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化学実験を安全に!初めての化学実験

安全な化学実験

化学実験を安全に行うために

新学期になれば、高校、大学、会社等で初めての実験を行う機会も有ると思います。特に化学実験は鋭利なモノによる切創酸やアルカリによるやけど発火爆発、有毒ガスによる窒息・中毒等様々な事故が起こりやすいです。このように聞くと初めての化学実験では不安に思うことも有ると思いますが、一般的な注意を守っていれば、怪我をすることはめったにありません。人によりますが、化学反応を自らの手でコントロールして新しい物質を作ったり、分析したりするのはとてもおもしろいものです。予想外の結果が得られてもそれが何故起こったか考えたりするのもまた楽しいものです。しかし、「予想外」は実験結果だけでなく、事故にも起こりえます。基本的な注意点と「なぜ」そうする必要があるか?ということをきちんと頭の中で整理しておいて安全に実験を行いましょう。


化学実験を安全に行うために必要なもの

安全に化学実験のためには以下のような準備が必要です。

  • 基本的な安全知識の整理・理解し、具体的なケースを想定できるようにする
  • 安全な実験を行うために必要な機材の準備
  • その日やる実験の流れを含めて理解しておく
  • 体調をととのえる

安全に関する知識は頭で理解しているだけでは不十分です。具体的なケースをイメージできるようにしておく必要があります。実習では「予習してきてください」と言われると思いますが、これも安全な実験のために必要なことです。次にどんな操作を行うか?加熱撹拌するとどんな色に変化するか?などといった状況を頭に入れておくことによって、無駄に慌てたりすることがなくなり、実験に集中できるからです。最後に体調を整えるのも重要です。実習は休むことが許されないことが多いですが、体調が悪い状態では、注意が散漫になりやすく、事故が起きやすくなります。無理はしないようにしましょう。班員や周囲の人にその旨を伝えておきましょう。

安全な化学実験を行う上で必要な知識とは?

化学実験を行う上で必要な知識をここで全て紹介することはできません。実験内容によって千差万別だからです。同じ種類の反応であっても、反応のスケール(mgかkgか?)によっても変化します。重要なことは大きな事故が起きやすい例(死亡事故等)は限られているので、その事案を押さえておきましょう。自分がこれからやる実験がそれに当てはまるかどうかを知ることが重要です。

  • どんな反応か(名前や反応の種類等)?
  • どんな機材を使用するか?
  • 使用する化合物の性質(毒性や爆発性、自然発火性等)は何か?
  • 予想される生成物(副生成物)の性質(毒性や爆発性、自然発火性等)は何か?
  • 過去に重大な事故が発生した例はあるか?

反応をやるまえに上記の項目を確かめておきましょう。まずはどんな化学反応を行うかを調べます。その反応や分析の一般的な方法を調べて(他の事例)注意事項などを確認します。例えば有名な銀橋反応では「爆発性の雷銀が生成する可能性がある。」など有名なものであれば注意事項が出て着やすいです。溶媒を沸騰させる必要がある反応ではやけどや引火の危険があるとか、突沸に注意などいろいろな情報がでてきます。googleで検索するだけでも意味があります。

次にどんな機材を使用するか?を確かめることも重要です。一般的なものであれば良いですが、特殊な器具を使う場合はその器具特有の危険性があるかもしれません、身近な例では枝付きフラスコなどは折れて怪我をしやすいです。


安全な実験を行うために必要な機材とは?

化学実験では準備すべき機材がいくつかあります。

  1. 白衣
  2. 防護メガネ
  3. マスク
  4. ゴム手袋

基本的なものは上記の4種類です。

白衣は実験用の白衣を購入しましょう。実験用は引火しても燃え広がらないような材質になっていて、薬品耐性もあります。白色なのも理由があって、新品であれば、どこに薬品がついたかひと目でわかります。

防護メガネは実験中は必ず着用するようにしましょう。特に、コンタクトレンズを使用している人は薬品が目に入るとレンズがはずれなくなってしまったりするので必ず着用します。メガネをかけている人も馴れないうちは防護メガネをメガネの上からかけましょう。メガネをかけていてもかけやすいものもあります。防護メガネをつけなければならないのは、目が大切だからという理由はもちろんですが、怪我をしやすい部分であるというのも理由の一つです。化学実験では目を近づけて観察したりするので実験器具との距離が近くなりがちです。手についてもどうってことない薬品も目に入れば激しい痛みや潰瘍、失明等の怪我を負う危険があります。ですから必ず着用しましょう。より防護性の高いゴーグル型のものもあります。実験の種類によって使い分けましょう。

こめやん

実際に化学実験で失明した人が私の周りにいます。他人事ではないですよ!

