ゴールドバーグアミノ化でアリールアミンを合成する
ゴールドバーグアミノ化については芳香族ハライドからアニリンを合成する手法として前に記事で取り上げました。このゴールドバーグアミノ化ではアニリンだけでなく、芳香族アミンを求核剤として用いることで第二級、三級芳香族アミンを合成することもできます。今回は芳香族アミンを用いたジアリールアミンの合成について紹介します。
芳香族ブロモ基を直接アミノ基に変換する便利な反応: ゴールドバーグアミノ化(Goldberg amination)
ジアリールアミンの合成法とは
芳香族アミンは染料あるいは医薬品中間体として広く利用されている化合物なので、これまでに様々な合成法が模索されています。その元となったのは芳香族ハロゲン化物とフェノールを銅触媒下で反応させるウルマンエーテル合成です。そしてフェノールの代わりに芳香族アミンを用いた方法がゴールドバーグアミノ化です。https://netdekagaku.com/ullmann-ether-synthesis/
芳香族アミン(ジアリールアミン)を合成する方法としては、
- ゴールドバーグアミノ化 (ウルマン反応)
- バックワルド・ハートウィグアミノ化
- 芳香族求核置換反応 (SNAr反応)
などがあります。芳香族求核置換反応を利用する場合は、ハロゲン化アリールがニトロやシアノ基等の電子求引性基と好ましくはF,あるいはClを持つものに限られるという制限があります。バックワルド・ハートウィグアミノ化は強力な方法で、ゴールドバーグアミノ化では合成困難なアミン類も合成可能ですが、高価で扱いにくい金属触媒や配位子が必要であるという欠点があります。
ゴールドバーグアミノ化の特徴
ゴールドバーグアミノ化は安価かつ比較的安定な銅触媒を用いて反応を行える点が利点です。
ゴールドバーグアミノ化の欠点はウルマン反応と同様に高温・長時間反応が必要であることから、原料の熱分解、酸化、多量化反応が起こる可能性があることです。(副生性物が生じる場合、精製が厄介になることが多い)
ゴールドバーグアミノ化の反応条件
古典的なゴールドバーグアミノ化反応は、銅粉や一価、二価の銅塩、強塩基、高沸点な高極性溶媒を用いて200℃近くの温度で長時間還流させる方法ですがこの方法は収率が低く、副生物も多くなる傾向があるためこのまま用いることは少ないです。
基質について (アリールハライド:ArX)
ゴールドバーグアミノ化の基質はアリールクロライドが最も反応性が低く、できればヨウ素体を用いるのが良いです。
ゴールドバーグアミノ化に適さない基質は電子豊富あるいは立体障害のあるアリールハライドです。
配位子
バックワルドらの報告では、配位子を用いることで銅の使用量を抑え、収率が向上することがわかっています。配位子としては、フェナントロリン、2,2′-ビピリジン、8-ヒドロキシキノリン、dppp等の二座配位子が有効です。がすべて同等の結果で達成するために使用できる。 CuI / 配位子、t-BuOK、PhMe、115°C系におけるヨウ化アリールによるアニリンのアリール化が報告されています(A.A. Kelkar, et al. Tetrahedron Lett., 2002, 43, 7143)。
CHEM. COMMUN., 2003, 2460–2461
ウルマン反応(特にビフェニル合成)は、高温・長時間条件を要し、かつ収率が悪いため、現在はより効率的なPdが使われている。ビアリールエーテル、アミン、スルフィドの合成においては改良法などが考案され今日でも利用されている。
反応機構はパラジウムと類似した経路だと考えられているが、詳しくはわかっていない。銅による一電子還元機構も考えられる
Tips
・溶媒としてテルピノレン(テルペン類の溶媒)を用いると副反応が抑制されるという特許報告がある。
タイトル: | 特許公報(B2)_アリールアミンの製造方法 |
出願番号: | 1997318401 |
・アリールハライドの代わりにアリールボロン酸を用いる改良法もあるが、原料調達が難しいという欠点がある。