MEM基(メトキシエトキシメチル基)とは
MEM基はアセタール系の保護基でアルコールの保護に用います。MOM基と構造だけでなく性質も似ています。MOM基と同様に塩基性条件、求核剤、還元条件に耐えますが、MOM基よりもルイス酸に対して脱保護されやすいです。MEM基は酸素原子が増えていることもあり、よりルイス酸に対して配位しやすいためです。
MOM基と共通するところが多いのでMOM基の記事も参考にしてください。https://netdekagaku.com/mom-protection/
特徴・利点
MEM基の利点や特徴は
- 酸性条件にある程度耐える
- キレーション効果が高い
- MOM基よりもルイス酸によって脱保護されやすい
などが挙げられます。MEM基は触媒量のトシル酸や酢酸水溶液などに耐えます。
反応機構
反応機構ー保護
MOM保護と同様にアルコキシドが攻撃して保護が完了します。
反応機構ー脱保護
酸によるプロトン化が原動力となりアルコールが生成します。
反応条件-保護
MEM保護はアルコールと塩基としてDIEAあるいはNaHを用いてMEM-Clと反応させる方法が一般的です。
保護条件例1
アルコール体(1.24 g, 10 mmol), DIEA(1.5 eq, 15 mmol) のジクロロメタン(20mL)溶液に4-DMAP(0.082 mmol)を加え、MEM-Cl(15 mmol)を室温で滴下し、12時間撹拌した。混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:AcOEt 7:3)で精製した。収率93%。Palama, Ilaria et al. JACS, 2011, 133, 17785. より引用。
脱保護反応例
MEM基の脱保護はMOM基と同様に酸を用いた脱保護(p-TsOH, PPTS, TFA/DCM, TMSCl/NaI, CeCl3)により行います。
反応例1
ジクロロメタン(1.5ml)、MEM保護体(52.3mg,0.122mmol)の溶液に0℃, Ar雰囲気化でトリフルオロ酢酸(1.5ml)を加えた。室温で24時間連続撹拌した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc(1:1))をにより精製し、脱保護体を得た。収率86%。Matsuya, Yuji et al. J. Org. Chem., 2003, 5, 2941.より引用。
注意事項ーTips
- MEM基はTBS基やt-ブチルエステルよりTFA中における脱保護が遅いため、区別して脱保護できる。
- MEMClはMOMClよりも高価
- 酸に不安定な基質のMEM保護には、MEMNEt3Cl/MeCNを用いると良い。
- MOM基よりもMEM基のほうが入りやすい
- MEM基のルイス酸の配位は以下のようになる
参考まとめ
Wuts, Peter G. M.. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis Forth edition(p.49). Wiley.