マスクシリカゲルの粉など肺に入ると有害な粉塵などから身を守るために必要です。活性炭フィルターなどがあるマスクであれば多少は揮発性の有害物質を減らしてくれるかもしれません。顔面に対する保護にも使えます。破裂、突沸などの危険があるものはきちんとした防護面やシールドが必要です。

手袋は実はあまり意味がないことが多いですが無いよりはマシです。なぜかというと、多くの溶媒、有機化合物は手袋を貫通してくるからです。さらに、手袋をしていると液体が手についたかどうかがわかりにくく、薬品に触れた手でさまざまな器具を汚染する危険があります。有名な事故としては、有機水銀が手袋をした手に付着して、その後死亡した例があります。希酸・アルカリ水溶液などは多くの場合耐えるので手袋は着用しましょう。手袋をしていても、手につけないという心がけが重要です。材質によって耐えられる溶媒が異なります。天然ゴムやポリエチレン、ニトリルゴムなどがあります。

その他の設備の確認

  • ドラフトチャンバー
  • 防爆シールド
  • 消化器・消火栓
  • 緊急用シャワー

ドラフトは安全な化学実験を行うのに必要な基本的な設備です。ドラフト内部の空気を廃棄することで、ドラフトから外(部屋側)に有害なガスが逃げないようになっています。排気システムが稼働しているかを確認して、電源が入っていないときには使っていはいけません。電源が入っていれば、排気音がするのでわかります。ティッシュペーパーなどを開口部にぶら下げれば吸引しているかがわかります。開口部は指定された範囲以上には開かないようにします。大体顔一個分(30cm)くらいです。

防爆シールドはプラスチック製の透明の板です。爆発(暴走)しそうな実験をやるときに立てて置くと安全です。学生実験などでは使用するような実験はやらないと思いますが、研究室では使うかもしれません。

消化器は、部屋に一つは設置してあるはずです。位置を確認しましょう。消化器にもいくつか種類があり、水噴射タイプの消化器の場合は、水と反応する化学物質(ナトリウムやLAH、tert-ブチルリチウムなど)が原因で火が出た場合には使用してはいけません。単純に周りに引火したときには使えるので、場所は把握しておきましょう。消火栓など消火設備はどこにあるかを把握してすぐに通報できるようにしておきます。

緊急用シャワーは身体に酸を浴びてしまったなど、全身に薬品がかかった時に使います。出番はない方がよいですが、位置などは確認しておきましょう。

実験の事故を予防する方法

実験室での注意事項

  1. 飲食をしない
  2. 走ったり、飛び跳ねたり、激しい動きをしない→人にぶつかってお互いに怪我をする
  3. 動きやすい服装を心がける → ヒールなど靴、ダウンなどを着てやらない。白衣を着る

