化学

ピニック酸化: Pinnick Oxidation

ピニック酸化について

種々のアルデヒドに対して、次亜塩素酸ナトリウムと除去剤(スカベンジャー)を加えて対応するカルボン酸に酸化する反応はPinnick酸化と呼ばれています。

ピニック酸化の特徴

除去剤としては2-メチル-2-ブテンが最も一般的ですが、大過剰用いること、沸点が低いので蓋を開ける前に容器を冷やす必要などの工夫が重要となります。pH値を一定に保つために、数当量のNaH2PO4を用いるのが良いです。基質の純度が低いと酸化が数%の転化率で止まってしまう場合があります。2-メチル-2-ブテンを除去剤として用いた場合には二重結合はまったくクロロ化されませんが、H、O2のような他の除去剤を用いた場合には共役していない二重結合は反応してしまうことがあります。アルデヒドのα位の不斉中心は保持されます。官能基選択性は高く、ヒドロキシ基は酸化されないので、保護する必要はありません。

反応の歴史

1970年代の初めまでに知られていたほとんどのアルデヒドからカルボン酸に変換する反応は、高価な反応剤あるいは面倒な反応条件を必要とし、官能基選択性も低い点が課題となっていました。1973年にB. O. Lindgrenが、バニリンのバニリン酸への酸化に、安価な亜塩素酸ナトリウム(NaClOJと次亜塩素酸(HClO)に対するスルファミン酸やレゾルシノールなどの除去剤との組合せを用いることで、初めて温和な酸化反応を実現しました。しかしながら、次亜塩素酸は酸化の過程で生じる副生成物であり、NaCIO2を消費して二酸化塩素(ClO2)を生じたり、炭素-炭素二重結合と反応するといった副反応の原因になってしまいます。その数年後G. A. Krausらは、脂肪族およびα、β-不飽和アルデヒドの緩衝溶液中での酸化において、2-メチル-2-ブテンを除去剤として初めて用いました。そして1981年、H. W. PinnickitはNaCIO2 / 2-メチル-2-ブテンの組み合わせがさまざまなα、β-不飽和アルデヒドを二重結合になんら影響与えずに酸化する優れた系であることを明らかにしました。

反応機構

 

実験操作

アルデヒドと大過剰の除去剤をt-ブチルアルコールに溶かし、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)緩衝液とNaCIO2の混合水溶液を室温で滴下するのが、典型的な実験手順になります。通常1当量を少し超える程度のNaCIO2が必要ですが、この溶液は反応の直前に水あるいはリン酸緩衝液に溶かして調製するのがベターです。直前に調整することで、光の照射あるいはFe2+、Fe3+錯体などの不純物の混入による分解を避けることができます。遷移金属存在下、NaCIO2の酸溶液は不安定なので、酸化剤の添加に金属のシリンジよりもパスツールピペットが適しています。2-メチル-2-ブテンは、90%程度の純度のものではなく、純品あるいは2MのTHF溶液を用いるのが良いです。

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えぬてぃー
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専門: 有機化学

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