トリカブトの毒 アコニチン・毒矢や薬にも利用!解毒薬はある?

最強の毒草トリカブトとは?

トリカブトは代表的な毒草

トリカブトは美しい紫色の花を咲かせるキンポウゲ科の植物です。

トリカブトの花 Photo taken by Kumaapr9 CC3.0

キンポウゲ科は美しい花を咲かせるものが多く園芸用として有名なものにアネモネやクレマチスがあります。キンポウゲ科は毒をもつものが多く、園芸用になっているアネモネクレマチス全草に毒があるので草汁を手に付着させたままにしたり、口に入れないようにしましょう。

トリカブトは一般によく知られた有名な毒草で小説や映画などのメディア作品中でもしばしば毒薬として登場します。

トリカブトの存在を社会に知らしめたのはトリカブト保険金殺人事件だと思います。この事件で犯人は保険金目当てに妻を殺害する際にトリカブトの毒とふぐ毒テトロドトキシンを使用しました。トリカブトで殺害を企てようとしても

トリカブトは日本にも自生している身の回りにある植物です。秋になれば山道に帽子状の紫色のきれいな花が咲いているのを発見することができるかもしれません。花の色は紫色だけではないです。毒は全草(葉から根っこまで全て)にあります。

慣れていれば見分けることは比較的簡単だと思いますが、山菜採りをする場合は気を付けましょう。トリカブトとニリンソウは葉で見分けると見間違うので花と根っこで見分けましょう。

漢方薬としてのトリカブト

そんな毒のイメージが強いトリカブトですが、実は生薬として用いられています。トリカブトに限らず毒を薬として使用することはよくあります。

附子(ぶし)はトリカブトの球根で生薬の名前です。薬として使われるからといって自分で採取したトリカブトの球根を使用するのは危険です。生薬に使われている球根は減毒の処理(修治)を行ったものだからです。熱を加えたり塩水に浸漬さて処理してから生薬になっています。効能は興奮系の作用で強心作用や利尿作用を示します。附子が配合されている漢方製剤には以下のものがあります。冷え性や排尿に関する効能を示すものが多いです。

トリカブトを誤食する食中毒事故

トリカブトは花が咲いているときは見分けが付きやすいですが、葉の状態ではヨモギやニリンソウ、モミジガサ、ナンテンハギ、西洋わさびなどと間違えて食べてしまうことがあるようです。トリカブトは苦みが強いので食べるときに気づくことが多いと思われますが、茹でたりすると苦みが少なくなって気づかないことがあるようです。毒成分は全草にありますが、根に多いです。草汁が皮膚や粘膜に付着するとひりひりとした灼熱感を感じます。

注意
トリカブトの根を興味本位でかじってはいけません。すぐに吐き出しても中毒症状を呈して呼吸停止まで至った例があります。トリカブトの毒は短期間で症状を呈することからも胃から吸収だけでなく口粘膜からの吸収されると考えられています。

松崎茂. “五苓散エキス投与を試みたトリカブト中毒の一救命例.” 日本東洋医学雑誌 50.1 (1999): 67-72.

アコニチンの致死量は5mg程度とわずかな量で死に至ります(マウスLD50=5.97mg/kg[経口])。食後から中毒症状が現れるのは早く、20分以内に激しい嘔吐や腹痛といった消化器症状、血圧の低下、四肢の痺れなどを呈します。

食品安全委員会 ハザード概要シート トリカブト類

実際に死亡事故は起こっています。山形県では56歳の男性がニリンソウと誤って採集したトリカブトの葉をおひたしにして食べて15分後に中毒症状を呈して死亡しました。

解毒薬はあるの?

トリカブトに対する解毒薬や拮抗薬はありません。そのため、大量に食べてしまった場合は命を落とす可能性が高くなります。呼吸中枢のマヒによる呼吸不全などに対する対症療法しかありません。トリカブト保険金殺害事件で有名になったテトロドトキシンによる拮抗作用はマウスを使った実験でも脂肪時間の延長などの作用が見られると報告されていますが、実際の医療現場で猛毒であるテトロドトキシンが用いられることはなく、治療効果が期待できるほどのものでもありません。

大野曜吉. “トリカブト事件とその実験的検討.” 日本医科大学医学会雑誌 15.2 (2019): 65-70.

トリカブトの毒矢で仕留めた動物は食べても平気?

トリカブトの毒は北海道ではアイヌがトリカブトを矢毒として利用していたようです。

毒を使って得た動物の肉は食べられるのか不思議に思うかもしれません。実際は、毒矢の刺さった部分などは危険ですが他の部位はきちんと加熱処理をすれば食することができるようです。トリカブトを生薬として利用するために毒成分を弱めるために行われる修治と呼ばれる操作は長時間高熱の水蒸気にさらします。トリカブトの毒は長時間熱水、水蒸気にさらされると加水分解して毒性の弱い成分に変化するからです。これと同じことが調理の過程で行われていると思われます。しかし、普通の煮る程度では分解しないといいますし、危険なので真似はしないようにしましょう。

石川元助. “アイヌのトリカブト矢毒について.” 人類學雜誌 66.3 (1958): 116-127.

トリカブトの毒成分

トリカブト中にはアコニチンをはじめ、ジエサコニチン、ヒパコニチン、メサコニチンの4種類の毒性の強いアルカロイドが含まれています。

アコニチンの構造式

アコニチンの構造式

非常に強力な毒成分ですが、蒸すように水蒸気加熱処理などを行うことで減毒できることが知られています。化学に詳しい人であれば構造式を見れば化学構造にどのような変化が起こっているのか想像できると思います。

アコニチンの修治

アコニチンの修治 エステルの加水分解が起こっている

水蒸気下というのは加水分解条件であるため、加水分解しやすい部位が反応します。ここではエステル結合が加水分解に弱いので加水分解が起こってアルコール体になります(毒性は1/200程度に)。

陳兆隆. 附子修治の化学的研究. Diss. 大阪大学, 1986.

毒性を発揮するメカニズム

アコニチンの作用メカニズムはナトリウムチャネルへの作用です。アコニチンはNaチャネルレセプターに対して結合し、チャネルを開放してナトリウムの細胞内流入を引き起こすことによって神経伝達を遮断します。

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