実験中での注意

  1. 扱ったことのない化学物質の場合はその基本的な性質について必ず把握しておく。→ 特に毒性(ガス?発がん?)、禁水性、爆発性、光分解性、反応性等、特定の化学物質は有る化学物質にふれると爆発的に反応したりする場合がある。SDSシートを活用しましょう。不安がある場合は周囲の人(先輩や先生)に相談する。むやみに危険な試薬を扱わない。
  2. 放置しない。→実習では一日またぐ実験(overnight)はしませんが、研究室ではやります。反応がなかなか終わらないからと言ってずっと放置してしまうと、思わぬ事故が起きます(還流なら水漏れや蒸発乾固して爆発、過加熱など、)。単純に邪魔なので反応はきちっと管理します。特に反応に変化があるうちはずっとそれを監視しておく必要がありますし、安定するまでは、長く席を外すことなどはないようにしましょう。
  3. クエンチは慎重に行う。特に大スケールのときは反応をかける時も! 実験で危ないのは試薬に由来することが多いです。クエンチは反応性の高い試薬が反応後残存している場合にそれを安全な形に処理する作業のことです。強酸性のものであれば中和して中性にしたり、禁水性の激しく反応するものでは、水よりも反応性の低いイソプロパノールやエタノールなどとゆっくり反応させてから処理したりします。大スケール(数グラムーkg)では事故が起こりやすくなります。反応も暴走しやすいために、発熱反応の場合は冷却してゆっくり反応を行うようにしましょう。
  4. 破損した器具は使用しない→特にガラス器具は長年使っていると(長年でなくとも)ヒビが入ったりかけたりします。大抵の場合、問題なく使えてしまいますが、これが原因で割れたり破裂して思わぬ事故がおきます。使えるものを捨ててしまうのは勿体ないかもしれませんが、使わないようにしましょう。どうしても使用したい、せざるを得ない場合でも危険な反応などには使用してはいけません。経験のある人に相談しましょう。
  5. 危険な反応は周囲に周知する。→シアン化水素ガスや一酸化炭素ガスなど、致死性のガスを取り扱う時は実験内容を周囲の人に伝えておかなければなりません。人がいない時も誰でもわかる掲示をして、誰かがドラフト内を覗くことがないようにします。臭いがするときも同様です。異様な臭いがするだけで騒ぎになることがあります。異常な事態ではないことを知らせておきます。場合によっては周囲の部屋の人にも伝えておきましょう。

よくある事故特集

分液ロートから噴出する

酸性の有機層を中和するために炭酸水素ナトリウム水溶液等の炭酸塩水を加えて分液ロート振った際に発生した炭酸ガスによって内圧が上昇して内容液が吹き出す。

対策: ガスが発生したり、エーテルのように揮発性が高いものを分液する必要があるときは特にいきなり振らないで、一度上下逆さまにした時に開放してガスを抜き、緩やかに内容液を揺り動かすようにして混ぜた後すぐにまた開放して様子を見るようにする。ガスの発生が少ない場合は徐々に振る強さを強くしていく。

分液ロートの使い方分液・抽出操作のやり方!原理やコツ

ゴム栓にガラス器具を挿入したら折れて手に刺さる

ガラス管は中空のためもろく、折れやすいです。枝付きフラスコなども同様ですが、そのようなガラス管をゴム栓やコルク栓に突き刺す際は短めに付け根をもって突き刺し、手袋や布などをあてがうなど注意してやります。ガラスや穴に水や溶媒をつけてからやるとスムーズに入りやすいです。パスツールピペットなどは脆いガラスなので折れやすいです。

パラジウム炭素で火が出る

水素を吸着したパラジウムは空気中に放置すると火がでます。活性にもよりますが、フラスコ内を不活性ガス置換してパラジウム炭素を加えないと空気中で火がでることもあります。ろ過除去したろ紙を放置しておいたりそのままゴミ箱に入れないようにしましょう。水に湿らして重金属回収に回しましょう。

廃液が噴出する

反応性の高い試薬を不活性な状態にしないでそのまま廃液に加えたりすると危険です。必ずクエンチしてから加えましょう。反応性の高い試薬は大抵水に弱いものが多いです。禁水性と書かれている試薬や低温保存、不活性ガス置換されているものなどは何らかの処理をしてから捨てたほうが良いでしょう。

固着したスリ栓を無理やり剥がそうとして怪我をする

スリ栓は熱を加えたり塩基を使用したりするとよく固着します。無理やり力を加えるよりも振動を与えたりしたほうが早く安全に外すことができます。コツがあるので実験に慣れているひとのやり方を一度みてみましょう。

分液ロートのスリの外し方固着したガラス栓スリを簡単に外す方法!

発火性物質が発火した!

自然発火性のもの、反応性の高いものは空気中で発火したりします。黄リン、ジボラン、グリニャール試薬、有機リチウム試薬、金属粉末などは発火する可能性があります。不活性雰囲気下で取り扱いましょう。

衝撃を与えたら爆発した!

