Dittmer試薬はリン脂質を染めるTLCの染色液です。
Dittmer試薬とは?
Dittmer試薬は三酸化モリブデンからなる試薬で、リン脂質を特異的に染色する染色液として有名です。
Dittmer試薬のモリブデンがリン脂質のリン酸基と錯体を形成することによって色が付きます。リン脂質のあるスポットは青色のスポットとして染色されます。背景は白か若干青、灰色になって焼けます。
脂質にはリン脂質やコリン脂質(ホスファチジルコリン等)、アミノ脂質(スフィンゴシンなど)がありますが、どの脂質のタイプなのかを染色試薬を使い分けることによって、推定することができます。
Dittmer試薬は、リン酸基を含むリン脂質を選択的に染色します。
コリン脂質を検出したい場合は、第四級アンモニウムイオンがあるため、ドラーゲンドルフ試薬を使用すると選択的に染色できます。
また、スフィンゴシンなどのアミノ脂質は一級アミノ基を持つため、ニンヒドリンで染色可能です。
このようにさまざまな脂質成分も染色試薬を使い分けることでその構造を推定することが可能です。
Dittmer試薬の調整方法
Dittmer試薬は三酸化モリブデン(A液)12.5M H2SO4 1Lに三酸化モリブデン40.1gを加え、緩やかに煮沸して溶解した。(B液)A液 500mlに粉末モリブデン1.78g を加え15分間煮沸した後、室温に戻し、上清をデカンテーションで採取した。使用時に、A液とB液を等量混ぜ、さらに混合液の2倍量の水を加えた後、TLCプレートに噴霧します。
JP2011093813Aより引用
Dittmer試薬調製時に、黄緑色になっていれば成功です。もし水が少ないと青色に変化し、水が多すぎると黄色に変化します。
Dittmer試薬は数ヶ月経っても安定なので、作り置きOKです。
Dittmer試薬は逆相シリカゲルではウェット性が悪く、染まりにくいという報告があります(MacCossら1979)
脂質全般を染める染色試薬はローダミン6G,ローダミンBが利用されます。
ローダミンB:脂質や可塑剤の検出!TLC発色試薬の調製法と特徴
参考文献
1) J. D. Dittmer and R. L. Lester : J. Lipid Res. 5, 126 (1964)
2) Dyńska‐Kukulska, K., Ciesielski, W., & Zakrzewski, R. (2013). Biomedical Chromatography, 27(4), 458-465.
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