ガムがチョコレートで溶けるのはなぜ?
「ガムを食べているときにチョコレートを食べていたらガムが溶けてなくなったのですが何か化学反応が起きているのでしょうか?」
ガムを食べているときにチョコレートを食べるとガムが溶けてしまうのは、ガムの成分がチョコレートの成分と化学的性質が似ているために互いに混ざり合いやすいからです。
この原理は、砂糖が水によく溶けてサラダ油には溶けにくいのと同じです。砂糖と水は化学的にみて性質が似ています。
溶けるかどうかを見分ける方法は?
- 化学構造を見る
- 水と油どちらと混ざりあいやすいかを調べる
化学的性質が似ているかどうか判断するためには化学構造を見てみるのが一番ですが、簡単に見分ける方法があります。それは水に溶けやすいか?それとも油に溶けやすいか?を比較する方法です。
実は化学物質は大きく2種類に分類することができます。それが水と油です。化学的な言い回しをすると高極性物質と低極性物質(非極性物質)です。実はこの分け方は大学レベルでも必要な重要・基本的な内容なんです。
- 水→H2O→アルコール、カルボン酸、アミン→電気陰性度の高いO、N等を分子構造に含む→双極子モーメントが大きい
- 油→炭化水素→アルカン・アルケン、高級脂肪酸→CHなど電気陰性度の差が小さい元素同士からなる→双極子モーメントが小さい
身の回りの物質を水か油かに加えて混ぜた時にどちらに溶けやすいかを調べてみましょう。
化学物質は水または油のどちらかの性質に分けられ、水の性質に近い物質は水に溶けて、油の性質に近い物質は油に溶けるといいましたが、現実はそんなに単純ではありません。水にも油にも溶けない物質もあります。いい方を変えれば水にも油にも近くない物質もあります。水と油は正反対の存在と考えてください。水が+100なら油は-100です。+1の物質は水にも油にも化学的な性質が近くないので溶けにくい、あるいはどちらにも溶けます。
エチルアルコールは水と油の中間的な性質を示し、どちらにも溶ける物質です。ちなみに油と水両方の部分構造を持っているものは洗剤です。エチルアルコールが水と油の融合体とすれば、洗剤は水と油の合体です。洗剤はミセルを作って乳化します。
ガムの成分とチョコレートの成分
さてガムは口に入れても溶けません。口に入れても溶けないのは、水に溶けないからです。例えば以下のような原因が考えられます。
- 水に溶けない
- バターのように液化しない(融点が高い)
- 高分子 (紙と一緒。紙とお米と水あめはみんな同じ物質が連なってできている)
ガムは全て当てはまります。
ガムがどのような成分からできているかご存知でしょうか?
ガムはガムベースと呼ばれる成分からできています。
元々は木の樹液からとれた材料をもとにして作られていました。ゴム手袋に使われる天然ゴムと同じです。
ガムベースは一種類の物質だけでありません。
- チクル(天然樹脂:ポリイソプレン)
- ポリ酢酸ビニル
- マイクロワックス(蝋:高級脂肪酸エステル)
ガムとチョコレートの成分を構造式から見てみます。
ガムの成分はポリという名前がつくことから想像できるように分子量が大きいポリマーがよく使用されます。それに対して油脂の構造を見てみるとガム成分と非常に似通っていることが分かると思います。化学構造を見るとガムベースとチョコの油成分が化学的に似た性ていることがわかります。水H2Oやアルコール(CH3CH2OH)とは離れていますね。
このように化学構造を観察することによってガムベースが性質の近いチョコの油分に溶けることが分かりました。発泡スチロールのポリスチレンがオレンジオイルに溶けるのもガムがチョコで溶けるのと同じことです。こちらの記事で構造式などを示しています。