過酸化物などの爆発性の物質は衝撃を与えることによって爆発することがあります。これらは高濃度、加熱、金属スパーテルや先の割れたガラスピペットなどでつついたりすると爆発することがあります。潜在的に爆発的に反応する可能性があるものとして、過酸化水素や過酢酸、ヒドラジン、デスマーチン試薬(超原子価ヨウ素化合物)、ニトロ化合物(ニトログリセリン)、硝酸塩類(雷銀など)

LAHの後処理

LAH(水素化リチウムアルミニウム)は強力な還元剤ですが、水と激しく反応するため残ったLAHをそのまま分液ロートに入れて水を加えてしまうと噴水のように溢れ出る危険があります。LAHは氷冷しながら水を滴下して加えてクエンチします。この時酒石酸カリウムナトリウムを利用すると不溶性の沈殿が生じにくくなります。[blogcard url=”https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E5%8C%96%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0″][blogcard url=”https://ameblo.jp/zico1113/entry-10220144553.html”]
[blogcard url=”https://blogs.yahoo.co.jp/deebsky2009/18162263.html”]
[blogcard url=”https://www.chem-station.com/odos/2010/05/-lithium-alminum-hydride-lah.html”]

オイルバスに水が入って飛び散る

高温に熱したオイルバスは、天ぷら油と同じで、水が加わるとはねて飛び散って怪我をします。オイルバスでは還流で水を流すことが多いので、水を流すホース類をきちんと止めたりひび割れが無いかを確認しましょう。

液体窒素、ドライアイスで窒息?

狭い部屋、換気の悪い部屋で大量の液体窒素やドライアイスを使用すると窒息する恐れがあります。夏暑いからといって液体窒素を部屋にばらまかないようにしましょう。

THFを蒸留中に完全に乾固させてしまって爆発した

THFは過酸化物を形成しやすいエーテル系の溶媒です。よく利用する溶媒なので、自分で蒸留するところも多いと思います。蒸留塔を組んで使用していて、毎回フラスコを変えるのが面倒だと思って、継ぎ足し継ぎ足しで蒸留していると過酸化物ができてしまっていて、ある日突然爆発してしまうことがあります。過酸化物を形成しやすいエーテル系の溶媒(ジエチルエーテル、THF、ジオキサン)、第二級アルコール類(2-ブタノール)や潜在的な爆発性を持っているニトロ化合物(電子吸引されたニトロベンゼン類(クロロ、カルボニル、ジニトロ等))、重合しやすい化合物は特に蒸留する際に、完全に液体がなくなるまで蒸留してはいけません。また、蒸留(加熱)自体が危険なものもある(アジド類、過酸類、ヒドラジン類、スルフェニルクロリド類)ので注意します。蒸留したい容量の10-20%は残る程度で蒸留はやめておきましょう。危険そうな化合物である場合、熱した時に煙が出てきたりしたらすぐに加熱をやめるようにしましょう。少しばかり不安定な化合物は、ジフェニルエーテルなどの高沸点の溶媒で希釈してやることで安定して蒸留で得られるという報告も有るようです。基本的に蒸留には潜在的な危険があります。教育的な意義はありますが無理にやらせるべきではないと思います。特に聞き馴染みがないような物質、前例のない物質の蒸留は避けたほうが無難です。研究では、蒸留が必要なことがままあるため、安全に蒸留しましょう。

蒸留のやり方蒸留のやり方

過酸化物の検出と除去

過酸化物はヨウ化カリウム(硫酸性10%KI水溶液を少量サンプルに加えて振り混ぜ、ヨウ素が生じた場合は過酸化物が存在する。ヨウ化カリウムデンプン紙を使用しても良い。

除去は、亜硫酸水素ナトリウム水溶液やチオ硫酸ナトリウム水溶液あるいは、酸性硫酸鉄水溶液、あるいは塩化銅、あるいは活性アルミナカラムを通じて除去できる。

危険な溶媒の組み合わせは?

危険な溶媒や試薬の組み合わせはたくさんあります。ここで全てを上げるのは難しいですが、例えばよく使用するジクロロメタンは強塩基と使用すると爆発的な反応が起こります(ナトリウムなども)。DMSOも酸塩化物を用いたアミド縮合などの溶媒には使えません(DMSOが反応する。swern酸化)。DMSOは強塩基(NaH等)や強酸化剤(過ヨウ素酸)なども使用しない方が良いです。

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