立体化学は転位後も変化しません。生成物のケテンは求電子性で、アルケンとの[2+2]環化付加反応をはじめ各種の求核剤と反応します。環状のジアゾケトンは環縮小するため、歪んだ環状系を合成するのに適しています。α、β-不飽和ジアゾケトンはビニログWolff転位を受け、骨格が転位した7.0-不飽和エステルを与えます(あるいはClaisen型転位)。α-ジアゾケトンは非常に活性な化合物なので、多くの副反応が可能であり、それらは注意深く反応条件を選ぶことが重要です。

反応の歴史

1902年、L.Wolffはα-ジアゾケトンの化学を研究し、ジアゾアセトフェノンを酸化銀と水で処理すると転位してフェニル酢酸が生成することを見いだしました。反応系がアンモニア水溶液を含んでいると、フェニルアセトアミドが生成することも発見しました。2、3年後にG. Schroterは独自の研究で同様の発見を報告しましたが、α-ジアゾケトンを調製する一般的な方法がなかったため、その後30年間研究されないままでした。今日ではカルボン酸誘導体からα-ジアゾケトンを介して炭素を増やす反応(増炭反応)として有用であるため種々合成に用いられています(Arndt-Eistert Synthesis)。

反応機構

 

実験手順

 

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えぬてぃー
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専門: 有機化学

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