せっけんはパーム油やオリーブ油などの油脂と水酸化ナトリウムなどの強塩基から作られる物質です。けん化の原理とけん化価について専門的にできるだけわかりやすく解説します。
けん化の基本!せっけんって何?
せっけんはココナッツオイルやオリーブオイルなどの油から作られています。
せっけんの正体はほぼこれらの油といっても過言ではないです。
ココナッツオイルの成分の一つである「ラウリン酸」という化学物質は油脂の代表的な成分です。
ラウリン酸は名前の通り、酸性を示します。意外に思われるかもしれませんが、お酢の酸味成分である「酢酸」と同じ仲間です。
酸はアルカリ性成分と中和反応して塩をつくります。この塩が「せっけん」の正体です。
石鹸は別の呼び方をすると「界面活性剤」です。界面活性剤は台所洗剤に含まれているものですね。界面活性剤は水にも油にも溶けることから、油を浮き上がらせて水に流せるようにする働きがあります。石鹸も同様の作用があります。石鹸は塩の部分は水に良く溶け、炭素鎖の部分は油に溶けやすいためこのような効果があります。
けん化は油脂のアルカリ加水分解でできる
最近は自作でせっけんを作る方も多いようで、けん化価について分かりやすく教えてくださいという声が多いです。
けん化価は一言でいえば
けん化価とは1gの油脂をけん化するのに必要な水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのmg数のことです。
けん化価を理解するにはせっけんとは何か?石鹸の仕組みを知っておくと役立つのでまずその説明をします。それよりもまず具体的な計算などを知りたい場合は読み飛ばしてください(→こちら)
けん化とは油脂を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの強アルカリで分解する反応のことです。
多くの油脂はアシルグリセロールと言って、エステルの形をしています。
このアシルグリセロールを水酸化ナトリウムなどのアルカリで分解するとカルボン酸とアルコールに分解されます。カルボン酸は酸性の物質なので、塩基の水酸化ナトリウムと反応してカルボン酸塩(せっけん)になります。これがけん化です。けん化の原理を次に詳しく見ていきます。
けん化の原理
エステル類は塩基で分解されます。
NaOHの水酸化物イオン(HO-)がカルボン酸のC=O結合に結合して、エステルの加水分解が起きます。最初はアルコールがアルコキシドイオン(RO-Na+)になりますが、酸性のカルボン酸(COOH)がアルカリ性のアルコキシドと反応してカルボン酸塩(COO-Na+)となります。
このカルボン酸塩が石鹸です。
石鹸(カルボン酸塩)の炭素の部分が油に溶けやすく、塩のイオンの部分が水に溶けやすい特徴をもっているので、水にも油にもとけます。そのため、石鹸を使うと水に溶けない油を洗い流すことができます。
けん化価とは?
けん化価とは1gの油脂をけん化するのに必要な水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのmg数のことです。
ケン化は油脂の種類によって少し変わりますが、パルミチン酸のように脂肪酸の状態かアシルグリセロール(エステル)の状態なのかによって計算が変わります。
理論上、1つのエステルに対して水酸化ナトリウム1分子でけん化します。
油脂1分子にはエステルが3つあるので水酸化ナトリウムは3分子必要です。水酸化ナトリウム3分子から石鹸の正体であるカルボン酸塩が3つ生成します。
比率は油脂1に対して水酸化ナトリウムが3→1:3ということが分かりましたが、それでは、油脂1gに対して水酸化ナトリウムは3gで良いのか?というとそういうわけではありません。なぜなら、水酸化ナトリウムの1分子のグラム数と油脂1分子のグラム数は分子の大きさが全く違うからです。
このあたりの話は化学の基礎である物質量、モル質量を知っておくとわかりやすいです。高校化学の範囲なので気になるかたは以下の記事を確認してください
モル (mol)・物質量とは?意味や計算を図解でわかりやすく解説!
つまりgで比べるのではなくモル質量の比で比べなければなりません。
水酸化ナトリウムのモル質量は40g / molです。 (1molあたり40g)
油脂は1molあたり807.3gとします。(モル質量は分子の構造によって変化します。)
水酸化ナトリウムは3分子必要なので、3*40=120gとなります。
したがって油脂1mol, 807.3gをけん化するのに120gの水酸化ナトリウムが必要です。
けん化価は、油脂1gあたりの水酸化ナトリウムの量なので
120/807.3=0.1486g → 148.6mgとなります。
この数式をまとめると
(3×(塩基の分子量) / 油脂の分子量)×1000= けん化価
となります。